金融危機を理解するための10の鍵(Obsの記事)【2】 | PAGES D'ECRITURE

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フランス語の勉強のために、フランスの雑誌 Le Nouvel Observateur や新聞の記事を日本語に訳して掲載していました。たまには、フランス語の記事と関係ないことも書きます。

前回の 金融危機を理解するための10の鍵(Obsの記事)【1】  の続きです。

今回は原文6) Les «swaps», autres bombes à retardement  からです。


サブプライム、証券化、株式市場のパニック、連鎖破綻・・・
危機を理解するための10の鍵


SUBPRIMES, TITRISATION, PANIQUE BOURSIÈRE, FAILLITE EN CHAÎNE…

10 clés pour comprendre la crise

(つづき)


6) 「スワップ」、別の時限爆弾

あるいは、いかにして請求書はなおも重くなり得るか


損失の総額の見積もりは絶えず増大している。その幅は非常に幅広く、1兆から2兆ドルと考えられている。銀行は既に、3600億ユーロに相当する、およそ5000億ドルを失っただろうとされている。しかし別の時限爆弾もある。特に消費者ローン(自動車の購入など)で生じる損失である。こうしたローンをアメリカ人は支払えなくなるだろう。フランスの貯蓄率がおよそ15%なのに対して、アメリカでは家計の貯蓄率はゼロなのだから。この損失の正確な規模は、米国が経験することになる危機と景気後退の重大性によるだろう。今回の金融危機は非常に強い経済原則、失業率の増加と消費収縮をもたらす。企業収益の大きな減少という結果が続く。ところが多くの会社は、好景気の陶酔の時期に、自社株式を買い戻すためであれ、株式取得の資金を得るためであれ、借金してしまっていた。

他方で、企業に対する貸付は、フランスの国内総生産の20倍に相当する62兆ドルの負担となるリスクの移転の複雑な市場に対する補助の役割を果たしている。それがcredit default swap (CDS) というクレジットである。この仕組みは、借り手の破綻というリスクに供えるために貸し手が銀行か保険会社から買う保険である。別の言い方をすれば、私がかくかくしかじかのリスク(国、経済部門…)に晒され過ぎていると考えた場合、私はこれらのリスクの一部を、別の経済部門あるいは別の国のリスクに晒されている別の債権者のリスクと交換するのである。これらの商品は売買人間のリスクをばら撒いている。保険会社AIGはこの市場で非常に重要な当事者となった。崩壊することで、世界の多くを転落に引き込む危険があった。アメリカ政府がこの会社を国有化したのはこの理由による。


7) 損失の国有化

あるいは、いかにしてワシントンは国家管理主義の効力を再発見したか


アメリカ合衆国は20世紀中に2度、このタイプの途方もない行動に頼った。1933年、前年の破綻の波の後にもまだ存在していた銀行に資本を再投入するためにReconstruction Finance Corporation(RFC、復興金融公社)が創設された。1989年、前回の不動産危機の際、貯蓄公庫の不良債権を買収するためにResolution Trust Corporation (RTC、整理信託公社)が考案された。いずれの場合も、納税者は銀行家の軽率と強欲の結末の尻拭いをすることを求められた。国家は、自らの以前の先見の明のなさの、ある種の人質である。市場が自己規制できると主張し、従って規制を破壊した、政治指導者層は金融の不安定さを意識的に助長した。ワシントンはまず、金融機関を一つ一つ救済して消防隊員を演じた。しかし今、米国政府は、全体的な救済計画を考案するよりもその方が安上がりであると理解したようである。

その正確な性質が知られているには程遠い、政府の計画に資金を与えるために、アメリカ国家は、フレディ・マック、ファニー・メイ、AIGのような金融機関を保護する結果として生じた金額に加わる、莫大な金額の借金を負わなければならなくなる。確かに、最終的な損失額は長い年月の果てに、債権の再販により限定的であることが明らかになるだろう。現実には、全ては国家が債権を買い取る金額と、それらを凍結するか可及的速やかに再販するかで決まるだろう。アメリカの当局は、クレジットのうちで、引き取るものと金融機関に委ねるものとを選別することになる。いずれにせよ、今回の介入の総額による公的負債は2008年の国内総生産の5%から10%に達する可能性がある。


8) 「ユニバーサル・バンク」というモデル

あるいは、いかにしてフランスの金融機関は辛うじてやり過ごせるか


ヨーロッパの全ての銀行だけでなく、保険会社も巻き込まれている。これらの会社は、特にアメリカの子会社を通して、この過程に参加した。「証券化」された金融商品を買った。スイスのUBSのように、数百億ドルの損失を出した企業もある。それでも、フランスの銀行は、ヨーロッパの同業他社の大半と同じように、ユニバーサルである。フランスの銀行は複数の足で歩いている。投資銀行であると同時に、預金を集め、ローンを売る小売の銀行として、また保険業務なども行っている。こうして、銀行の投資活動が危険にあるとき、銀行は全体として救済を求めることになる。これがクレディ・アグリコル Crédit agricole (直訳すると"農業銀行”、以下CA)で起こったことである。そこでは、自らの投資銀行カリヨンの巨額の損失の後、CAの地域銀行が全国銀行を救済した。つまり、ユニバーサル・バンクというモデルは、支払不能という問題から全面的には守られていないということである。投資銀行部門が資本市場で取った過剰なリスクの結果として、このモデルには預金者を脅威に晒したという欠陥がある。結局、莫大な損失があれば、保険会社AIGで見たようなことが起こる。投資部門の損失が企業全体の資本を丸裸にするかもしれないのである。

(訳注:村野瀬玲奈さん からのご指摘に基づき、一部手直ししました)


9) 金融システムの粛清

あるいは、いかにして成長はなおも減速することになるのか


第一の影響は、貸付の希少化である。損失を一身に集めた銀行にとって、最優先課題は財政的堅実性を向上させることである。現在は理想的な時期ではないが、資本を増強するために株式を放出するか、信用に関してより厳格になってマージンを再構築するか、いずれにしても。これが既に起こっていることである。家計にとっても企業にとっても、借金をすることは次第に困難になっている。リスクの高い貸付に関しては、供給は希薄になっている。英国を例外として、金融システムがアメリカとは違っているとしても、不動産危機はヨーロッパにも影響している。多くの家庭が借入金を返せなくなろうとしている。そして不動産市場の崩壊が、既に価格の低下した資産の価値に対して重い夫妻を抱えた家庭の富を減少させている。一次産品の価格上昇の被害を既に受けていた消費は、さらに落ち込むだろう。そして企業にとって、最近数ヶ月間の強いユーロは、欧州の輸出産業に非常に不利だったが、さらに何ヶ月か重くのしかかり続けるだろう。

フランスは既に景気後退の過程に入っていた。少なくともこの四半期には。失業と購買力に関する結果では。来年には、はっきりするだろう。全ては、アメリカ当局によって取られる施策がその効果をどれだけ早く感じさせるかによることになる。しかし、危機が銀行を巻き込むとき、その財政状況を立て直すのには時間が必要であるために、常に十分に長い時間がかかることを知らなければならない。さらに、この過程を全ての私的経済関係者が追随するときには、この再建手続きは悪循環を引き起こす。誰もが、自らの借金を減らすために、費用を減らす方が得である。家計も、企業も、銀行も。全員が同時にそうすると、私的需要は減少する。したがって、収入が減り、利益が減り、再建するためには大きな困難が生じる。それが、1990年代に日本の危機が永続化した理由である。

10) 共通政策の欠如

あるいは、いかにしてヨーロッパは長い間苦しむ可能性があるのか


アメリカ合衆国が道を示している。このような規模の危機において、私的経済が十分に支出できないとき、国家が介入しなければならない。ところがヨーロッパの経済政策は、公的負債を制限し、もはや我らの時代には絶対的に適応していない、安定性の条約の束縛によって麻痺している。欧州各国の政府は、財政の共同行動を推進する能力がない。先の欧州サミットEcofin で見られた通りである。そして、予防的に利率を下げることを欧州中央銀行に期待するべきではない。1980年以来の経済循環を見れば、危機が炸裂するのは常に米国であり、経済の失速により長く苦しむのは常に欧州であることがわかる。アメリカの急変の余波はほぼ1年遅れてヨーロッパに到着する。しかし十分な答えがないために、そこから回復するのに余りにも時間がかかりすぎて、危機から脱出するや否や別の危機が到来してしまうほどである。最新の例として、米国は2003年に回復した。ヨーロッパは2005年だった。そして2008年、同じことが再び始まる。我々には持続的な活力を再構築する時間はない、そのことは結果として長期間にわたる成長の衰退として現れてくる。


Propos recueillis par SOPHIE FAY, JEAN-GABRIEL FREDET, NICOLE PÉNICAUT et THIERRY PHILIPPON

出典

LE NOUVEL OBSERVATEUR 2290 25 SEPTEMBRE- 1er OCTOBRE 2008

http://hebdo.nouvelobs.com/hebdo/parution/p2290/dossier/a384252-10_clés_pour_comprendre_la_crise.html


この記事に関しては、今回で終わりです。複数回といいながら、2回で終わってしまいました。

ネタ切れなので次の記事の準備ができるまでの時間稼ぎという目論みは失敗に終わったわけです。

日本が今の悲惨な状況への坂道を転がり始めた1990年代の終わり、「金融ビッグバン」(死語)だの、「ユニバーサル・バンク」(死語)という言葉が盛んに飛び交っていましたユニバーサルだのと偉そうに言って結局なんだったのかよくわかりません。金融機関の相互乗り入れみたいなことを言って、銀行の窓口で保険商品を売るとか。誰が、クソ、失礼、ウンコ混んでいる銀行の窓口で生命保険に加入したいと思ったでしょうか?

最後の章は示唆的です。欧州連合EUの財政「健全性」の縛りで、財政赤字をGDPの何パーセント以下にするとかいう条項は、実は欧州諸国を麻痺させている可能性がある。フランスの日本に関する記事では時々、財政赤字の巨額さが揶揄されますが、日本の財政赤字が悪いわけではないと考えた方が良いと思われます。今の日本の使い道が正しいとは言えませんが。

9) の最後で、1990年代の日本の危機について言及されています。「カイカク」なるものがいかに間違っていたかを示すものであると同時に、アメリカの危機がこれに似た経過を取るとしたら、アメリカの猿真似をやめようとしない日本は、他国からも、自国の歴史からも学ばないということでしょうか。