「さて。どこに行きましょうか?」


「へ?決まってないの?」


「だって、私ですよ?計画性のある翔さんやJとは違うんですから、
ノープランです」


「ふふ、そうなの」



「・・・じゃ、あなたが決めてくださいよ。
あなただったら、私とデートするならどこに連れて行きますか?」



「・・・・むずいこといきなりゆうなよ。
うーん、そうだな・・・」



あなたは腕を組んでうーんって悩んでる。
ふふ、なんか嬉しい。
今だけあなたを独り占めしてる。



「あ!・・・デートっていったらあれだけど、
おいら欲しいもんある」


「ん?欲しいもの?買い物に行きたいってこと」


「うん。画材店にね。今描いてる絵に使うんだけど・・・
ニノは興味ないから、つまんないか・・・」


「へー、私、画材店行ったことないですね。
行ってみたい。うん、いいですね。
あなたのプライベートあんまり知らないから、面白そう」


「そうか?それ面白いか?」


「はい。あなたの行きたいとこについて行きますよ。
私のこと気にしないで、いつも通りの行動をしてください」



「・・・行動って・・、まあニノがいいなら。
じゃ、まずは絵の具買いに行こうか」



タクシーを捕まえて、目的地の告げるあなた。
それ以降、特に会話はない。
けど、それが嫌じゃなくて、かえって心地良い。
あなたもそう思ってくれているかな?











タクシー画材店に到着した。



「ここ?」


「うん。遅くまでやってるんだ。
おいらよく来るから、店長と仲良いの」


「・・・へー」



店内に入ると、見たことのない専門的なものから、
色鉛筆や画用紙、私でも知ってるもの、
色んなものが並んでる。



途端にあなたの瞳が輝き出す。
ああ、この顔好き。
夢中になってるあなたは、本当に綺麗なんだよね。



もう私の存在忘れてるよね。
聞いたことない色の絵の具とにらめっこしてるあなた。
店長さんがあなたに気がついて、声をかけてきた。



「お!大ちゃん、久しぶりだね。
あれ、珍しい。一人じゃないのか、こんばんは」



店長さんがペコっと挨拶してくれた。
慌てて頭を下げる。



「ふふ、うん。ニノなら大丈夫だと思って」


「ふーん。じゃ、ごゆっくり。ニノくんこっちおいで」


「え?・・・」




店長さんがにっこり笑って、
作業スペース?みたいなとこに誘われた。




「大ちゃん、夢中になると長いから。コーヒーでいいかな?」


「え?あ、はい」


「・・・はい、どうぞ」


「ありがとうございます。・・・あの、聞いていいですか?」


「ん?」


「さっきの、大野さんここにはいつも1人で来るんですか?」


「うん。初めてじゃない?誰か連れてきたのは。
ほら、完全に自分の世界に入るって言うか、
夢中になって、何時間もみてるからね」


「へー、そうなんだ」



なんか嬉しくなった。ふと大野さんに目をやると、
さっきと違うとこで、今度は筆を物色してる。
その後ろ姿がなんか可愛い。
きっと口を尖らせてるんだろうな。



「ふふ、・・・大ちゃんは罪作りだね」


「え?」


「い、いや。じゃ、ごゆっくり」




・・・私、今顔に出てた。
ふふ、まあいいか。



今度は油絵コーナーに移動してるあなた。
いつもより、俊敏に動くあなたをみてるのは飽きないな。



どれぐらい経っただろう。
袋いっぱいのの商品の会計を済ませ、
満足げにあなたが戻ってきた。



「ごめん!ニノ。おいら夢中になっちゃって。
待ったよね。ごめん」


「・・・・・・」



ここで黙ってると、あなたはタレ眉をさらに下げて、
泣きそうな顔すんだよね。



「・・・怒ってる?」



ほら、やっぱり。
やっぱりあなたは可愛いんだ。




「・・・欲しいもの、全部買えましたか?」


「え?うん。これだけあれば当分大丈夫!」


「じゃ、いいです。お腹空いた・・・
どっか食べに行きません?大野さんの行きつけどこですか?」


「え?あ、そうだな。ご飯忘れてた・・・」






ふふふっとお互いの顔をみて笑いあい、
店長さんに挨拶して店を出た。
通りに出て、タクシーを拾った。