酒木保先生『自閉症の子どもたち』(現任者講習会講師の著書) | こころの臨床

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心理学は、学問的な支えも実践的身構えも、いずれも十全と言うにはほど遠い状況です。心理学の性格と限界を心に留めつつ、日本人が積み重ねてきた知恵を、新しい時代に活かせるよう皆さまとともに考えていきます。

2018年のこころの臨床初回の公認心理師現任者講習会からずっと講師を務めてこられた、

酒木保先生のご著書を紹介します。

 

酒木保先生は、こころの臨床が今年(2020年)12月毎週末に開催する、公認心理師国試のための直前重点確認講座での「心理アセスメント」のご講義をご担当いただきます。そして、月末の

12月26日・27日の恒例の冬期錬成講座では、「心理支援と一体のアセスメント(仮題)」

(これは、受講者との相互交流を交えた実践的な講座となる予定)をご担当くださいます。

 

酒木保先生の『自閉症の子どもたち 心は本当に閉ざされているのか』(2001年初版、PHP新書)は、コンパクトな新書版でありながら、子どもたちに接する心理職の間では名著として知られています。

 

とくに、児童臨床・教育臨床・福祉臨床の分野で公認心理師を目指してられる方々は、

ぜひご一読を。

 

 

 

「自閉症(現在はASD:Autism Spectrum Disorder)児」と呼ばれてきた子どもたちと

同じ世界に棲まうことができる酒木先生は、自閉症児童の優れた心理治療者として、

高名な先生です。

 

このご本は、厚さ(ページ数)としては、けっして大著ではありません。

けれども、臨床の場で日々発達の問題を抱える子どもたちに接しておられる方、親御さん、

また発達特性について興味をお持ちの一般の方々にとっても、内容は、とても重厚です。

 

ハッとさせられる数々の示唆に富む、酒木先生の、優れた治療者でなくては紡げない

珠玉のようなお言葉の数々は、

発達に特性を持つ子どもたちや大人たち、そしてその周りで支援する人たちのおこころに、

温かく心強いエールとして響くものと思われます。

 

 

 

 

この本のカバー扉の内側の「内容紹介」を転記します。

 

人と目を合わせない、コミュニケーションがとれない、儀式的な行為を繰り返すなどの行動特性を示す自閉症、「彼らは心を閉ざしている」と決めつけるのは、こちら側のモノサシの押し付けではないか?そう考える著者は、自閉症児たちと「いま」「ここ」を共有することを通して、彼らが他者に対して自分の存在を確立できないこと、ゆえに身体・空間・言語についての感覚に障害が生じていることを明らかにしてきた。

子どもたちとの関わりから、人が生きてあることの意味をも問いかける、「治療者」の軌跡。

 

 

 

 

こころの臨床の研修会での酒木保先生とのお出会いの機会が、今後とも、酒木先生から

受講者の皆さまの実践への支援となる、交流の始まりともなればと願っております。