終わらぬ作家の初終了?涅槃の王 | 陥穽

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陥穽(かんせい):落とし穴
詐称・詐欺・偽装・・・世の中はさまざまな陥穽に溢れている
騙されちゃいけない、なんて事書こうと思ったけれど・・・
感想文が多くなってしまった(^^;

連休も終わり、やっと平日になりました。

どうも、休日は、しなければならないあれやこれやが多すぎて、そのため夜は眠くなってしまって、なかなかPCの前でじっとしていられないのです。

記事投稿はケータイからできるのですが、コメレスや、ペタ押し、ご訪問はほとんどできませんでした。

ご訪問くださった方やペタ下さった方、ご丁寧にもコメ下さった方には尚更に、深くお詫びいたします。
真に申し訳ありませんでした。

まぁ、連休も明けましたので、これからは、ちょっと元気に更新できそうです。普通は逆ですけどね(笑)

さて、てなわけで、少しの間といいつつも結構サボっていましたが、通常更新モード初回は、久々に紹介記事です。

長い間、終わらない作家と言われ続けた、夢枕獏 氏の“最初に完結した長編小説”。その、前編です。

当初は、幻獣変化というタイトルで書かれた、読みきりの物語でした。

お釈迦さまを主人公にした、伝奇の趣が強い作品です。

ですが、その主人公であるお釈迦さま、ゴータマシッダールタのその後の旅を、神獣変化というタイトルで書かれたのですが、これが長編になりました。

この前後編をあわせて、涅槃の王としてリリースされました。

涅槃の果実を探す話の幻獣変化前編となり、霊水を探す話の神獣変化後編となる、二部構成作品となりました。

この2つの作品に、共通するテーマとしているのは、永遠の命、です。

非常に重いテーマですが、曖昧な言葉でごまかさず、明確に表現されています。特に、後編のラスト直前、主人公が悟りを開くシーンの描写は、夢枕獏氏ならではの特異さに、寒気さえ感じました。

しかし、それが光るには、当然ながらそこに至るまでの、物語展開があってこそです。

結果的に、そのラストを迎えるための導入部ともなった、最初の章、涅槃の果実編の存在は大きいのです。
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王位を捨て沙門 となり、真理を探す旅に出た、釈迦族 の王子ゴータマ・シッダールタは、師となった僧アーラーマ・カーラーマから、涅槃の果実の噂を聞く。雪冠樹という巨大な木に、十年に一度実をつけるその涅槃の果実を食すと、不老不死が得られるというものだ。
不老不死を得たいとは思わないがその過程に興味を持ったシッダールタは、謎の司祭僧ゼンをリーダーとする涅槃の果実を目指すというパーティーに加わり、雪冠樹のある魑魅魍魎の地ナ・オムへと向かう旅に出る。
ナ・オムとは何か、ゼンの目的は何なのか、槃の果実は本当にあるのか。そして、ゼンシッダールタは、不老不死は得られるのか・・・。
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RPGを思わせるストーリー展開ですが、もともとは山岳小説を書くつもりで執筆したのだそうです。実際、雪冠樹(ヒウナージャン)は、その高さが7000メートルと巨大で、木というより山のイメージで描かれていますし、頂上付近では、雪山登山での様相が色濃く表現されています。

また、そういった視覚的な面白さに加え、真理に触れそうで触れられないシッダールタの心理描写、当時のインドで布かれていたカースト制 による身分制度、さらに、メインのテーマである不老不死について様々な立場の人間がどのように考えているのかなど、きめ細かに表現されていて、非常に濃厚な文章になっています。

しかしながら、一つ一つの文が短く、非常にテンポ読み進めることができて、重さを感じさせません。
その辺の表現は、夢枕獏ならではの得意技といってもよい手法だと思います。

ストーリーとは直接関係ありませんが、階級に関係なく死は平等に訪れる、とか、階級は人が決めた法であって天の法ではないといった、登場人物同士の会話のシーンが、後々まで心に残ります。

また、カースト制 を始めとするその当時の人々の世界観も、見所の一つかと思います。

それらの部分を一つ一つ取ってみても、読む価値あり、と思います。

そして、これに続く本編ともいえる後編、霊水編も、さらに見所満載ですが、それはまた、後々(エッ!?)の記事で(笑)

今日はここまで。

涅槃の王(1)[夢枕獏]
陥穽-涅槃の王1