御厨は、八月に入ってからは、
例の農水省の新規事業の受注に注力していたので、
はっきり言って最高裁の件は片手間扱いだった。
プレSEにとって、二つ、三つの新規案件を並行して進めることは、
珍しいことではないが、最高裁の件については富田に任せておけると思っていた。
また、片山からは報告が入っていたし、富田からも時々相談があったから、
まったく状況がつかめなくなっているわけでもないが、
そろそろ詰めに入らないと苦しいのではないかと感じていた。
そこへ尾藤の話だ。
実態は片山からの報告より遅々としているかも知れない。
「なんだ。お客様もグズグズしているんだって。
報告じゃもうそろそろとか言ってたじゃない。」
「ええ、ちょっと焦らせようと思っているんですけど。
仕様の詰めは順調なんですけど。」
「この間、富田も焦ってたなあ。見積りの出し直しばっかりだって。」
「ええ、そっちは、何とか官報にならないようにと詰めてるんですけど。」
「来週辺り客をあおりに行くか。次の予定はいつ? 」
「えっと。来週の火曜日ですね。
仕様の詰めで、富田さんにも来てもらうことになってます。」
「じゃ、そのとき、俺も行くよ。」
「あーっ。ありがとうございます。お願いします。」
「部長、月曜は、例の通産系の外郭の件で、
オフィス事業部との打ち合わせがありますよ。」
片山の声を聞いて、背後から小柳が慌てたように声を掛ける。
「判ってるよ、小柳君。心配しなくても最高裁は火曜だよ。」
「ああ、よかった。聞き間違えました。」
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