スタニスワフ・レム『ソラリス』 | 文学どうでしょう

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スタニスワフ・レム(沼野充義訳)『ソラリス』(国書刊行会)を読みました。

みなさんは『ソラリス』をご存知でしょうか。SF好きの方はご存知だろうと思います。これはかなり面白い小説です。SFはちょっと苦手なんだよなあ・・・という方にもおすすめな小説です。

ハヤカワ文庫SFにも飯田規和訳の『ソラリスの陽のもとに』がありますが、こちらはロシア語に翻訳されたものを翻訳したものなので、原典のポーランド語版と比べると、カットされている部分があったりするらしいです。

SFに関しては、まとめて読む〈SF小説月間〉をそのうちやろうと思っていますが、なぜこれを今読み返したかというと、最近、タルコフスキー監督の映画版を観たんです。早稲田松竹という名画座でかかっていたので。『惑星ソラリス』です。

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タルコフスキー監督は、ぼくもまだ数本しか観ていませんが、フランスのゴダール、トリュフォー、イタリアのフェリーニなどとともに、小説の中で言及されることの多い監督です。文学的というか、哲学的な風格漂う感じがたしかにします。

ぼくと『ソラリス』の出会いは、もっと新しい映画化によってでした。スティーブン・ソダーバーグ監督、ジョージ・クルーニー主演の映画。

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原作ファン、あるいはタルコフスキー版のファンの方はそれぞれ思うところもあるでしょうが、この映画がぼくにとってはすごく面白かったんです。とても静かな映画で、テーマもラブストーリー的というか、原作と比べるとくっきりしすぎてる感じはたしかにあるんですが、やっぱり『ソラリス』自体の発想がずば抜けて面白いので楽しめます。

まとめると、ぼくはソダーバーグ版の映画を観て、原作を読み、タルコフスキー版の映画を最近観て、また原作を読んだという流れになります。原作はどちらも沼野充義訳の国書刊行会版です。

どの順番で観るか、読むか、どれがベストかは分かりませんけども、それほど読みづらい小説ではないので、小説から入るのももちろんありです。ぼくのように新しい映画から入って、原作を読むというのも、それはそれでいいと思います。タルコフスキー版にこだわるのもいいですし。どれも少しずつ細部は違います。

映画との関連はこれくらいにして、基本的には小説の内容だけ触れていきますね。映画もおおよそのところは同じです。

作品のあらすじ


物語は、心理学者であるケルヴィンの1人称で書かれていきます。〈私〉は地球からソラリス・ステーションへ向かいます。ソラリス・ステーションは、ソラリスという星を観察している宇宙ステーションです。

ソラリスというのは不思議な星で、海のようなものがあるんです。それがなんなのか、まだよく分かっていませんが、生命のようなものではないか、という説もあります。通常の物理法則では考えられないようなことが起こっていたりします。

ソラリスの不思議な現象を調査するのがソラリス・ステーションの役目であり、3人の宇宙飛行士が滞在しています。ギバリャン、スナウト、サルトリウスの3人。それぞれがサイバネティクス学者や物理学者などの専門家でもあります。

〈私〉がソラリス・ステーションに到着しても、誰も出迎えに来ません。不思議に思う〈私〉。まずスナウトに会いますが、どうも様子がおかしい。「知らない、おまえなんか知らない、いったい何が欲しいんだ・・・・・・」(13ページ)と言うスナウト。どうやら酒びたりらしい様子。

〈私〉はスナウトをなんとか正気に戻させると、ショッキングなニュースを聞きます。ギバリャンが死んだというんです。自ら命を絶ったと。〈私〉の友人だったギバリャン。自殺をするような人間では決してなかった。一体ギバリャンの身になにが起こったのか。

ギバリャンが亡くなって、ソラリス・ステーションには3人しかいないはずです。ところが〈私〉は少しずつ奇妙なものを目撃します。黒人の女。サルトリウスと一緒にいるらしい子供。一体このソラリス・ステーションでなにが起こっているのか。

ある夜、夢を見ます。ハリーが出てくる夢。こんな風に書かれています。

ベッドの向かいでは、半ばカーテンが開いた窓のそばに、赤い太陽の光を浴びて誰かが椅子に座っていた。ハリーだった。白いビーチ・ドレスを着、素足で、足を組んでいる。後ろに撫でつけられた黒っぽい髪、ドレスの薄い生地が張りつめた胸もと。彼女は肘まで日に焼けた腕を下におろし、身動きもしないで黒いまつげの奥から私を見つめていた。私はまったく心安らかに、彼女をじっと見つめていた。最初に思ったのは、こんなことだーー「すばらしいことだ、自分が夢を見ていると自分でもわかる夢だとは」(84~85ページ)


なぜ夢だと分かるかというと、ハリーはもう10年前に亡くなっているから。ハリーは〈私〉に寄り添って、そっと口づけをします。〈私〉はようやく夢ではないことに気がつきます。

いまや火を見るよりも明らかだったーーこれはハリーではない。そして、もう一つ、ほとんど確信できたのは、彼女自身がそれを知らないでいる、ということだった。(92ページ)


なぜハリーが現れたかは、やはりソラリスの海が関わってくるんですが、あらすじの紹介はこの辺りまでにしておきましょう。ソラリス・ステーションという限定された空間、限定された登場人物、起こる奇妙な出来事。この設定は抜群に面白いでしょう? 人間が存在するとはなにか、という哲学的なテーマも浮かび上がります。

小説も映画も、こうした〈お客さん〉がやってくる物語です。なぜそんなことが起こるのか、それによってどんなことが起こるのか、物語はどんな結末をむかえるのか。ソラリスの海の謎とは一体!?

そんなお話です。ソラリスの歴史についてなど、若干読みづらい部分はありますが、それ以外は会話文も多いので、わりと読みやすいはずです。興味を持った方はぜひ読んでみてください。機会があれば映画も。

おすすめの関連作品


では、関連した映画のおすすめを2本。

まずは宇宙ものではなく、深海での話ですが、『スフィア』という映画がおすすめです。

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深海で謎の物体が発見されるんです。金色のスフィア(球体)。心理学者や物理学者など、様々な専門家がその謎を解こうと試みますが、やがて奇妙なことが次々と起きて・・・という物語。密閉された空間、精神的なものが大きな影響力を持つという点で、『ソラリス』に似ていますが、ちょっとホラーテイストだったりします。これは面白いです。

『ジュラシック・パーク』で有名なマイクル・クライトン原作です。原作も面白いですよ。

続いては少人数の宇宙ステーションものということで、『月に囚われた男』です。

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この映画は、サム・ロックウェルしか出てきません。サム・ロックウェルは月で1人、仕事をしているんです。任期が終わって、地球にいる家族の元に戻れる日を夢見ながら。ところがある時、事故が起こったことから、思わぬことが起こって・・・という物語。

一見すると退屈そうな物語ですが、SF的には相当面白いです。おすすめの1本です。

深海や宇宙は今なお謎に満ちていますね。SFにはある種のパターンがあるんですけど、それでもやっぱり心惹かれるものがあります。みなさんもたまにはSFに手を伸ばしてみたらいかがでしょうか。

明日は、ハックスリー『すばらしい新世界』を紹介する予定です。こちらも近未来を描いたSF的な作品です。SFが好きな方はお楽しみに。

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