2012年。アメリカ。"The Guilt Trip".
  アン・フレッチャー監督。ダン・フォーゲルマン脚本。
 アメリカでは昨年のクリスマスにファミリー層や中高年の観客を狙って公開されたものの、話題になることもなく消えていったと思われるロード・ムービー。
 バーブラ・ストライサンドとセス・ローゲンとの組み合わせは予想以上に相性が良くて、二人のやりとりも面白いので残念だが、セス・ローゲンが大物女優の前で遠慮したのか普段の毒のあるギャグではなく、遠慮がちなギャグなのが、『有吉反省会』での有吉みたいに気持ち悪くもある。
 バーブラ・ストライサンドは今年71歳になる1970年代を全盛期とする大物歌手・女優・タレントだが、びっくりするくらい若々しい。大富豪なので何らかのアンチエイジングの技術を導入しているのかも知れないが、セス・ローゲンとまともに口論をやり合える早口とパワーはごまかしが利かないので本当に若いのだろう。

 父親が亡くなってからはニューヨークで一人暮らしをしている母親のジョイス(ストライサンド)を出張のついでに訪ねることにしたロサンジェルス在住の一人息子のアンディ(ローゲン)は、久しぶりの再会を喜ぶ間もなく母親からアンドリューという自分の名前の由来について衝撃的な話を聞かされる。
 アンドリューとは母親が運命の恋人だと思った相手の名前で、アンドリューと結婚できなかったので、妥協して結婚した父親との間にできた息子に、夫には内緒でアンドリューと名付けたのだという。
 ネットで検索してみると母親のかつての恋人は現在も現役で大手広告代理店のサンフランシスコ支社にいることがわかった。
 
 気が強そうに見えて寂しがり屋の母親を想って、アンディはジョイスに「サンフランシスコまで親子で自動車旅行に出かけよう。」と提案する。
 息子を溺愛する母親と、母親の行動を毛嫌いしながらも母親に依存している息子との複雑にこじれた関係が旅を通して少しずつ解きほぐされていくさまが見どころになっている、しんみりした親子ドラマで、物足りないところもあるがアン・フレッチャー監督の繊細な人物描写には面白いところもあった。
        IMDb

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 アンディは環境保護庁に勤める化学者だったが、長年の夢だったオリジナルの洗剤の開発に成功し、大手のスーパーマーケットに置いてもらうためのセールスの旅をしていたが、プレゼンテーション能力のなさが災いして門前払いを受け続けていた。すでに父親の遺産も貯金も使い果たして絶望的な状況にいる。

 アンディが母親のジョイスのアドバイスを受け入れて、見事なプレゼンテーションをやってのける場面が、ギャグの要素と母親と息子との和解という感動的な要素がまじりあって映画のひとつのクライマックスにもなっていた。

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 旅の途中でアンディの高校時代の恋人ジェシカ(イヴォンヌ・ストラホフスキー)に会ってみようと母親が言い出して、実際に会いに行ったらジェシカは結婚しており、夫(トム・ハンクスの息子、コリン・ハンクス)と仲が良いところを見せつけられて気まずい思いをする。
 久しぶりに見たコリン・ハンクスは相変わらず特徴のない「いいやつ」キャラのままなのがおかしい。ジェシカ役の女優はテレビでは売れっ子女優のようだ。

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 ステーキ1.4キロを1時間で食べたらただになる、というチャレンジに挑戦したジョイスはテキサス紳士のベン(ブレット・カレン)の的確なアドバイスで見事にステーキを平らげる。
 ベンはジョイスに一目ぼれした様子で、別れ際に名刺を手渡す。その名刺がラストシーンの哀愁ただようギャグの伏線になっているという点はこじゃれていた。

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 さまざまな出来事の後で、ついにサンフランシスコの母親のかつての恋人、アンドリューを訪ねた母と息子だった。
 ジョイスが見たのは息子が生まれるはるか昔の若いときのままのアンドリュー(アダム・スコット)だった。
 ジャド・アパトー・ギャングの一員でありながら、『ピラニア3D』などにも出演するお笑い系なのかイケメン系なのかよくわからないアダム・スコットだが一部の女性たちの間ではカルトな支持を受けているようだ。

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 アンドリューにはジョイスという名前の妹(アリ・グレイナー)がいた。マイケル・セラと共演した『キミに逢えたら!』(2008年)や『ローラーガールズ・ダイアリー』(2009年)でのエバ・デストラクション役が懐かしいアリ・グレイナーだが、いつの間にか売れっ子女優になっていたようだ。
 ロード・ムービーにしては、ロード・ムービーらしい移動の場面が少ないのが残念な印象があった。

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