人類進化の螺旋の双生児?DZ | 陥穽

陥穽

陥穽(かんせい):落とし穴
詐称・詐欺・偽装・・・世の中はさまざまな陥穽に溢れている
騙されちゃいけない、なんて事書こうと思ったけれど・・・
感想文が多くなってしまった(^^;

全く知らない作家の、特に何かの賞を取ったわけでもない作品なのに、書店の新刊コーナーに平積みされただけの縁で、なぜか気になる。

稀にですが、このような、云わば本に呼ばれる、といった現象があります。

その日、何気に通りかかった際、視界の隅に引っかかりを感じたオレンジの本に、なぜか注意が向きました。

DZディーズィー

と書かれたタイトルに

進化―それは無慈悲で残酷な種のプロセス

という帯の文。

最初のページを捲って、読めそうだ!と直感し、購入に至りました。

(ちなみに、買ったときは知りませんでしたがw、この作品は、
第二十回横溝正史賞 正賞受賞作だそうです)
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ヴェトナム。決して衛生的とはいえない病院に、一人の妊婦ムイが訪れた。
まだ臨月には遠いはずだが、胎児は明らかに異常を示している。医師は一目診て、ムイに堕胎を勧めた。否やはない。
準備をするからと待たされたムイであったが、突然、お腹の子に先導されるかのように病院を抜けだしていた。
数ヵ月後、沖縄本島近海にて、日本の貨物船≪にしき丸≫が一隻の難民船を発見した。
救出された大勢難民の中に、出産寸前の妊婦、ムイの姿があった。

数年後、アメリカ ペンシルベニア州で、老夫婦の冷凍死体が発見された。
老夫婦には養子縁組した5歳の息子がいたはずだが、現場にはその姿はなかった。
誘拐され、既に殺されている可能性を持ちつつも、無事を祈って捜索を続けた警察であったが、犯人に結びつく証拠が何一つ見つからないまま、迷宮入りを迎えようとしていた。

その頃、ボルチモアの大学病院では、人間離れした頭脳を以って彗星の如く頭角を現した研究生グエンが、日本から研修に来ているイシバシを、全く新しい遺伝子操作手法の研究プロジェクトに抜擢する。イシバシのマニュピレータ操作の腕前を買ったようだった。
尊敬するグエンからの依頼。グエンの示す手法に倫理面での違和感を持ちつつも、イシバシは了承する。
しかしそれは、イシバシの予感どおり、人道に反するものであった。
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終盤に明かされるある事情に起因する特徴から、物語に絶妙ともいえるある種のトリックが含まれているため、物語の当初にはあることの関連性が見えません。

医療、殺人事件、遺伝子研究・・・一見関係のない、それぞれ種類の微妙に異なるジャンルの物語が少しずつ絡み合いながらも、全く別々に話が進み、しかし徐々に関連性が見えてくるといった巧みなストーリ展開を見せています。

そして、DZというキーワードの意味するもの。

そのテーマともいえるある事情に関しても、確かにそのとおりかもしれないし、あり得ない話ではないなと、少なくとも遺伝子系素人の私には、納得のゆくものでありました。

途中、特殊な目的を持った病院の様子が描かれているのですが、この病院は架空ではなく本当にそんな病院が実在するのか疑いたくなるような、しかしそれが事実であろうことが推測でき、知らない世界を見せつけられたという感があります。

本の解説の章に、そこまで極端ではないにせよそういった病院が実在する旨が書かれており、そこに入院されている患者さまには大変失礼ながらも、ショックを受けた作品です。

それがどういうものかは、私の知識と文章能力では誤解を招く恐れがあるのでここでは書きませんが、想像さえ全く及ばない世界が事実としてあることを知れただけでも、私にとっては収穫のある本だったと思います。

人間の、生物としての欠点とはなにか、そして、それを克服する進化とはどういうことか。

そういったことを深く考えさせられる作品です。

今日はここまで。

DZ ディーズィー [角川文庫]
小笠原 慧
陥穽-DZ