ある日、寝具メーカーの広告担当者から、消費者庁に質問が寄せられました。

「寝具類の商品に『無添加』と表示して販売したいと考えていますが、景品表示法上問題となりますか?」

消費者庁が返した答えは、以下の通りです。

「無添加」と表示されている商品の多くは食品であり、加工及び保存を目的とした化学物質などの添加物が使用されていない旨の訴求として記載されています。この「無添加」との表示により、一般消費者は、当該食品は体によいものである、又は健康に良いものであると認識します。

 

このような中、通常何らかの化学物質等が使用されている寝具類等の商品において「無添加」との表示をすることは、合理的な根拠なく、当該寝具類等は自然なものであり、健康によい商品であると一般消費者を誤認させるおそれがあります。

 

したがって、寝具類等の商品に「無添加」と表示することは、景品表示法上問題となるおそれがあります。 (消費者庁「表示に関するQ&A」から)

 

 

◆思いがけない質問に消費者庁はま面から回答。なによりも親切な説明には感心しました。皆さんだったら、どう答えますか。

 

「無添加」の表示が使用されるのは、主として「食品」です。ちなみに、ギフトの定番「生ハム」をネットで検索すると、どの商品にも「無添加」が表示されています。安心・安全の「無添加」でなければ、ギフトの仲間には入れてもらえないのでしょうか。なぜ、全メーカーがそれほど「無添加」にこだわるのでしょう。

調べてみました。

 

「無添加」は、まず安全性の比較などに用いられて、優良誤認の判断基準になることが考えられます。

消費者庁が、食品表示基準第9条により2022年に策定した「合成添加物の不使用表示ガイドライン」は、直接的には、容器包装を対象にしたルールですが、一般の広告チェックにおいても見過ごせないルールの一つです

 

そこで、消費者庁のガイドラインによる「表示を作成する際に注意すべき10類型」から、いくつかを、抜粋します。

 

 

類型1.単なる「無添加」の表示

 対象を明示せずに、単に「無添加」と表示すると、何を添加していないかが不明

確であるため、添加されていないものについて消費者自身が推察することになり、一般的に消費者が推察した内容が事業者の意図と異なる場合には、内容物を誤認させるおそれがあります。

 

類型2.食品表示基準に規定されていない用語を使用した表示

 人工・合成・化学及び天然の用語を用いた食品添加物の表示は適切とはいえず、こうした表示は、消費者がこれらの用語に悪い又は良い印象を持っている場合、無添加あるいは不使用と共に用いることで、実際のものより優良又は有利であると誤認されるおそれがあります。

 

類型6.健康・安全と関連付ける表示

例1.      体に良いことの理由として無添加あるいは不使用を表示

例2.      安全であることの理由として無添加あるいは不使用を表示

 

類型7.健康・安全以外と関連付ける表示

例1.      おいしい理由として無添加あるいは不使用を表示

例2.      「開封後」に言及せずに「保存料ふぃし用なのでお早めにお召し上がりください」と表示

例3.      商品が変色する可能性の理由として着色料不使用を表示

 

類型10.過度に強調された表示

 表示が事実であれば直ちに表示禁止事項に該当するおそれがあるとはいえませんが、容器包装のあらゆる場所に、過度に強調して不使用表示を行うことや、一括表示欄における表示と比較して過度に強調されたフォント、大きさ、色、用語などを用いることが、消費者が一括表示を見る妨げとなり、表示上の特定の食品添加物を全く使用していないという印象を与える場合、内容物を誤認させるおそれがあります。

 他の類型項目と組み合わさった際、他の類型項目による誤認を助長させるおそれがあります。

 

いかがですか。市販されているギフトの生ハムは、正しい「無添加」で広告されているでしょうか?

以上