たまには。

真面目なお顔で。
 
 
さて
 
母に、義理兄のことをカミングアウトした翌朝。
 
やはり父は何も言わず、朝の挨拶のみだった。
夕べ、母から私の話をあらいざらい聞いたはずなのに。
 
まあ実兄も祖母も近くにいたし、朝からする話題でも無いけれど
洗面所でも、玄関でも私と二人きりになったのに。
 
その日の夜も、次の日も、何日経っても次の週末が来ても父は何も言わなかった。
普段からさほど必要以上の会話はしていないので、いつも通りということだ。
 
ひと言も無ければ、態度にも何の変化も無い。
まるで何も聞いていないかのように。
 
娘が、しかも身内の、自分の連れ子に長いこと性的虐待を受けていたと聞いて、
何も言う気にならないのだろうか。
 
「辛い思いをさせたな」とか
「気付いてやれなくて悪かったな」とか
「これからは心配ないからな」とか
 
わかっていた。
父がそんな、父親らしいことを言えるはずが無いということを。
 
もしかしたら、心の中では思っていたかも知れない。
けれど表に出すのは不得手なのだろう、この人は。
昭和ひとケタ生まれの親父なんてみんなこんなもので、
高倉健さんみたいに、男は寡黙に、どんと構えているべきだとでも思っているのかも。
 
これは、ある程度大人になってから思ったことであって、
当時中学生だった私には、父が何も言わないことが信じられなかった。
 
どんなに言葉にしづらくても、どんなに言いにくいことでも
こんな、娘の人生の一大事には、絞り出してでも言葉を掛けてくれるのが親というものじゃないの?
 
不器用、とか言いにくいから、で済む話なの?
 
 
私は父に「スルー」されたのだ。
当時はそんな言葉は無かったけれど。