先日、懇親会でたまたま隣に座らせて頂いた愛知県職員の男性と名刺交換をしました。
私の父も、かつては県庁務めだったのですが、そんな会話をしながらその方が私の名刺をご覧になり、
「ひょっとして……」と。
何と、20年前にその方が県に就職された時の上司が、私の父であったとのことでした。
父が45歳の時のことです。
「津田さんは、本当に良い上司でした」
「家族旅行にいって、子どもたちに凄く喜んでもらえたって嬉しそうに話して下さったのが印象的です」
「私が公務員になったばかりの時で、いっぱい助けて頂いて…」
「実は、津田さんに一度、趣味のフィギュアスケートに一緒に行かないか、と言って休日にスケートリンクに連れていって頂いたことがあるんです。そんなことしてくれる上司、出会ったことがありません…」
初めて他者から語られる、父の職場での姿でした。
父は家ではあまり口を開かず、子どもと会話することもあまりない父親でした。
何かを話しかけても、「そうか」と素っ気なく相づちを打って終わり、ということも多く、子ども心にお父さんは何を考えているんだろう、僕たちにはやっぱり無関心なのだろうか…と思っていました。
父は長年税務の仕事に携わり、税の徴収という、父曰く「嫌われ者」の仕事でいつも心身共に疲れている様子が見て取れました。
昔、夕飯の時に父がポツリと言っていたのを思い出します。
「お父さんの仕事なんか…何の役にも立たない、誰にも喜んでもらえない仕事なんだよな」と。
しかしその方から語られたのは、家族思いで、そして部下思いな、優しい上司の姿です。
父のチームで大きなミスが起こった時、部下をかばって、一生懸命フォローしてくれた…
そんな、絵に描いたような「カッコいいお父さん」が突然目の前に現れてきたのです。
そしてその方は言って下さいました。
「私、津田さんの部下で良かったです」と。
帰り道、早速父に電話をかけました。お父さん、20年頃前に部下だった、○○さんという方を覚えてる?と。
あー○○くん?すごく良く覚えてるよ。って、何で紘彰の口からその人の名前が出てくるの?
電話の向こうで、父が目を白黒させているのがわかります(笑)
今日偶然にしてその方に出会わせて頂いたこと、そしてその方が、津田さんに出会えてよかった…と言って下さったこと。
伝え終わると、あまり感情を表に出さない父が少し涙声で、
「そんな嬉しいことを○○くんが…。涙が出るくらい…嬉しいな」
懸命に家族のために働いてきてくれた、父の人生が一つ報われた瞬間でした。
心から、父に伝えることが出来ました。
「話を聞いていたら、お父さんすごいカッコよかったよ。お父さん、一生懸命働いてきてくれてありがとう」
駅のホームで父と電話をしながら、二人で涙を流しました。
20年前の部下が、まさか息子に出会い、息子を通じて自分に御礼を言ってくれるなんて…
と、父の喜びようは本当に大きなものでした。
その方と出会わせて頂いたことに、本当に本当に感謝、あるのみです。
人生とは何と不思議なものでしょうか。
父のお陰でその方とも心の友のように深く語り合うことができ、翌週もまたお会いする機会に恵まれました。
父が一生懸命働いてくれた、その生き方が繋いでくれたご縁、です。
毎日父母の幸せを祈りながら、ほんの少しでも父母に恩返しを、そして次の世代に恩送りを出来れば、と深く願う日々です。
読んで頂いてありがとうございました。