元テレビ局、邦画担当者が語る名画解説

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スライディング・ドア 1997/イギリス


元テレビ局、邦画担当者が語る名画解説


シネマ教授はパラレルワールドが好き




私は、一種のパラレルワールドを描く作品が好きである。本でも同様だ。



パラレルワールドの中での一つの共通点は、運命は変えることが出来ないという点である。



この辺り、非常に分かりやすく表現されているのが、藤子・F・不二雄氏の『ドラえもん』で

多用され使われている。



タイムマシンで過去に行き、未来を変えようとするが、結局その行為こそが未来の姿だった

という展開だ。



私がパラレルワールドが好きな理由は『ドラえもん』の影響が多いのだと思う。



パラレルワールドを描く作品は何処か不完全燃焼の作品が多い。それだけカット割りに編集、

演出が難しいのだろう。勿論ストーリーもだ。



本作『スライディング・ドア』は冒頭、地下鉄ホームで電車のドアが閉まった場合と閉まらなかった

場合の人生を並行して描くラブストーリー。



近年では珍しいイギリス、アメリカ合作の映画である。



主演はグィネス・パルトロー。監督・脚本は俳優としての経験もある、ピーター・ハウイット。




あらすじ ※詳細が記載されています。必要ない方はスルーしてください。


ヘレンは広告代理店の管理職。作家志望のジェリーと同棲している。


今日も彼をベッドに残してあわてて出勤するが、遅刻してミーティングに出た途端、クビを言い渡される。


最悪の気分で駅に向かった彼女は電車に乗ろうとするが、乗り込む寸前にドアが閉まってしまう。


だが、もしこの電車に間に合っていたら?この時からヘレンの人生は、2つの運命に分かれて展開されていく。


電車に乗っていた場合ヘレンは隣に座った男性ジェームズに話しかけられる。ユーモアたっぷりに励ます彼に慰められたものの、家に帰りついてみればジェリーは昔の恋人リディアとベッド・インの最中。


ヘレンはショックで家を飛び出し、友人の家に転がり込んだ。そして偶然とあるバーでジェームズと再会し、彼の助言でヘレンは小さな事務所を構えて成功する。


こうして2人は仲を深めていくが、実はジェームズには妻がいた。それにショックを受けるヘレンだが、妻とは離婚の手続き中だというジェームズを信じ、彼のもとへ走り出す。


その時、車が彼女を跳ね飛ばす。病院に運ばれたヘレンは命を失ってしまった。


一方、電車に乗れなかった場合ヘレンが不機嫌そうに帰宅すると、ジェリーはあわてて浮気の跡を隠していた。


ジェリーの浮気を知らないヘレンは、ウェイトレスとして働き始めるが、冴えない日々。


やがてジェリーの浮気に気づき、ショックで階段から転げ落ち、病院に運ばれる。


無事ケガは回復するが、ジェリーとは別れを決意する。そしてヘレンは退院し、病院のエレベーターに乗り込んだ。


そこにいたのは電車に乗っていた場合のヘレンを失って意気消沈している、あのジェームズであった。




完璧とも言える編集・演出に圧巻



本作で特徴的なのは、2つのストーリーを並行して進ませるところ。時間差を用いた演出はしない。



また異常な程のシーンの切り替わり様には本当に驚くばかりだ。



とにかくカットで切り替わる切り替わる。異常と言ったが、本当に尋常でないレベルである。



前置きするが、本作はアクション要素などはない。正当なラブストーリーである。



一歩間違えば、ただ観難いだけになってしまうのだが、これがとても自然に観ることが出来る。



こんな魅せ方もあるのだと、改めて作り手の技量が成せる業だと関心させられる。




ストーリーの行方は・・・



本作のパラレルワールドの行方は・・・。これは是非観て確かめて欲しい。



決して大袈裟や大掛かりなストーリーでは無く、ごく自然で日常的な中で起こりうるラブストーリー。



何事も人にものを薦めるのは、それなりに責任があると思い、あまりしないのだが、本作は是非

女性の方に観て欲しい。


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