本日04月10日は、デルフィーヌ・セイリグの生誕92周年です。
(1932年04月10日生誕 - 1990年10年15日死没)
それを記念して、彼女の作品を紹介しています。
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デルフィーヌ・セイリグは、マルグリット・デュラスからは「フランスで、いやおそらく世界で最も偉大な女優」と評されました。
また、2022年に英国映画協会が10年おきに発表する「史上最高の映画100」で、この作品がNo.1になっておりました。
ネットニュースにも出ていたので、ご覧になった方も多いでしょう。
『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』 (1974)
監督 シャンタル・アケルマン
撮影 バベット・モンゴルト
出演 デルフィーヌ・セイリグ、ジャック=ドニオル・ヴァルクローズ
【あらすじ】
ジャンヌは思春期の息子と共にブリュッセルのアパートで暮らしている。
湯を沸かし、ジャガイモの皮を剥き、買い物に出かけ、“平凡な”暮らしを続けているジャンヌだったが……。
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大変な傑作です。アケルマン作品は数作見ていたのですが、圧倒的な作品でした。
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200分にわたる長編です。
人物を正面や真横から捉えたショットが多用され、長廻しの撮影が特徴的です。
シングルマザーの生活を3日間切り取り、まさにスライス・オブ・ライフな断片を繋ぎ合わせて、200分が構成されています。
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おそらく脚本だけ読めば、生活感が漂う主婦の日常なので、うんざりとしてしまうでしょう。
ジャガイモも皮をむき、食器を洗い、息子の勉強の面倒をみる風景など、スクリーンで観たくはありません。
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しかし、主演は、ヌーヴェル・ヴァーグ時代のトップ女優の1人のデルフィーヌであり、そんな退屈とは無縁の画面となっています。
平凡な主婦の生活を演じていますが、貧乏ったらしさは極力抑えられています。
ドヌーヴであれば平凡さが失われたことでしょうし、ユペールであれば清貧が強調されすぎてしまったことでしょう。
ほどほどに豊かな髪で、わずかに淫靡さを兼ね備えているデルフィーヌは、素晴らしいキャスティングです。
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端正に片づけられた部屋、パステルカラーの壁紙、そしてデルフィーヌがまとう、セルリアンブルーのカーディガン、白いブラウスや下着は、無印良品のアイテムの中で暮らしているかのような錯覚を抱かせます。
BGMは全く使われず、生活音だけであり、気を衒わないキャメラの位置や編集は、そうしたミニマリズムの印象を更に強めます。
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デルフィーヌは、ほぼ笑顔を見せることはありません。
それどころか、表情も見えないことも多いのです。
下を向いていたり、後ろ姿だったり、トップ女優へのキャメラワークとは思えません。
印象に残るのは、毎日のきっちりとしたルーティンワークを折り目正しくこなす、デルフィーヌです。
そこに狂気が宿るのです。
特に、彼女が娼婦として客を取る、彼女の寝室のベッドメイクのシーンはホラーでさえあります。
ベッドカバーのうえに、白いバスタオルが中央に置かれ、客との行為を忌み嫌っていることが示唆されます。
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ラストシーンで、客の男性の喉をハサミで突き刺す直前、身づくろいをするデルフィーヌの左前に、亡き夫と息子との写真立てが映り込みます。
それが、殺人の契機となったことは言うまでもないでしょう。
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そんなアケルマンの映画術が堪能できる傑作です。200分は長くありません。
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素晴らしい映画で、なぜ日本で全く紹介されいないのかが謎の映画です。
それにしても、「史上最高の映画100」のNo.1とは、過大評価のような気がします。
英国の業界人による評価とのことですが、どうしても企みを感じてしまいます。
シャンタル・アケルマンという女性監督を盛り上げて、いかにも男女同権に配慮しているポーズが透けて見えてしまいます。
繰り返しますが、素晴らしい作品ではあります。
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