2013年。アメリカ。"Drinking Buddies".
  ジョー・スワンバーグ監督・脚本・製作。
 ビール工場で働くルーク(ジェイク・ジョンソン)とその恋人ジル(アナ・ケンドリック)、ケイト(オリヴィア・ワイルド)とその恋人クリス(ロン・リヴィングストン)の4人のうまくいきそうでいかない恋と友情を描いた物語。

 アナ・ケンドリックの出る映画にはハズレが少ないような気がするので見てみたが、やはりそれなりに面白かった。台本なしでその場の話し合いと即興で演じられたというせりふのやりとりや出演者の表情の変化がリアルで、ジャンプカットだらけの編集もテンポが良くて興味深かった。
 ラストシーンのさわやかさは感動的で、「男と女の友情は成立するのか。」というよく取り上げられるテーマに対して、「そんなの成立するにきまってるよ。」という美しいメッセージにもなっていた。

 タランティーノが2013年のベスト10の第5位に選んだことで世界的に注目され隠れたヒット映画になっているようだ。
 しかし、この映画を『ゼロ・グラビティ』などの大ヒット作品より上位に持ってくることには戦略的な意図がありそうに思える。この『ドリンキング・バディーズ』の次の第6位はもうすぐ日本公開になる『フランシス・ハ』というブルックリンが舞台のロマンチック・コメディで、タランティーノはこのジャンルの映画に執着しているように見える。
 『映画秘宝』では必ず新作の特集が組まれるタランティーノだが、当の本人が選ぶ映画は映画秘宝とは程遠く、女性向けファッション誌のベスト10に限りなく近い(というより、現実の女性向けファッション誌よりもハードコアに女性向けファッション誌的である)
のが変で面白い。

 この『ドリンキング・バディーズ』の出演者やスタッフの名前を見ていると、映画業界の世代交代の波が訪れていることを実感する。
 監督のジョー・スワンバーグは『V/H/Sシンドローム』というスプラッターなPOVのオムニバス・ホラー映画で日本では知られていたが、その人脈からか『キャビン・フィーバー2』のタイ・ウェスト監督が主人公の同僚で嫌味なノッポの男役で出演している。ホラー映画の新世代とも深い交流があるようだが、ジョー・スワンバーグ自身はエリック・ロメールみたいに少人数の機動力のあるスタッフで作る恋愛喜劇を目指しているようだ。
 出演者のひとりのアナ・ケンドリックとは気が合うようで、今年発表された『ハッピー・クリスマス』という新作も彼女の主演なのでDVDストレートでも良いから見てみたい。
      IMDB

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 ケイトとルークが互いの恋人を紹介しあって、4人で別荘に休暇に出かける。別荘での楽しくなるはずだった休日が気まずい雰囲気になってしまい、4人の関係が流動的になってきたあたりから、友だちだったケイトとルークが互いを異性として意識し始めるのだろう、よくある話だ、などと思っていたら、そういう展開にはならなかったところが良かった。

 ケイトがクリスにふられて、酔った勢いで会社の同僚(タイ・ウェスト)と寝てしまったことを知ったルークが不機嫌になり、自分が不機嫌になったこと自体に腹を立てるシーンの繊細な描き方から、ルークもケイトのことを友だち以上の存在として意識し始めたかに見えた。
 しかし、ルークがケイトの引っ越しの手伝いをしているときに手をけがして出血したとき(出血シーンはさすがに『V/H/Sシンドローム』の監督らしく無駄に大量出血していた)、ケイトのダメな女の典型的な対応にドン引きするエピソードが素晴らしい。
 ケイトのダメ女ぶりを遠目に見ながら「やってられねえぜ。」とつぶやくルークを演じるジェイク・ジョンソンはけっこう上手いな、と思ったら、『彼女はパートタイム・トラベラー』で印象深いヒロインの上司を演じていた俳優だった。

 ケイトを演じるオリヴィア・ワイルド(『トロン・レガシー』のクオラ役で知られている)の美人だけど部屋の片づけも出来ないダメ女だが、会社では気の弱い上司に頼られて男気を発揮してテキパキと動く、という単純なようで意外と複雑なキャラクターも撮影現場の雰囲気がよほど良かったのか見事に演じられていた。おおらかなようで案外心が狭い点が見えてくるところも上手だった。

 アルベール・カミュを引用して会話をしたりする録音技師のクリス役のロン・リヴィングストンの文学かぶれの優柔不断男演技も好ましく感じられる。>

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