「諫元さん、それで調達の段取りはどうなってますか。」


「ああ、すいませんね。いろいろご心配掛けて。
 やっと、局内で手続きが決裁されそうなところまで来ました。
 このあと経理局へ回します。
 いろいろ見積りでご苦労掛けましたが、あと十日くらい、
 九月下旬に掲示板公示。
 二週間程度で入札締め切り、即日開札の予定です。」


「掲示板でいけますか。」


「大丈夫です。それより、入札頑張ってくださいね。」


掲示板になると言うことは、
この時点で二千三百万程度以下の予定価格になると言うことだ。


ただ、掲示版公示であることを示唆したからと言って、
予定価格を漏らしたことにはならない。

掲示版に公示されることで誰でも知ることができるからだ。


「そうですね。頑張って取りたいと思います。」


「お願いしますよ。」


これは諫元の本音だった。

諫元が日元アイシスに落札してほしいと思っていたことは間違いないが、
恣意的に日元アイシスを選ぶことはできない。


調達行為そのものは総務局の業務であり、民事局の意向に関係なく、
決められた手順によって業者を選択するのだ。


そこには、民事局の希望の入り込む余地はない。
「買う」ことそのものを切り離すことによって、牽制機能としているのだ。

諫元にとっては本当に日元アイシスに頑張って落札してもらうしかないのだ。


一方の日元アイシスにとっては、これ以上最高裁と膝つき合わせても、
できることはない。
淡々と進む事務手続きを待って、粛々と入札するしかないのだ。


もちろん、これは普段からであるが、金品の提供や供応などはできない。
純粋にビジネスライクな付き合いしかできないのだ。


案件が公示になれば、諫元にコンタクトすることもはばかられる。

別件の話ならできなくはないが、李下に冠を正さず。
誤解を受けるような言動は避けなければならない。


***


この物語はフィクションです。
登場する団体名、組織名、個人名は架空のものです。
実際に存在する団体名、組織名、個人名などとの一致があったとしても、
それは偶然に過ぎません。


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