★ 『16 [jyu-roku]』

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2007年。スローラーナー。
  奥原浩志監督・脚本・編集。
 『赤い文化住宅の初子』のスピンオフとして製作された映画。
 スピンオフといっても、物語は『赤い文化住宅の初子』から派生したものではなく、
 地方から女優になるために上京してきた東亜優が演じるサキという16歳の少女が、『赤い文化住宅の初子』(ここでは『初子の恋』というタイトルになっている)のオーディションを受けて合格し、映画の撮影に入ってゆく過程が描かれている。

 サキの故郷の同級生のヤマジ(柄本明の息子で柄本佑の弟の柄本時生)が、後半からは目立ってきて、
 主人公サキの感情よりも、ヤマジの方が強く印象に残るのは、作品としては予想外の展開だったのかも知れないものの、ヤマジの行動が面白かったので、結果的には面白い作品になってしまっていた。

 『赤い文化住宅の初子』のときのイメージとはかなり違い、実際の東亜優に近いと思われるサキという少女は、地方から女優を目指して単身で上京してきただけに、初子と同じあぶなっかしさは多少あるものの、ふてぶてしさもあわせ持っている。
 連絡のとれない先輩を捜して同じく上京してきたヤマジの方がふらふらして、方向を見失っており、ヤンキーのくせに子どもっぽい面が多く、微笑ましかった。
 この映画はヤマジのキャラクターで面白くなっていたように思った。
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 サキに対してひそかに恋心を持っていると思われるヤマジは、サキが彼に優しく接することに感動しつつ、自分とは別の世界に行ってしまった同級生の存在がまぶしく見えて、仕方がないようだった。
 山村という先輩を頼って、東京に出てきたものの、山村は家賃滞納の末に夜逃げしていた。
 中学で不登校になり、ヤンキーになったヤマジには山村しか友達と呼べる人間はいない。そのことをサキに語りながら涙を流してしまう、途方に暮れたヤマジの孤独が痛々しい。
 ファミレスでサキと一緒に夜を明かしたヤマジは、サキが眠っている姿を見て、黙って姿を消す。
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 父親と母親の心配をよそに、サキは女優という未知の世界に入ってゆく期待と不安で揺れ動く。
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 『初子の恋』(『赤い文化住宅の初子』)のオーディション場面では、監督のタナダユキが出演し、サキに対して答えようのないような難しい質問をぶつける。
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 ギターの弾き語りが出来る女性には無条件に尊敬の念を抱くので、サキがぎこちないながら、ギターを抱えて歌を歌うシーンには感動した。
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 サキがひそかに恋のような想いを抱いた共演者で先輩の丸山(松岡俊介)。サキが舞台を見に行ったときに、丸山は自分の妻を紹介する。そこでサキの恋心は消滅する。
 マネージャーの沢崎(小市慢太郎)も面倒見の良い、味わい深いキャラクターだった。
 ヤマジのその後を見たくなったので、この映画は実質的にはヤマジが主演だといっていいものだろう、と思われた。
JVCエンタテインメント
16 [jyu-roku]
木下美紗都
海 東京 さよなら