3月に録画したものの、なかなか見だすことができなかったNHKの『スポーツ×ヒューマン 佐々木朗希 100マイルの、その先へ』をやっと視聴しました。番組では、メジャーリーグ挑戦1年目の苦悩やフォーム修正、そして“100マイル(約160キロ)”への強いこだわりが描かれていました。
確かに160キロを超えるストレートは大きな武器です。日本時代から佐々木の代名詞であり、メジャーの強打者を圧倒するためには必要な武器なのかもしれません。しかし番組を見ながら感じたのは、「本当にそこまで100マイルにこだわる必要があるのだろうか」ということでした。
メジャーリーグでも、日本人投手でも、160キロを投げなくても結果を残している投手は数多くいます。球速だけが全てではなく、制球力、変化球、投球術、配球、タイミングの外し方などで勝負している投手も多いです。むしろ球速が増せば増すほど制球は難しくなり、常に全力投球を続けることで体への負担も大きくなります。
特に番組で印象的だったのは、佐々木がフォーム修正や“本来の動き”を取り戻すために苦しんでいた場面でした。スライダー習得のために投げ方を変えた結果、ストレートの感覚まで崩れてしまったという話は、100マイルを追い求める難しさを象徴しているように感じました。
さらに気になったのは、160キロを生み出す投球動作です。以前から思っていたことではありますが、一般的な可動域を活かした投球ではなく、肩や肘を“フルピッチ”で使うような動きになっており、見ていて故障リスクの高さを感じました。肩甲骨や背骨を使った連動を追求していることは理解できますが、それでも100マイルを毎試合投げ続けることは、肉体へのダメージが極めて大きいように思えます。
実際、昨シーズンはフォームを崩し、投げられない時期もありました。それでもポストシーズンでは中継ぎとして短いイニングを全力で抑え、大舞台で存在感を示しました。ホームラン王やMVP級の打者相手に真っ向勝負する姿は圧巻で、むしろ先発よりも中継ぎ・抑えの方が適性があるのではないかとも感じました。
短いイニングなら100マイルの球威を最大限に生かせますし、先発のように長いシーズンを通して体力とフォームを維持し続ける必要も軽減されます。もちろん本人は先発として世界一を目指しているのでしょうが、故障リスクとパフォーマンスを考えると、クローザーとしての可能性も非常に高いように思います。
一方で、番組を通して感じたのは、佐々木が単なる“剛速球投手”ではないということでした。東日本大震災で父と祖父母を亡くし、多くの支えの中でここまで歩んできた背景。そして苦しい時期でも周囲への感謝を忘れない姿勢には胸を打たれました。
だからこそ、無理に100マイルだけを追い求めて壊れてしまうのではなく、自分に合ったスタイルを見つけながら、長く活躍してほしいと感じます。160キロというロマンは確かに魅力的です。しかし、それ以上に大切なのは、佐々木朗希という才能が長く野球界で輝き続けることなのではないでしょうか。
おわり
