2009年。デンマーク/フィンランド/スウェーデン/イタリア。"INTO ETERNITY".
  マイケル・マドセン監督・出演。
 世界初の高レベル放射性廃棄物(使用済み核燃料など)の最終処分場がフィンランドに建設されることになり、プロジェクトに関わった科学者や、専門家の意見を聴取したドキュメンタリー映画。

 高レベル放射性廃棄物の放射線量の減衰には数万年単位の歳月を要するため、フィンランドでは地層深くの施設に保存して10万年間経過させる予定らしい。

 マイケル・マドセンという名前には一瞬戸惑った。あの『レザボア・ドッグス』の耳切り男、ことミスター・ブロンドがこんなシリアスなドキュメンタリー映画を作ったのか、そんなはずはないだろう、案の定、同姓同名の別人だった。

 科学者たちにインタビューしていくフィルムをつないだものに、施設の建設現場のフィルムや、建設予定地を映した映像がはさみこまれるシンプルな映画だったが、
 ちょっと意外だったのは、科学者たちや専門家の全員が、10万年後には現在の文明は存在していない、という前提でプロジェクトについて語っている点だった。
 人間そのものも10万年後には消滅している、と考えている人もいるようだった。
 よって、このプロジェクトや施設の意味を10万年後の「誰か」に理解させるためには、現在の言語では不可能なので、絵によって説明しようという案も出されていた。

 300年後の未来ですら想像できないのに、10万年後なんて想像力の限界を突破している。科学者たちがクールに人類はもう存在していないだろう、と考えたのも確率的には正しい判断なのだろう。
 科学者たちが懸念していたのは、人類がエジプトの古代遺跡に描かれた絵による文字をある程度は解読できたようには、10万年後の「何か、あるいは誰か」は解読する能力を持たないのではないか、という点だった。

 高レベル放射性廃棄物の行く末を案じる映画かと思っていたら(実際はそうなのだったのだろう)、その手前の前提となっている事柄に引っかかって違和感を感じてしまい、文明の行く末に想いをはせる感覚が強く残った。
 監督自らが登場してマッチをすって、思わせぶりな言葉をつぶやくのは、ややあざとい感じがした。
       IMDb       トーキョーノーザンライツフェスティバル2011
映画の感想文日記-intoeternity1
 専門家の人々も、具体的にものごとを語る、というより、将来の安全性についての漠然とした不安に取りつかれているような印象があった。
 数万年先のことなど誰にもわからないし、処分場は問題を先送りするだけのものなので、当然の受け答えではあったのだろう。
映画の感想文日記-intoeternity2
 人類滅亡へのカウントダウンが始まった、という設定のSF映画に出てきそうな施設の内部の建設風景。どの場所にも荒涼としたイメージが強い。
映画の感想文日記-intoeternity4
 数万年後に誰かが施設を発見したら、好奇心から開けてしまうだろう、出来ることなら誰にも発見されずに埋もれたままの方が望ましい、と言う科学者の言葉が印象的だった。
映画の感想文日記-intoeternity3
 上映後に福島第一原発の設計者である菊地洋一氏のトークショーがあった。話の内容にユーモアがあり、めちゃくちゃに面白い話だったので、ユーモアに気をとられて、何を話していたのかという大事なことは全く忘れてしまった。
 出版される著書の宣伝をしていたので、その本を読んだら何を話されていたのかわかるかも知れない。
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