今日
我らが中学校生活の中で最後となる
音楽の授業があった
5限だった
みんな昼休みから音楽室に来て、いつものように楽しそうに歌ってた
最後の気配など微塵も感じさせない光景だった
音楽の先生はいつも笑顔だった
勉強や部活、友人関係、恋…
いろんな悩みを抱えている中学生だが
みんな先生の笑顔を見ると何もかも吹き飛んでしまうようだった
冗談を言ってみんなを笑わせるのが好きな先生だった
絶望も辛苦も憤怒も虚無も
全て先生が拭い去ってくれた
まるで冷えきった身体を温めてくれるひだまりのような
みんなにとって先生は太陽のような存在だった
週に1度しか無い音楽の時間は憩いの時だった
安息の時だった
そしてみんなの希望だった
最後の合唱の時が来た
先生は涙を隠すことなく言った
「3年間ありがとう」と
とんでもない
お礼を言うのは俺たちのほうだ
歌った
俺たちの心を、魂を、感謝の気持ちを
ピアノを弾きながら歌う先生は最後まで笑顔だった
歌声が少し掠れていたような気もしたが
30数人分の涙が邪魔したせいで
結局まともな合唱だとはお世辞にも言えなかった
だが
3年間の集大成と呼ぶにこれほどまでに相応しい歌を
……俺は聴いたことがない
最高の音楽をありがとう、先生
……さよなら
50手前のおばちゃんだけど
【あんこたん】ここあ【入試まであと5日！】