実はそのときには、まだ4巻までしか読んでいませんでした。
とりあえず6巻まで読まれた方でしたら、キリスト教の神父が説く愛についての私の見解から、私がそこまで読んでいないな、というのに気がつかれたかもしれません。
それくらい、6巻で、大きく“愛”への解釈が変わるのです。
この物語、主人公トルフィンの復讐劇という骨子を以って物語が始まりましたが、真のストーリーは別にあるようです。
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アシェラッドの船団は、スヴェン王率いるデンマーク・ヴァイキング軍につき、イングランドへ侵攻を開始した。
イングランド東中央部から侵略し陸路を南下、商業都市ロンドンにたどり着くが、そこで停滞した。ヨーム騎士団の戦士、“のっぽ”のトルケルがイングランド側に寝返っていたのだ。
陥ちぬロンドンに痺れを切らしたスヴェンは、ロンドンを僅かな兵と共に息子のクヌートに任せ、イングランド全土の掌握のために主力本体を移動。たが、トルケルは難なくクヌートを奪取し、デンマーク本隊を追った。
アシェラッドは、デンマークとイングランドからの報酬を得るために、トルケルからクヌートを救出するよう部下を焚きつけるが、真意は別にあった。
トルフィンの活躍によって首尾よくクヌートを奪還したアシェラッドは、クヌートの守護を引き受けつつイングランドを突破。デンマーク支配域にあるスヴェンの拠点ヨークに帰還する。
全てが想定の範囲を超えずに事が進んだアシェラッドは、そこで勝利を確信したが、スヴェンの一言に顔色を変える。
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イングランド侵攻編とでも言うといいかもしれませんが、8巻でひとまず物語に決着がつきます。どんな決着かは書きませんが、特筆すべきは、クヌート王子の覚醒です。
忠臣ラグナルの死によって誘発され、行動を共にしていたアル中のキリスト教神父ヴィリバルドが話す愛の定義について耳を傾けたクヌートが、突然覚醒するのです。
その覚醒するさまに逆に『奇跡を見た』と表するヴィリバルド、そしてまた、人間が殺しあう姿を天から見ているであろう神に対し『許せぬ』とするクヌートの言葉に、深い感銘と軽い畏怖を抱きました。
また、そんなヴィリバルドの言葉に、どこか日本の教育が間違っているような、妙な感覚に襲われました。
我が子に対する親の愛は、他の子に対する差別です。
非常に心に響きました。
もちろん、このヴィンランド・サガは、それだけではありません。
アシェラッドや、トルフィンの父トールズと、母のヘルガの過去、そしてトルケルとの関係などが明らかになり、ますます深みを帯びてきます。
そんななか、実のところ主人公トルフィンはあまり成長していません。
何年もアシェラッドに決闘を申し込んでは、同じ手で負けてしまう。そんなトルフィンをアシェラッドやトルケルがダメ出ししますが、トルフィンは受け付けません。そんな姿に、読み手がイライラするかもしれません。
戦略的な場面では、三国志や、アルスラーン戦記 などと比べるとやや見劣りする感がありますが、考えてみれば、そこを懲りすぎると逆にキャラクターがピンボケになってしまう気もしますので、実はそれでよかったりするのでしょう。
それでも、通り一遍の討った討たれたといった単純な戦術ばかりではありません。裏切りと承知の上で泳がせて利用し、自軍を有利にするといった、ウラを読む手なども幾つか登場します。
そういった意味では非常にバランスの取れた、且つ、充実した物語ともいえます。
強くオススメできる本です。
なお、ヴィンランド・サガに限った話ではありませんが、書店で並んでいる本には、オビがついています。
他の巻は良いのですが、最新の8巻に関しては、オビにネタバレがあります。
なるべく、オビから目を逸らして購入してみてください。
今日はここまで。
ヴィンランド・サガ 8 (アフタヌーンKC)[幸村 誠]