『ヨユウシャクヤク』 

 5. 痛み  〜ひなげし〜 

 

 

 

 

テレビをつけると痛ましい事故や殺伐とした事件

の情報が毎日、毎日飛び込んでくる。

 

 

こんなに豊かで、満ち足りた世界のあちこちに

世の中は、怒り、憎しみ、恨み、悲しみで

溢れかえっているのは何故だろう。

 

怒りや悲しみは電波を通して人々に伝染する。

 

 

知らない町で、会ったこともない他人の

身の上に起きた出来事が、

まるで自分のことのように心を砕き、

大切な人の命を奪った相手にこの上ない

怒りの感情を剥き出しにする。

 

大切な人を失った悲しみは、

その苦しみを味わった人にしか

解らないかもしれないけれど、

人生で1度でも大切にされたことのある人は

その痛みをきっと想像することができるはず。

 

 

 

 

”自分は何よりも大切な存在”

 

”生きているだけで価値がある”

 

 

もし世の中の全ての人がそう

心から信じることができれば、

もっと相手の存在も尊重し思いやれる。

 

 

 

1人で今すぐに世界中の争いをなくす

ことはきっと出来ないけれど、

1人1人が自分の家族をまず愛し

大切にする、大切にされる感覚を味わい

尽くすことが、未来の平和に

繋がるのではないか…。

 

 

そんなことをふと考えながら、

今日も涙が止まらない。

 

 

灯台下暗し。

自分の足元にわずかな火が燻り

始めていることも気づかずに。

 

つづく