シネマな時間に考察を。

心に届く映画を語る、シネマな時間に考察を。ヨーロッパ・中東・アジアを中心とした愛すべき短館系作品のレビューを綴っています。映画と心のちょっといい関係をさがして。心がきらりとひかる瞬間を大切に。


テーマ:

くたびれて、そして乾いて。
ままならない人生に、
時々出会える、幸福な瞬間を探して。


シネマな時間に考察を。

『人生は、時々晴れ』 All or Nothing
2002年/イギリス、フランス/128min
監督:マイク・リー
出演:ティモシー・スポール、レスリー・マンヴィル


サウス・ロンドンの集合住宅に暮らす人々。底辺の生活が身に染みるあまり、いつしか乾いてしまったとある3家族を軸に、それぞれに孤独と疎外を感じることで愛の喪失を抱えながら、やがて再生へと繋がる希望の糸口を見つけ出すまでの物語。『秘密と嘘』を観たのは随分前になるが、家族問題のリアリズムに迫るマイク・リーらしい、つぶさな視線でしっかりと描かれた質量のある作品だ。


シネマな時間に考察を。 期せずして出会う幾つかのトラブルを見つめるカメラは、それでも一定のトーンを乱すことなくその温度と距離を保持しながら、人生に訪れる負の要素、それを乗り越えんとして不器用にもがき、或いは逃げてしまう人の弱さを静かに捉え、ひとりひとりまたは家族単位でのドラマを丁寧に紡いでいく。緻密な脚本が伺えるが、この監督の常として脚本は用意しないのだというから驚いた。俳優達の確かな演技力と即興で紡ぐ監督の演出力も併せて評価したい。


それぞれに傷を抱えるからこそ、必要なのは労わる気持ち。愛とは即ち労わりなのかもしれない。いつの間にか姿を変えてしまった家族の形。親子間で夫婦間で知らず知らずに深めてしまった暗い溝と、互いの心の置き方に縮まらない家族の距離。無意識に失くしてしまったそれらものたちが、空中に漂う目には見えない微粒子のように、ゆらゆらと不安気に浮かんでいる。摘み取って葬りたいのに捕らえられないそのもどかしさが巧く描かれている。


シネマな時間に考察を。 最後にやっとひとつの笑顔が訪れて、再生への希望をちらりと覗かせたその場のカメラはしかし、まだ拭い去れてはいない現実の暗部を決して忘れてはいなかった。レイチェルの見せる影をひくような表情が、それを言わずもがなに語っていた。けれどこうして人はそして家族は、辛い現実の中で少しずつ幸福の糸をたぐり寄せて供に生きていくものだから。


人生には家族分の涙を貯めることのできるバケツが用意されているという。乾いた関係に潤いを持たせるためにそっと流した涙の滴を受け止める。ひとりでバケツを満たすことはできなくても、家族がいれば満たされる。バケツの涙が適度な湿度を家族にもたらし、いつしか生じた溝と距離を優しく埋めてくれるはず。


シネマな時間に考察を。 All or Nothing.
いちかばちかという意味合いを持つ原題から付けられた「人生は、時々晴れ」というこの邦題の力を讃えたい。読点と「時々」が効いている。決して楽観視はできない、けれどどこか小さな希望を感じさせるその語感は、まさにこの作品を言い得ている。


曇や雨の日があるからこそ、晴れの日はこんなにも輝かしい。
人生にはほんの時々だけ、いいことが訪れる瞬間があるから。
そんな晴れの日を待ち侘びながら、
人は今日を生きていく。


『人生は、時々晴れ』:2010年11月9日 DVDにて鑑賞

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