2011年は306本の映画を鑑賞しました。
今年(神戸で)劇場公開された映画館鑑賞の作品の中から50本と、

DVD・BDなどで鑑賞した作品から100本のベストランキングを発表します。


2011年劇場鑑賞映画ベスト50きらきら

1位:  『ブンミおじさんの森』 (タイ)
  深く、深く。まるで退行催眠をかけられたように意識下に感じるのは夥しい気配。或いは前世の記憶のように。森羅万象、輪廻転生。流転する命の聖なる連なり。死が穏やかであるように、生もまた穏やかであったこと。暗闇に目が慣れた頃、そこには精霊たちが息を潜めて待っていた。

2位:  『悲しみのミルク』 (ペルー)
  わたしを守る盾となり、聖なる蓋となるように。けれどもそれは生きたがっていた。生きて花を咲かせたがっていた。切っても切っても芽生えるイモの芽は、大地に漲る生のパワー。寓話的な不旋律が、心惑わせ寄り添わせる。儚くも美しい悲しみのファンタジー。そのはじめての感覚に心酔。

3位:  『ブラック・スワン』 (アメリカ)
  純白の心が生み出した暗黒の虚構が、現実と妄想の境界を怪しげに溶かしゆき、滲み出す不完全の本質が毛穴から立込める焦燥と狂気に満ちてゆく。鏡越しに対面する白鳥と黒鳥の相反接合な世界は、彼女の深い部分に眠る正気と狂気の融解点。完璧な絶頂の先、恍惚なる自滅の果てに。

4位:  『BIUTIFUL ビューティフル』 (スペイン・メキシコ)
  命の灯火を掲げて写す人の顔はどうして、かくも美しい造詣を繕うのだろうか。人は誰かのために生きている。ゆえに個人の死というものは、残してゆく人への愛の深さによって美しくも醜くもなるものなのかもしれない。より生々しく痛々しい、それがどれほど無骨な美しさであれど。

5位:  『SOMEWHRE』 (アメリカ)
  かけがえのない、という言葉をシンプルに映像化すると、きっとこういうことなのかもしれない。それは夏のプールのように瑞々しく、その水面が光に反射する時に見せるセンチメンタルな煌きを伴って。観念的な余韻とヨーロッパ的な空気感を作り出せる、ソフィアの作品は心地いい。

6位:  『神々と男たち』 (フランス)
  白鳥の湖の昂ぶる旋律にいざなわれし神々の晩餐。宗教を持たぬ私でも彼らの為に祈りたい。白い靄の向こうに消えた知られざる真実に心預けて。厳粛な聖歌の唄声が残響する、荘厳な山々のパノラマと美しい湖畔の木々の合間に飛び立つ鳥たちの囀りが、神の国へも届きますようにと。

7位:  『光のほうへ』 (デンマーク)
  死に対する負い目にもがき、守れなかった傷を疼かせ、光の届かぬ割れ目の淵で、兄弟は再会を。あの日の儀式に命名された幼い命の輝かしい生の光。守りきれなかった白い命が今度こそ守り抜かれるようにと。ふたり分のマーティンは今、ニックとともに明日を照らす光を頼りに歩き出す。

8位:  ユフス三部作:『蜂蜜』 『卵』 『ミルク』  (トルコ・ドイツ)
  ミルクの父性と卵の母性が相まって、濃密な蜂蜜の香りへと回帰する。BGMの代わりに大自然をオーケストラに据え、その静かなる荘厳と圧倒が注ぎ込んで銀幕に像を結び、観る者の五感と読解力を繊細に研ぎ澄ます。豊かな感覚は受動的に。溢れる思考は能動的に。

9位:  『エンディング・ノート』 (日本)
  人は自分が生まれる事をコントロールできない。でもそうか、死にゆく事なら自己プロデュースできるんだ。実直な生き様そのままに、死に様への終活は寧ろ愚直なまでに。自ら整えた最後を生きて、彼はどんなに幸せだったろう。これぞ真のハッピー・エンディング・ストーリー!

10位:  『永遠の僕たち』 (アメリカ)
  死に寄り添う、ピュアネスな肖像画を3つ。弱くて淡いその輪郭に移り始めた季節が優しい線を足してゆく。まだ早い春の野に降り立つ小鳥のついばみのようなふたりのキスが、地面に象るチョークの跡を白く溶かして昇華する。目覚めた朝の生の喜びに、美しく歌うというミズドリの憧れを。

11位: トスカーナの贋作』 (フランス・イタリア)
  エンドロールへと続く夜9時の鐘の音に、男の戸惑いが重なってゆく。その所在ない戸惑いはじわり、観客へと伝播する。カメラの向こう側に真実はない。その答えは降りてゆく夜の帳に消えてゆく。問われるのは、カメラのこちら側。戸惑いと騒めきはやがて、漂う思考を連れてくる。

12位: ペルシャ猫を誰も知らない』 (イラン)
  国家体制への批判と抵抗を、現代イランの若者達の音楽への情熱にフォーカスし、アングラ音楽のコラージュ映像が自由への渇望を息づかせている。国家としての体裁と人としての自由意志。音楽という共通言語に国境がないのなら、その自由な魂をパスポートに変えればいい。

13位: 『ピンク・スバル』 (イタリア・日本)
  地域紛争の代名詞,イスラエルヨルダン川西岸地区。けれど世界が思うほどボーダーラインはグレーばかりでないのかも。そこには家族と友人愛、手拍子と踊りと笑顔が溢れ。人情に満ちた彼らの寛容な心持ちがじわり嬉しくて、この国のイメージをほんのりピンク色に染め上げてくれる。

14位: 『バビロンの陽光』 (イラク・英・仏・蘭・パレスチナ・UAE・エジプト)
  黒いチャドルの下から無数に洩れ聞こえるのは、女たちの心の咽び。失ったままの愛しい人をこの手に抱いて連れ帰るため。砂漠に掘り返されし無言の骨々。突風に舞う砂埃と土煙にまみれ、彼らと彼らの残した者の心の声は風の中。亡き者に安らぎと尊厳を。復興への祈りを捧げながら。

15位: 『未来を生きる君たちへ』 (デンマーク・スウェーデン)
  土色の乾いたアフリカの大地の質感と、緑水豊かな北欧の風景を対比させながら、最小単位の個人から始まる家族、集団、社会、国、世界というグローバルな思想へと発展させてゆく作劇に、観る者は度々自問する。彼らの姿を尊重しつつ、人の本質について今一度の一考を要しながら。

16位: 『クリスマスのその夜に』 (ノルウェー・ドイツ・スウェーデン)
  こんな夜は誰もがみんな願ってる。うちへ帰りたい、故郷へ帰りたいと。ノルウェーの田舎町に交錯する幾つかのクリスマス・ストーリーが、マッチの先に淡く点って揺れている。スクリーンを覆う北欧の夜空。そこにみつけた流れ星に心で小さく願いごと。叶うような気がして。

17位: 『モンガに散る』 (台湾)
  それは極道だったのか、それとも友情だったのか。エネルギッシュな疾走感にほろ苦い青春のグラフィティを滲ませて、黒い社会に足を踏み入れた少年達の高揚感を力強くも軽やかに描きつつ、深め合う瑞々しい友情の絆をコラージュする。モンガに散った赤い花が、最後の笑顔に溶けてゆく。

18位: 『シリアスマン』 (アメリカ)
  神の啓示と超物理学。相反する事象への重ね合せの妙。量子的なゆらぎを伴い乍ら人の世の可笑しみと不条理は果たして論証されるのか。真面目であればある程不条理な俗世の常。まさに人生は予測不能。思考実験も観測問題も実人生には当てにならない。だからこそ今を生きなくては。

19位: 『ヤコブへの手紙』 (フィンランド)  
  北欧フィンランドの短い夏。盲目の老牧師と死刑囚の女、そして自転車の郵便配達人。75分にしたためられた北欧から届いた<手紙>のこれが全て。それ以上のものはない。けれども溢れるメッセージの深淵に、ため息ひとつ、涙をひとつ。心に“配達”されるのは、神ではなく人の愛だから。

20位: 『愛する人』 (スペイン・アメリカ)
  母となる、いろんなカタチ。 それぞれの後悔とそれぞれの希望。 叶わない願いと届かない想い。 女であれば、母から生まれた子であるならば、必ず誰かに思いが重なるはず。 時”がいつか連れてくる命のつながりを。 時は血のつながりと同じだけの濃度に変える大いなる可能性を持つから。

21位: 『奇跡』 (日本)
 子供にとっての“ぼんやり”が“ほんのり”な人生の味わいへと変わる時。声の限りに叫んだ願いがすれ違う一番列車に降り注ぐ。大人の事情を不承々々に理解しようと奮闘する子供たちの愛しさと可笑しさ。子供は生まれた時から大いなる奇跡。いくつもの“泣き笑い”が優しく零れる素敵な作品。

22位: 『君を想って海をゆく』 (フランス)
  愛のために泳ぎゆけば国の不寛容さえ越えられる。信じて疑わなかった倫敦までの距離に、いちるの望みと一途な信念とが夢の架け橋を繋いでゆく。国の思惑に追随しない、人としての思いやりをなぞりながら。WELCOMEの7文字が掲げる真意に、世界の寛容と共存を願って。

23位: 『海炭市叙景』  (日本)
 架空の街の創作ながら、あたかもドキュメンタリの如く人と場所を見つめた静かなカメラは、土地に根付いて生きる人々の心を高らかに謳い紡ぐ。奇しくも震災の年に観たこの故郷賛歌な1本が響きかける意は深く。風景を文章にした原作の“叙景”を、映像に再転写した映画としてのその見事!

24位: 『ソウル・キッチン』 (ドイツ・仏・伊)
  人種のmix、料理のblend、音楽のfusion。混ざり合うほど楽しくて、重ねあうほど美味しくて、溶け合う程に心地いい。ソウルキッチンは世界の縮図。人と食事と音楽で繋がり合う。喧騒も囁きもぼやきでさえ、日々を彩るhigh&lowなサウンド・オブ・ミュージック。

25位: 『エリックを探して』 (イギリス)
  後悔だらけの人生にもロスタイムならきっとある。仲間と共にいざ、華麗なる追加点を挙げにゆこう!サッカーに熱狂的なイギリス人の国民性とサッカーファンの心根をモチーフに人生をサッカーに準えて仲間の大切さを朗らかに謳う。ケンローチにして初めてのハッピーエンドに胸高まって。

26位: 『アンチクライスト』 (デンマーク・独・仏・スウェーデン・伊・蘭)
  悲嘆を乞い、苦痛を乞い、絶望を乞う、3人の乞食が現る。果たして死を乞うたのは誰だったのか。(自然)も(人間性)もnatureを共有する。自然の創造主が神なれば人もまた然り、創造主が悪魔なれば人もまた然り。肉欲の原罪を物質的に切断したとて人の罪深さは消えないのに。

27位: 『サラエボ、希望の街角』 (ボスニアヘルツェゴヴィナ・クロアチア)
  過去という名の傷痕は、未来という名の希望のために。愛の行方は街角の途中。サラエボの街も人もまだ自由への途上。断ち切るのではなく過去を受け入れ今日を生きていく。背負うよりもそっと抱きかかえて明日を生きていく。この街でいつの日か新たな命を迎え入れる時のため。

28位: 『グッド・ハーブ』 (メキシコ)
 香りが記憶を留めるというのなら、ブレンドした薬草の有効成分に心の効用を導いて。人生の全ての想い出と未練を閉じ込めた枕カバーの中、薫るハーブとともに旅立たせたら。受話器の向こうの母の声、どこから聞こえていたのだろう。ハーブが繋いだ母と娘の奇跡のホットラインは。

29位: 『ミスター・ノーバディ』 (フランス・ドイツ・カナダ・ベルギー)
  重厚で洗練された見事なパラレルワールド。そのマルチバースな多重構築が脳を楽しく刺激する。ifの可能性とその展開、時間の概念、ユニバースを超越する世界観。ビビッドな要素とメローな香り付けを反復させながらやがて1つの哲学的思考へと導かれるのがなんとも贅沢で心地いい。

30位: 『Ricky』 (フランス・イタリア)
  かつてないオゾンの新境地にもう夢中。ミステリな肌触りが一変、まさかの展開が幕を開け予想もつかぬ境地へと翼を広げて飛んでいく。主旋律から独創的な変奏を奏で、普遍的な家族愛へ帰結する。空を見上げて心を解いて。自由な魂に翼を広げて。天使の笑顔がそこにあるから。

31位: 『4月の涙』 (フィンランド・独・ギリシャ)
  有識者であるが故に男2人が抱えた公正への苦悩と葛藤、一方で如何なる恥辱を受けんとも慄然と自己を屹立させるミーナの強い生命力。その拮抗は愛の回想の様に流麗な語り口を以って埃色の風景を撫でてゆく。彼らの最後の選択が、まだ浅い春の陽光に切なくも優しく包まれて。

32位: 『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』 (アメリカ)
  作品のバックに作家の背景という奥行きが添えられると、この無機質なモダンアートがあたかも風景画であるかの様な温かみを帯び、物語すら滲ませる。2人の部屋にひしめくアートたちは幸せ者だ。まるで親の愛情をたっぷり受けた、幸福な子供たちのように。

33位: 『名前のない少年、脚のない少女』 (ブラジル)
  霧霞に滲んでぼやける、色彩と輪郭を失った世界の片隅で。死者との接点に触れる少年の喪失と閉塞感。写真のように断片的な映像が見えない出口をゆらり彷徨う。現実と隣接する、死者でさえ生き続ける仮想空間のハコの中。けれどそこから逃げ出すための、脚はもうない。

34位: 『白いリボン』 (ドイツ・墺・仏・伊)
  この村に息を殺して潜むものは、悪意と嫉妬と猜疑心、不信と不穏と不和不調。歴史的過ちへの贖罪か糾弾か。記憶の乖離への警鐘か。純真であらんとする心の内とそれを強いる心の内。無音で始まり無音で終わるエンドロールはこのあと台頭することになるくだんの時代への序曲となって。

35位: 『ミラル』 (イスラエル・フランス・インド)
  “イスラエルとパレスチナの和平を信じる全ての人に捧ぐ”との献辞にぐっと胸を掴まれる。パレスチナの国連加盟に揺れる今、道端に咲く赤い花-ミラル-は何を思うだろう。ひとつにはなれなかった。ならば2つの国家でいい。隣人としての共存。どちらの土地にも「ミラル」は咲いているから。

36位: 『家族の庭』 (イギリス)
37位: 『木漏れ日の家で』 (ポーランド)
38位: 『やがて来たる者へ』 (イタリア)
39位: 『再会の食卓』 (中国)
40位: 『ペーパーバード 幸せは翼にのって』 (スペイン)
41位: 『キッズ・オールライト』 (アメリカ)
42位: 『黄色い星の子供たち』 (フランス、ドイツ、ハンガリー)
43位: 『メアリー&マックス』 (オーストラリア)
44位: 『ルイーサ』 (アルゼンチン)
45位: 『ソーシャル・ネットワーク』 (アメリカ)
46位: 『東京オアシス』 (日本)
47位: 『英国王のスピーチ』 (イギリス)
48位: 『ちいさな哲学者たち』 (フランス)
49位: 『エッセンシャル・キリング』 (波・諾威・アイルランド・ハンガリー)
50位: 『冷たい熱帯魚』 (日本)
 

【勝手に部門賞】

監督賞:アピチャッポン・ウィーラセタクン(『ブンミおじさんの森』)
監督賞:砂田麻美(『エンディングノート』)

脚本賞:『ビューティフル』、『愛する人』 、『ピンク・スバル』

脚色賞:『永遠の僕たち』、『神々と男たち』、『海炭市叙景』
撮影賞:ユスフ3部作 『蜂蜜』 『卵』 『ミルク』
録音賞:『ブンミおじさんの森』 

編集賞:『エンディングノート』

美術賞:『ブラック・スワン』

音楽賞:『ペルシャ猫を誰も知らない』

音響賞:『神々と男たち』 

視覚効果賞:『Ricky』 、『ブラック・スワン』

主演女優賞:ナタリー・ポートマン(『ブラック・スワン』) 

主演男優賞:ハビエル・バルデム(『ビューティフル』)
助演男優賞:Ryo Kase(『永遠の僕たち』)
子役賞:まえだまえだ(『奇跡』)
子役賞:エル・ファニング(『SOMEWHERE』)
特別功労賞:ダヌタ・シャフラルスカ(『木洩れ日の家で』)

マイテイスト賞:『悲しみのミルク』 
ナミダ映画賞:『エンディング・ノート』


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きらきら2010年DVD鑑賞ベスト100きらきら
DVD、BD、BSなどで鑑賞した旧作シネマから100本を選出します。

1位:   『シングルマン』  2009年/アメリカ
  マテリアルが持つ配色の多感から零れる死に向かう空気の透明。人生で最も多彩な無彩色にfade to blackされていく静かなプロセスを指でなぞるようにして。美しくミステリアス。1日の時間に傍流する愛の喪失と再生を味わいながら。ディテールで構築された愛の設計図の美に感嘆。

2位:  『美しい人』 2005年/アメリカ
  洩れるのは溜め息と恍惚。深まるのは哀切と悲哀。そして溢れる親愛と懐慕。 9つの人生の一端に心の襞を浸らせて。滑らかにいざなうカメラ導線を道連れにそれぞれの女性たちに寄り添い歩き、迷い疑い共に嘆く。取り繕わない人生の一端を露にするからこそ彼の作品はどこまでも美しい。

3位:  『ビン・ラディンを探せ!』 2008年/アメリカ
  イスラムが脅威なのではない。ビンラディン本人ではなくアルカイダの思想を絶つことが重要。過激派を生まないためには子供達に教育を!加えて貧困、食糧・医療不足をも絶つことも重要。対テロ戦争について米国に必要なのは文化的理解である。スパーロックに敬意と感謝を!

4位:  『湖のほとりで』 2007年/イタリア
  眠るように隠された切ない真実は、湖面を描く相似形の渦の中を回り続ける。最も身近な者への愛のベクトルを指南しながら。美しいばかりの湖畔の景色を印象画とし、湖底に沈殿する人と人とのしがらみを浮上させ、その深淵にある与えたい愛と与えない愛についての考察を散りばめる。

5位:  『ソフィアの夜明け』 2009年/ブルガリア
  現代ブルガリア。グローバル経済化における格差社会と若者たちの抱える鬱屈とした閉塞感や苛立ちは、まるで明けることのない夜のように。内なる善意が胸に温もりを灯して転寝を。南へと向かった夜明けの街に明日を探して。撮影後に亡くなったフリストの冥福を祈るとともに。

6位:  『僕がいない場所』 2005年/ポーランド
  川辺に取り残された廃船は、親に見捨てられし少年の具現。セピア色の映像に哀しくも美しい風景画を残していく。壊れかけた手回しのオルゴールに抱くのは、かつての母の愛情の面影。愛されていたはずの記憶を繋ぎ、今も愛されているという叶わぬ夢を見る。そうして見つけた答えはひとつ。僕は、僕だよ。

7位:  『レバノン』 2009年/イスラエル・仏・英
  照準鏡から眺めた戦争。十字に走る照準線の向こう側とこちら側。線の中心に定めた視線が晒された現実とは。スコープ越しに透かし見た、かの戦地の真実に。フィルターの内側を正しく見つめる目を問いながらラストの向日葵に何を思う。花は既に枯れていた。戦車は今や鉄の檻に過ぎずに。

8位:  『君とボクの虹色の世界』 2005年/アメリカ
  ME AND YOUのa pair of shoes。寄り添ったり、離れたり。アスキ-アートとパフォーマンスアートに張り紙の文字。<記号>と<映像>と<手書きの文字>を媒体にしたコミュニケーションの可能性。そのアイデアと着眼点、映像的な作劇ぶりに脱帽。

9位:  『瞳の奥の秘密』 2009年/アルゼンチン
  Aの欠けたタイプライターのように25年間埋められずにいた過去があった。夜中に目覚めて走り書きしたTEMO(怖い)の文字。封印した過去と向き合い秘めた想いを取り戻す。"A"を1つ書き入れる。TE MOがTE AMO(愛してる)に変わる時、男の人生に灯がともる。アルゼンチンから届けられた、極上至福のミステリ。

10位:  『エレジー』 2007年/アメリカ
  気高く美しきものに宿ってしまう悲運を、徹底した美意識と流麗なヴィジュアルに真摯な語り口で紡がれた物語は、崇高な一篇の詩のようで。芸術が人に所有されるのではなく人が芸術に所有されるという、美に生きる者にしか持ち得ないその思考に共鳴。その愛に感嘆。まさに哀歌-elegy-

11位:  『シルビアのいる街で』 2007年/スペイン・フランス
  その街の中にいる、何人もの〝Elles〝たち。乾いた雑踏に写り込むガラス越し、心の探し物を見つけたくて彼は再びこの街へ。焦がれるままの想いはスケッチに、ただただ見つめる視線の柔らかさ。今日もまた、誰かが誰かに花束を贈り、路上の恋人達はフレンチ・キスをする。

12位:  『太陽に恋して』 2000年/ドイツ
  指輪の運命を信じたくて。3つの国境を越えて向かう南への旅は、きらめく太陽をひたすらに追いかけて。失ったパスポートの代わりに男が得たのは巡り合いの果ての恋。ハンブルクからイスタンブール。ファティ・アキンこだわりのルートに同行する、地上のロードムービーが心地いい。

13位:  『愛より強く』 2004年/ドイツ・トルコ
  孤独からの逃避と束縛からの逃避が1つの巡り合いを生み、そこに1つの偽りから始まるstoryが息づく。ハンブルクからイスタンブール。2つの国、民族、文化、家族観と幸福論そして音楽。愛より強い愛についての考察をエキゾチックに散りばめ奏でる。自由への破壊的な愛の結末を。

14位: 『君のためなら千回でも』 2007年/アメリカ
 少年だったあの日への贖罪。一緒に揚げた凧だけがふたりの絆を知っている。通い合う2つの心を知っている。救えなかった友のこと。自ら追いやった友のこと。彼らの“対等ではない友情”は、国際社会の関わり方を暗喩する。アフガニスタンへの陵辱を、世界は未だに傍観する。

15位:  『クリスマス・ストーリー』 2008年/フランス
  フレンチ・シネマな群像劇の真骨頂!クリスマスシーズンに集うとある一家を演じる12人のキャストたちが、カメラの向こうで指揮を執る監督とともに輝き出す。指揮棒をひと振りする毎にシネマジックがキラリ、またキラリ。日常という名のドラマこそ、永久不変のシネマな幸せ。

16位: 『歓びを歌にのせて』 2004年/スウェーデン
  それぞれの苦悩、苦悩からの解放。歌うことで彼らは絆という手を繋ぎ合い、人生の歓びを共に手繰り寄せ。喚起口から漏れ聞こえる最高のハーモニーに目を閉じて、少年だったあの日の麦畑に今、ようやく自分自身を迎えに行く彼の、最後に見せた穏やかな笑みに、幸福をひとつ願って。 

17位: 『気球クラブ、その後』 2006年/日本
  重力に逆らえる魔法、それはふわりの浮力。空高く飛んでゆけたならと誰もが夢を見る。でも本当は知っている。地に足をつけたいからこそそう思うという事を。浮かびあがりたい訳じゃない。うわの空の“宙ぶらりん”に降りてきて欲しいだけ。みんなそれを待っていたのだと。

18位: 『ブロークン・フラワーズ』 2005年/アメリカ
  ジム・ジャームッシュのセンスが光る素敵な作品。手に入らないものなどないのにひどく孤独な中年男の心の旅。過ぎ去りし過去に花束を。気まずさも懐かしさもラッピングして手渡せば、そこには愛しさと可笑しみが。1通の手紙からはじまる自分探し。乾いた心と花に潤いを。

19位: 『アナとオットー』 1998年/スペイン
  偶然に縁取られたメビウスの環の中で、名前が引き合わせる奇蹟がふたりの周りを螺旋状に循環してゆく。瞳に写る最後のシルエットはアナにとって最高の脚色を伴った贈り物。繊細な記憶の断片が過去と現在の時間枠を超えて降り積もり、双方向の相似形を描く手練のセンスに心酔する。

20位: 『パーマネント野ばら』 2010年/日本
  忘れられない記憶の海で永遠に続くものをさがしていた。でもパーマネント(永遠)なものなんてない。妄想に逃げ込んでいたと気付いた浜辺で、娘の声が彼女を現実に迎え入れた。思い出と妄想を夕方の浜辺にそっと埋めて。穏やかな表情が夕陽のオレンジにすぅ、と染みていく。

21位: 『闇の列車、光の旅』 2009年/アメリカ・メキシコ
  太陽に愛された中南米の現実は、皮肉にもその光が生み出した闇の中。列車の上に命を預けた北へと向かう長い旅。約束の地への儚い希望。ギャングとして生きるしかない青年の、タトゥーに隠された心が切ない。青い痕の涙のしずく、首元に刻む懺悔の言葉。彼らに光は届いたか。

22位: 『倫敦から来た男』 2007年/ハンガリー・ドイツ・フランス
  此処には何らかの特別な時間が流れているに違いない、と錯覚させるその魅力。乾いているのに重厚な。特殊な空気に包まれし崇高なるミステリ。窓ガラスの向こうに夜の港。海に沈んだアタッシュケース。父と娘と警部と男と。靴底の鳴らす重く乾いた足音が耳にざわめきを掻き立てる。

23位: 『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』 2010年/日本
  彼らの歪んだ魂が、寒々しい映像の中で亡霊のように浮き沈みするのを感じながらも、どこかに希望の花を探してしまう。あるはずもない希望の光を。ぶっ壊せば何かがあると彼は信じていた。でもぶっ壊しても何もない。それを伝えなければという、監督の思いが伝わった。

24位: 『エコール』 2004年/フランス
  “イノセント・ワールド”への驚くべき表現力!少女たちの目に写る内側の世界をアンニュイに描く、ミステリアスでポエティックな映像美。秘密への興味と目覚め、身を置かれる現実への歩み寄りと自己認識。少女らの心のざわめきに波長の違う周波で同調し、巡りくる卒業と入学を見届ける。

25位: 『マンダレイ』 2005年/デンマーク
  ドッグヴィルその後。やはり巧い。映画的装飾物のほぼ一切を排した視覚が他感覚を呼び起こし、目が眩む程に世の理と万象を焼きつける。戒律は自由への束縛なのかそれとも生きる道標か。これぞ民主主義の理想と現実!3部作完結編の無期限延期が悔やまれる。トリアーにチャンスを。

26位: 『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』 2009年/フランス・香港
  同士の匂いを嗅ぎとった、銃で繋がれし男達が築いていく絆は、ネオン裏の暗黒街と荒廃した廃棄場に鮮血の契りを迸らせ。胸に咲いた赤は勲章の華。記憶を失う男にとっての復讐、それは紛れもない約束ゆえの銃弾。そして訪れた平穏にかつての愛の記憶だけを残して。

27位: 『ユキとニナ』 2009年/フランス・日本
  9歳の少女の密やかな心の成長を自然光の中で瑞々しく繊細に紡いだ物語。いつか絵本の中に見た憧憬が淡く蘇るような不思議な心地を運んでくれる。迷い込んだ森が繋ぐ2つの国-フランスと日本を行き来して、誰しも大人は忘却してしまう幼少時代に回帰する。忘れものを取り戻しに。

28位: 『やわらかい手』 2006年/ベルギー・ルクセンブルグ・英・独・仏
  少しの勇気さえあるならば、その手でできることがある。家族のための自己犠牲として差し出した“手”で、マギーがやがて自分自身の幸せをそっと掴みとるまでの6週間。彼女のそのやわらかい手に癒される至福が、ラストカットの心地よいハピネスな瞬間にタッチする。

29位: 『殯(もがり)の森』 2007年/日本・フランス
 葬送から殯まで。緑茂る山あいで。生きる事の2つの意味。生きる実感、肌から伝わるエネルギー。一方の殯。それは忍ぶ事、悼む事。33年の喪が明けてこれより仏陀と成らんとす、愛しき人とのこの世の最後、地上で触れ合うラストダンス。そのための時間と場所、それが殯のこと。

30位: 『ビハインド・ザ・サン』 2001年/ブラジル
 
粉砕機の周りを回り続ける牛の様に、兄弟も地上に縛られた宿命を負う。旅芸人の娘と出会い、尽き抜ける空の青さを知る。黄かぶりな色調とダイナミックな構図。少年の刹那な生の、自らが語り部となり、忌まわしき習慣の終りと共に新たな時代を迎える。あの太陽の向こうへと。

31位: 『アイス・カチャンは恋の味』 2010年/マレーシア
32位: 『デリー6』 2009年/インド
33位: 『父、帰る』 2003年/ロシア
34位: 『らくだの涙』 2003年/ドイツ
35位: 『『ウイスキー』 2004年/ウルグアイ・アルゼンチン・独・西
36位: 『白い馬の季節』 2005年/中国
37位: 『モーヴァン』 2002年/イギリス
38位: 『いつか、きっと』 2002年/フランス
39位: 『緑茶』 2002年/中国
40位: 『しあわせの雨傘』 2010/フランス
41位: 『春との旅』 2009年/日本
42位: 『家の鍵』 2004年/イタリア
43位: 『胡同の理髪師』 2006年/中国
44位: 『カンナさん、大成功です!』 2007年/韓国
45位: 『紅い鞄 -チベット 秘境 モォトゥオへ-』 2003年/中国
46位: 『オリンダのリストランテ』 2001年/アルゼンチン
47位: 『サンシャイン・クリーニング』 2009年/アメリカ
48位: 『アフガン』 2005年/ロシア・フィンランド
49位: 『ヒア アフター』 2010年/アメリカ
50位: 『イディオッツ』 1998年/デンマーク
51位: 『ナイト・トーキョー・デイ』 2009/スペイン
52位: 『カラフル』 2010/日本
53位: 『天空の草原のナンサ』 2005年/モンゴル・ドイツ
54位: 『珈琲時光』 2004年/日本
55位: 『靴に恋する人魚』 2005年/台湾
56位: 『東南角部屋ニ階の女』 2008年/日本
57位: 『約束の旅路』 2005年/フランス
58位: 『トルソ』 2009年/日本
59位: 『神の子どもたちはみな踊る』 2007年/アメリカ
60位: 『イリュージョニスト』 2010/イギリス・フランス
61位: 『胡同のひまわり』 2005年/中国
62位: 『胡同愛歌』 2003年/中国
63位: 『ボンボン』 2004年/アルゼンチン
64位: 『母なる証明』 2009年/韓国
65位: 『彼とわたしの漂流日記』 2009年/韓国
66位: 『スプリング・フィーバー』 2009年/中国・フランス
67位: 『マン・オン・ワイヤー』 2008年/イギリス
68位: 『ピエロの赤い鼻』 2003年/フランス
69位: 『レスラー』 2008年/アメリカ
70位: 『クリーン』 2004年/フランス・イギリス・カナダ
71位: 『ボーフォート -レバノンからの撤退-』 2007年/イスラエル
72位: 『ボスタ!踊る幸福の赤いバス』 2005年/レバノン
73位: 『ザカリーに捧ぐ』 2008年/アメリカ
74位: 『アメイジング・グレイス』 2006/イギリス
75位: 『空を歩く少年』 2008年/韓国
76位: 『バーレスク』 2010/アメリカ
77位: 『ヒトラーの贋札』 2007年/ドイツ
78位: 『ファンタスティックMr.FOX』 2009年/イギリス・アメリカ
79位: 『水曜日のエミリア』 2009年/アメリカ
80位: 『グーグーだって猫である』 2008年/日本
81位: 『その街のこども』 2010年/日本
82位: 『ヒマラヤ、風がとどまる所』 2008年/韓国
83位: 『ある子供』 2005年/ベルギー・フランス
84位: 『ゾンビランド』 2009年/アメリカ
85位: 『ローラーガールズ・ダイアリー』 2009年/アメリカ
86位: 『リミット』 2010年/スペイン
87位: 『シスタースマイル・ドミニクの歌』 2009年/フランス・ベルギー
88位: 『チベットの女 イシの生涯』 2010年/中国
89位: 『マサイ』 2004年/フランス
90位: 『ドン・ジョヴァンニ 天才劇作家とモーツァルトの出会い』 2009伊・西
91位: 『ホームレス・ワールドカップ』 2008年/アメリカ
92位: 『エレニの旅』 2004年/ギリシャ・フランス・イタリア・ドイツ
93位: 『ボローニャの夕暮れ』 2008年/イタリア
94位: 『隠された日記 ~母たち、娘たち~』 2009年/フランス・カナダ
95位: 『みんな誰かの愛しい人』 2004年/フランス
96位: 『ワカラナイ』 2009年/日本
97位: 『ガーダ パレスチナの詩』 2005年/日本
98位: 『冬休みの情景』 2010年/中国
99位: 『ハモン・ハモン』 1992年/スペイン
100位: 『ヤバい経済学』 2010年/アメリカ

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きらきらオールドシネマ3きらきら
私は基本的に古い映画は積極的には鑑賞しない方ですが、
ごくたまにBSなどで掛かるクラシック映画を観ることは多少ともあり、

分母こそ少ないもののそんな古典映画からの2011ベスト3を。

1位: 『裸の島』1960年/日本
2位: 『野ばら』1957年/オーストリア
3位: 『エル・スール』 1983年/スペイン・フランス

『裸の島』は、目を見張り息をのむほど素晴らしいモノクロームの日本映画。セリフは一切無く、島ぐらしの夫婦の姿をただただ見るめる意思あるカメラに心をぐぐっと吸引されました。

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というわけで、

以上が今年のベスト150(+3)のランキングでした☆


今年は昨年の247本よりも鑑賞数はupしたものの、
3.11以降、生まれて初めて「映画館に行く気がしない」という心境に陥りし、

気持ちの復活後も夏以降にちょっと他の趣味に明け暮れてしまった結果、

本業であるべき映画のレビューが殆ど書けずじまいで終わり、

このブログも下半期にはかなり失速してしまいましたっ ><


1日が24時間じゃ足りないよねー!!


なーんていう言い訳をしないように、

来年2012年はまたシネマに寄り添い生きてゆくことを誓います。


そんなこんなで。

2012年もよろしくです♪



2011年末日 byきらり+