今年の夏のザルツブルク音楽祭のチケット1次申込は、1/23までとなっており、本日は今年の夏のザルツブルク音楽祭に行くべきかを検討したいと思います。

私は1991年のザルツブルク音楽祭から毎年ザルツブルグに行っており(1991年に初めて行った時はモーツァルト・イヤーで小澤さんのイドメネオを聴きました)、ひと夏で3回もザルツブルクに行ったことがあるくらいクレイジーなザルツブルク音楽祭マニアなんです。2020年はさすがに行けませんでしたが(コロナの影響で予約していたチケットが全て自動的にキャンセルになりました)、21年と22年の夏はザルツブルクに行きました。21年は日本人観客は皆無、昨年の22年はウィーン・フィルのコンサートに10人くらい日本人がいらしていました。今年の夏は、このままいけば、欧州から日本帰国時の陰性証明書無しで行けるザルツブルク音楽祭なので、日本人の方で渡航を考えている方もいるでしょう。


ですが、今年のザルツブルク音楽祭は(2020年の縮小開催を例外とすると)、この10年くらいでは「不作の年」というのが結論です。これには、ヘルガ・ラーブル=シュタドラーさんが音楽祭総裁を21年末に退任し、22年からクリスティーナ・ハマーが新総裁になったことが影響しているでしょう。シュタドラーさんは何度かお会いし、今年の元旦もウィーンのインペリアルホテルのロビーとニューイヤーコンサートの会場でお会いしましたが、なかなかの凄腕の政治家で、彼女の時代は豪華で魅力的なプログラムが多かったです。コロナ前までは、オペラではネトレプコ、ドミンゴ、カウフマンなどのスーパースター歌手がオペラに出演し、ムーティさん指揮のオペラもありました。コンサートでは、ムジカエテルナなどの最先端オケをいち早く重用していましたし、昨年まではフローレスのソロコンサートやガランチャ出演のコンサートは名物でした。しかし、今年のオペラはいわゆるスーパースター歌手がおらず、マクベスに出演するグレゴリアンやバルトリくらいしか注目すべきスター歌手が見当たらないです。オペラ担当の指揮者もウェルザー=メストさんのマクベスくらいで、あとの公演はあまり興味がそそられない指揮者ばかりです。そのため、円安、航空券代やホテル代の高騰を考えると、予算とスケジュールの余裕がない方は、先日書いた11月の来日公演に投じた方が良いと思います。


そんな中でも、今年のザルツブルク音楽祭で注目の公演は次の4つで、そのうちの3つは行こうと思います。


1. ティーレマン指揮 ウィーン・フィル

ブラームス: ドイツ・レクイエム


2. ヴェルディ「マクベス」

ウェルザー=メスト指揮、ウィーン・フィル

Vladislav Sulimsky Macbeth 

Tareq Nazmi Banco  Asmik Grigorian Lady Macbeth  Caterina Piva Lady-in-waiting to Lady Macbeth 

Jonathan Tetelman Macduff  Aleksei Kulagin Doctor 


3. グルック「オルフェオとエウリディーチェ」

カプアーノ指揮 モナコ公の音楽家たち=Les Musiciens de Prince-Monaco

Cecilia Bartoli Orfeo 

Mélissa Petit Euridice 

Madison Nonoa Amore 


4.クルレンティス指揮 ユートピア

モーツァルト: ミサ曲K.427


くらいでしょうか。これらの公演は日本で聴くことはできないでしょう。ちなみにベルリン・フィルの2公演は日本でも聴けると思いますし、最上カテゴリーのチケット代が€235で約34000円なので、日本公演で良いでしょう。


ちなみに近年で一番感動したザルツブルク音楽祭の公演は2021年8月のネトレプコ主演の「トスカ」です。この演出は見事にリアルな読み替えをしていて、第二幕でスカルピアは半殺しの状態で、第三幕のラストシーンでは車椅子姿で復活したスカルピアがトスカをピストルで殺すると言う衝撃的なラストで、飽きるほど観たトスカも新鮮でした。このトスカは映像で再度観てみたいです。



2021年8月のトスカ

(トスカはネトレプコ、カヴァラドッシは夫君のエイヴァゾフ。エイヴァゾフは声量が小さいが、舞台ではネトレプコが歌手役、エイヴァゾフが画家だから、これも設定上はリアルで良し!でした)