小 説 第六章 三 節 カワウソの家族
陽が上がる前からジルは、おにぎり作り!一人一本の水筒に温かいスープ、今日のスープは、キャベツ、コンビーフをコンソメ仕立てにして、13本!
おにぎりは、一人2個!昨日のハンバーグにマヨネーズを付けてスパムにして、もう一個は塩むすび!笹の葉で包んで凍らない様に麻紐で縛って完成。
ケンケンも早起きして、詩人と学者を連れて凍りついた沼の氷を割って魚釣り!カワウソの家族にお土産を用意している。
疑似餌を付けて小魚を釣り上げるケンケンの様子を見ながら、詩人と学者は、その小魚を餌にカニを釣り上げる。
「よーし!これでお土産の準備も出来た。
ウルフバーンとクロード・ロアーク兄弟も大きな舞台を作り、ウルフバーンの背中に固定している。
「これでみんな一緒に乗って行ける!」
一貫とアンナは、何が有ってもいい様に7つ道具と型紙と生地を鞄に詰めて、チャコとダンスが書き込んでいた、御呪い手帳も忘れずに入れた。
今日は、全員で行こう!
ジルはきっと逢える仲間のテディの分まで、おにぎりとスープを用意しました。
朝ご飯はダン島の河口で食べよう。さあ!みんな乗り込んで!
バンチ、レンガ、チャコ!
ラストにダーク、アンナ、ケンケン、ダンス!
しんがりのノーボディー!
そして、一貫とジル!
ウルフバーンの立髪にクロードとロアーク
「さあ!ウルフ飛んでくれ!」鳥沼を一つ飛びしてダン島の河口に降り立った。
昨日から雪は降っていないので楕円形の足跡は確り残っています。
「二手に分かれて探そう」と足跡組みとカワウソ組に分かれて一行は探し始めた。
集合場所は、大きなタモの木!1時間後にね!
「なんだなんだ!騒がしいなー!」流木と風倒木が折り重なっている小高い山の水面近くの隙間から、身体は薄茶、真っ黒な目に黒い爪。
足は4本、シッポは平たく大きい!それも大きな身体が2匹小さな身体が2匹!凍った氷の上に出てきた。
始めに見つけたのは、しんがりのノーボディー「カワウソだ!」「森の支配者のペルから聞いてここに来たんだ!」カワウソさんですか?「おーい!」
「あらあら小さいテディだこと!」どこから来たんだね。迷子のテディかい?
「森の支配者がクマなら沼の支配者はカワウソさ!」
森のペルに会ったのかい?
めっきり、入り江に顔出さないから巨木になって天に召されたと思っていたけど、まだ生きてるんだね。
「それで何の用だね」
この楕円形の足跡の持ち主を探しているんです。知っていたら教えてください。
「それであんたは誰でどこから来なの?」
奥からぞろぞろカワウソの家族が出て来ました。お父さんに子供が2匹!
お父さんは、流木を削ってイタドリの葉で巻いたタバコをふかしながら「また迷子のテディか?」
「また迷子?」と言うとやっぱりここにテディがいるの?
「カワウソのお父さん!見かけたこと、あるんですか?」
だから!あんたは誰で、どこからきたの?
ブリジット・カルの使い魔だった「ノーボディー」と言います。
「と言うと、今は使い魔じゃないのかい?」
はい!今はブリジットから職人号をもらって「見張り屋のノーボディー」st.kilda woodの精霊になりました。
でも今は、一貫と一緒に取り残された仲間を探す旅の途中なんです。
「一貫?それは人間かい?」「はい」
ブリジットと契約を結んだ職人号「仕立て屋の一貫」です。
そうかい、そうかい!st.kildaか!初めにそれが聞きたかったんだよ!
あんたたちの仲間はこの下にいるよ!
「この下?」
表向きは、カワウソの棲家って感じだろ!
この地下は、みんなアイツらの住処だよ!
「入り江の一族」
「谷の一族」
そして、「奥の一族」って言ったかな?
みんな一緒に住んでるよ!
一時間経ってみんな大きなタモの木に戻ってきました。。
ノーボディーはカワウソのお父さんを仲間に紹介して、今までの事を全部話しました。
嬉しさのあまり、みんな飛び跳ねて喜びました。
「だがな」とポツリとカワウソのお父さんは言いました。
もうここに越してきて、6年目の冬を迎える事になるかな?
一年一年姿が見えなくなり、特にこの冬場になると、ほとんど見ることがなくなったよ。
始めの頃は、どんどん仲間を増やして30匹近くいたんじゃないかな!
彼らの住処は下とはいえ、この冬場は温かい地下水が流れる地下10メートルぐらいの場所に、住んでると思うよ。
今は何匹いるかわからないなー!
ケンケンがウルフバーンの背中に積んできた、お土産をカワウソのお父さんに手渡しました。
「久々だなー!客人からお土産なんかもらうのは!それもとれたての小魚とカワガニ!」
お母さんと子供たちは、大喜び!素敵なお客様、と言いながら風倒木の棲家に持ち帰りました。
「テディの足跡がある以上必ず元気に顔出すからここで待ってようよ!」
バンチが小さな穴に向かって「おーい」「おーい」と連呼しました。
みんなもバンチに合わせて縦に開いた穴を見つけて叫びました。
「おーい!」「聞こえたら返事してくれー!」「おーい」
穴の底から何か聞こえます。
みんな静かにして!「何か聞こえるよ」
・・・・・小さな声で「おーい」と聞こえてきた!
「深いなー」その声はかなり奥の方から聞こえてきます。
「俺はst.kildaのバンチだー!」助けに来たぞー!
・・・・・・また小さな声で聞こえてきます。
「st.kilda?本当なの?「おーい!st.kildaから助けが来たぞー」
つづく