2012年に受講した、こちらの続きです。
 

【色彩認定講師への道(11)】
http://ameblo.jp/coloroza/entry-12289854000.html


色彩検定協会(旧A・F・T)主催である、


●色彩講師養成講座の第9回(全12回)


の講師は、山下明美(やましたあけみ)先生で、岡山県立大学の方でした。


この回で学ぶことは「景観における色彩」で、個人発表は「橋の提案色を考える」でした。

では、ご参考までに、その原稿全文を掲載いたします。


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「忠節橋のカラー提案」


今回私は、岐阜県岐阜市にある私の実家から、歩いて数十秒の場所に位置する「忠節橋」についてお話しします。この忠節橋が架かっている長良川は鵜飼で有名で、他にもほぼ1km間隔で数多くの橋が架かっています。







そこでこの忠節橋を中心に、上流から下流まで合計10本の橋の写真を撮りましたが、やはりこのアーチが象徴的だということで、忠節橋に決めました。


この忠節橋は、建造開始から4年後の1948年から運用されており、全長266m、幅員17.6m、橋梁形式は鋼製トラス・鋼製アーチ橋(タイドアーチ橋)です。鋼材の調達が難しかった第二次世界大戦後、日本で初めて建設された鋼橋だと言われています。


【現況】
1944年に建造されて以来、幾多の補強工事を経ながらも、その形や色はほとんど変わっていません。殊に色については、慣用色名で言えば「シルバーグレイ」、系統色名で言えば「明るい灰色」、マンセル値は大体「N7.5」ですが、これだとアーチの材質である金属の質感を上手く引き出している一方、どことなく味気ない印象も受けます。これは私が幼稚園に上がる前から、ずっと感じていたことです。


ほんの一例ですが、他の橋と見比べてみても、このように他の橋はもっと自由に有彩色を使っているのが分かります。また、こうして西から見ると、背景の金華山をはじめとする山々と重なり、有機的なものと無機的なもののミスマッチのようにも感じられます。
従いまして、今から申し上げる改善案を、風景となじませた配色と、風景から際立たせた配色
に場合分けして、ご説明いたします。


【改善案A『山々への擬態』】
最初に風景となじませた配色ですが、背景の山々、そして周囲の河原とマッチさせるために、ナチュラルな配色をお勧めします。


まずアーチの曲線部分は木の葉の集合体、アーチの支柱部分は木の幹を表しています。橋本体は安定感を求めるために、アーチの曲線部分よりも明度を下げた緑を使います。反対に橋の欄干は歩行者の安全性を高めるために、比較的明度が高い緑を使います。これで夜道のガイドにも成り得ます。


【改善案B『空への擬態』】
そして同じく風景となじませた配色ですが、ナチュラルと言っても、今度は空や雲とマッチした配色をお勧めします。


空や雲とマッチさせている配色例としては、まずこちら。今では残念なことになっている福島原発ですが、その建屋の外壁部分。



そしてこちらは、世田谷区の砧公園を取材した時の写真ですが、中央卸売市場の煙突の外壁部分。


これらの実例を参考にして、まずアーチの曲線部分は空の明るい部分、アーチの支柱部分は雲を表しています。こちらでも橋本体は安定感を求めるために、アーチの曲線部分よりも明度を下げた青を使います。つまりこちらは空の暗い部分を表しています。橋の欄干は歩行者の安全性を高めるために、現行と同じ明度が高いグレイを使います。


【改善案C『親しみのあるパステル系』】
続いて風景から際立たせた配色ですが、いっそのこと思い切って、公園の遊具のようにしました。ただし塗装対象は巨大建造物なので、面積効果を考慮し、彩度は落として明清色の組み合わせとしました。言い換えれば、パステル系といったところでしょうか。でも決して、今年(2012年現在)の流行に乗っかったわけではないですよ。環境色彩というのは長年持たせるもので、流行とは切り離して考えなければなりませんから。


こちらでもやはり、明度が一番低い青を橋本体に使って安定感を持たせ、上に向かうほど明度が高い色にしましたが、アーチの曲線部分はグッと締めるために、赤系を使いました。未来を担う子供達に喜んでいただきたいという願いはもちろんのこと、年輩の方々にもワクワク感を思い出していただければ尚良いです。そして何よりもこの配色だと、ご当地名物にもなりそうですしね。


以上3案のうち、私がお勧めするのは改善案Bですが、どうかご検討いただけるよう、よろしくお願いいたします。


(以上、計5:00)


【山下先生によるご講評】
(1)A3用紙を4枚貼り合わせた、A1大の写真計8枚による説明は分かりやすかった。
(2)1案につき、多色を用いる必要性が見出だせない。
(3)案Aは背景の山々にマッチさせたと明言した方が良い(→私の言い忘れ)。
(4)案Cはよした方が良い。


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「景観における色彩」において、おさえておきたい以下のポイントは、山下先生からご説明がありましたが、具体的かつ重要な内容につきましては、このブログでネタバレはしませんので、


実際に受講するまで、楽しみにしていてくださいネ~(笑)


【特記事項】
●スケッチの有効性
●民俗学者の柳田國男氏曰く「橋や川は精霊が宿る」
●「端」「柱」「はしご」
●奈良時代に架けられた「宇治橋」
●すずりに描かれた橋(『か・き・つ・ば・た』)
●橋は人の心をかき乱すもの
●新素材「コルテン鋼」
●プレストレスト・コンクリート(PC)橋
●アーチ橋のヒントは、チェコの橋


【世界各国の橋の紹介】
ポン・デュ・ガールの水道橋、ノメンターノ橋、フィレンツェのポンテ・ベッキオ、ケンブリッジの数学橋、鉱山からの運搬用のアイアン・ブリッジ、くろがね橋、八幡堀の遊歩道、バーリントンのノーザン鉄道橋、錦帯橋、田丸橋、イギリスのフォース鉄道橋、ルザー高架橋、ザキナトベール橋、ゴールデンゲート・ブリッジ(他、全約30点)


【環境色彩における心得】
●誰が何のために使うものか?
●誰がイニシャティヴを取るのか?
●形・色・ボリュームのバランス
●視点場との関係(遠景・中景・近景)
●色彩心理効果より優先させる
●色彩相互の関係性
●色彩に主張させすぎないこと
●設計の早い段階から、色彩のあり方を検討
●何を目立たせ、何を抑えることが有効なのか
●地味ではあるが、黒子的な存在


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さぁ次回も、いかにもカラーデザインらしい宿題の発表になります!生活が乱れ、家事も出来なくなる程ヘヴィでしたが、それくらいの覚悟が無いと太刀打ちできず、そもそも無理だということです!(力)

(つづく…)

 


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