★ 『ゾンビーノ』

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2006年。LionsGate."FIDO".
   アンドリュー・カリー監督・脚本。
 アナグラム・ピクチャーズというカナダの小さな映画製作会社によって作られたゾンビ映画。1950年代のダグラス・サーク調の郊外住宅地を舞台に、ゾンビと人間との共存が描かれている。
 日本語タイトルをつけた配給会社のセンスがさえている。イタリア人のように女性に色目を使い、主人公の少年の母親をとりこにするダンディなゾンビが主役なので、『ゾンビーノ』となった。

 『ショーン・オブ・ザ・デッド』以来の面白いゾンビ映画の傑作で、ブラック・ユーモアも強烈で気が利いている。1950年代に時代設定を置きながら、カナダ人から見た現在のアメリカ合衆国そのものが表現されている。
 中心になる父と息子との関係の描き方にちょっと物足りないものを感じたが、全体に面白いキャラクターの登場人物が多数いて、新人とは思えない演出だと思ったら、1990年代からキャリアをスタートさせて10年以上経験を積んでいる監督らしい。
 ゾンビ映画の基本はジョージ・A・ロメロのオリジナルに忠実に、ノロノロ歩き、脳天を撃たれると死に、残酷な描写もあり、ただのゾンビ映画のパロディではない正統派な作りは『ショーン・オブ・ザ・デッド』と同じく、強いレスペクトの精神を感じた。
   IMDb       公式サイト(日本)
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 ゾンビとの戦争に勝利した人類は、ゾムコン社という警備会社が作ったセキュリティ・システムの中で、ゾンビから人を食べる本能を取り除く首輪により、ゾンビを郵便や新聞、牛乳などの配達や掃除人、交通整理や警備、庭の手入れなど、かつて黒人奴隷がやっていた仕事をさせることによって、快適な生活を過ごしていた。
 住民は白人だけで、アフロ系もアジア系もメキシコ系も全く存在しない。
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 ゾムコン社によって管理されている社会に疑問を抱くティミー少年(クサン・レイ)は、友達もおらず、世間体を気にする母親が買ったゾンビ(ビル・コノリー)にファイドという名前をつけて、飼い犬をかわいがるように、次第にファイドに愛情を感じ始める。
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 ファイドに夫のスーツを着せたら、ヒッチコック映画でのケイリー・グラントみたいにダンディーであることに気づいたティミー少年の母親(キャリー=アン・モス)は、ファイドにダンスのパートナーをさせたりするうちに、息子と同じく愛情を感じ始める。
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 タバコを吸って満足げな表情になるファイド。
 過去に自分の家族がゾンビになったのを自らの手で殺した過去の恐怖から逃れられずにいるティミー少年の父(ディラン・ベイカー)は、ある日、ティミー少年にプレゼントとして拳銃を渡す。
 それは大人になる儀式であるとともに、もしものときは父親を撃ち殺せ、というメッセージでもあった。
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 近所に住む元ゾムコン社の社員で、タミー(ソニア・ベネット)という若くきれいなゾンビを愛人にしているらしいミスター・テオポリス(ティム・ブレイク・ネルソン)や、近所に越してきたゾムコン社の幹部社員でゾンビ戦争の英雄ミスター・ボトムズ(ヘンリー・ツェーニー)とその生意気な娘シンディ(Alexia Fast)など個性的な登場人物が物語を面白くしていた。
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 ある日ファイドが近所の嫌われ者の老婆、ヘンダーソン夫人を食べてしまったことから、住宅街に大混乱が巻き起こる。捕らわれたファイドを助けるためティミー少年がゾムコン社内に侵入したことを知った父親は、決死の覚悟で息子を救出に向かう。エンディングはふざけ切った感じでおかしい。
 全編に流れる’50年代調の音楽もけっこう良かった。
ジェネオン エンタテインメント
ゾンビーノ デラックス版