やさしさ願望 | コラム・インテリジェンス

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透き通るような…心が…ほしい

最新の怒りをぶつけられた。いつものことだが怒りの矛先を向けられる傾向にあるらしい。
最新の怒りの内容はよくある話であった。
よくある話だろうが奇異な話だろうが、彼女たちにとって怒りはいつも新鮮なのだ。
怒りは鮮度が命。鮮度で勝負とのたまう。

出社の途中、通勤ラッシュの真っ只中、地下鉄の連絡路でこけたと言う。
溢れる人ごみの中で一人、通路に横たわってしまったのだ。無痛無損傷であった。単純にこけただけ。

彼女が周囲に要求するやさしさの願望はただ一つ。
ほっといてくれ。見過ごしてくれ。なかったことにしてください。見逃してください。何でもします。

「どうしたの?!」歩み寄る中年女性。「みりゃわかるだろ!こけたんだ!それだけ」
言い返したい気持ちをぐっと飲み干す。痛みの苦痛のほうがよかったかも、と、ふと思う。
「どうしました?」さらに追い討ちの中年男性が加わる。
「だいじょうぶ?」駄目押しはかなりいい男であった。
合コンで会いたかったぜ。いや、会ったとしてもこの行動パターンの男はだめだ。しかし酒ぐらいなら・・・・・

恥ずかしさにめくるめく思考の中、人の流れは完全に止まった。
「だいじょうぶです。ありがとうございます。すいませんでした」
いわれのない謝罪の言葉を残し、何事もなかったかのように立ち上がり、人の流れに合流する。

この場合に限っても、声をかけてほしい人と、ほっといてほしい人がいる。と思う。
声をかけるのが優しさだと思う人と、ほっといてあげるのが優しさだと思う人がいる。
状況判断の度合いによって、優しさ行動の度合いも変わってくる。
どんなやさしさを願い、望むのかも人それぞれ。

怒りの炎は自分の中で消火してほしい。
消火できない場合は僕以外の者、物に当たり散らしてほしい。
人の望む優しさは人それぞれなのだ。