週刊金曜日 2020年6月26日号より 難民を追いつめる日本の入管制度④ | パキスタン人旦那と共に歩む人生

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主に在日パキスタン人を観察しています。

スティーブン・マキンタヤ氏 世界比較で見る「難民を受け入れない国」日本の記事続き

 

各国で共通する入国拒否の「水際作戦」

 

 近年の難民研究によると、日本よりはるかに難民を受け入れている「先進国」で、領土に難民が入れないように「水際作戦」が取られてきた。

制度や法律が改善され始め、難民申請者の出身国への送還が難しくなったことを各国政府が懸念したからだと言われている。

 

 たとえば島国であるオーストラリアは、海軍による領海のパトロールを強化し、難民を乗せた船を拿捕して自国の領土のクリスマス島やパプアニューギニアで収容したり、そのまま船を送り返したりしてきた。12年以降は船に乗った難民は絶対に本土に定住させないという体制をとっている。

米国も、メキシコを経由して入国してくる人は多いものの、実際にはメキシコ自体が中南米などからの難民を収容したり送還したりすることで緩衝材の役割を果たしている。

 

 また、1980年代終わりごろから、多くの国は輸送者制裁を設けてきた。

入国手続きに必要な書類を持っていない客を乗せた航空会社に高額な罰金を科し、帰国の費用も負担させるというものだ。

これは日本でも1989年の入管法改正の中に盛り込まれている。

 

 このような「水際作戦」や、国家の領土に入った者をまず収容するという制度がさまざまな国で共通しているひとつの要因として、入国管理行政当局が国際的に情報共有していることが指摘されてきた。

各国政府は悪知恵を共有して、たとえばロヒンギャのように最も厳しい迫害を受けてきた難民の入国を厳しくしてきた。

 

 

住民票にも載らなくなった「仮放免者」

 

期間の制限がない長期収容という問題

 

 収容のことでは、日本の長期収容の問題も深刻だ。日本政府は、退去強制令書が出された外国人を出身国に送還するための準備として収容している、という立場だ。

 

 入管庁のデータでは、4月末時点で914人が全国で収容されていた。被収容者の多くは、長期収容の基準となる6ケ月以上の収容を経験している。日本は収容期間の制限がなく、中には3年以上の超長期で収容されている人もいる。

 

 一方、スイスのNPO「Global Detention Project」調べでは、ドイツでは、難民申請者は「最大28日」と収容期間が定められており、それ以外は最大540日に収容が制限されている。フランスでは難民申請者は45日、それ以外は90日に制限されている。EU加盟国は収容制限が設けられているのだ。しかし、オーストラリア、カナダ、米国などは収容制限がない。オーストラリアでは、10年近く収容されるケースもあり、制限のない収容の問題を浮き彫りにしている。

 

 日本は基本的に非正規滞在者に対し「全件収容主義」(個別事情に関係なく収容する方針)をとってきた。だが実際近年では被収容者よりも「仮放免者(一時的に収容を解かれた人)」が多く、「全件仮放免(一部収容)主義」と呼べるだろう。

基本的には収容せず仮放免の状態にし、滞在が長い人は定期的に収容する形だ。その時々の政権がどの程度取り締まりを強化したいかによって、収容期間や人数は変わるとも考えられる。

 

 以前から多くの難民を受け入れてきた米国は、冷戦時代から難民認定において政治性が強く反映されていた。たとえばキューバやベトナムなど政権と敵対する国の難民は受け入れる一方、米中央情報局(CIA)が支持したクーデターによって独裁政権に交代したグアテマラやエルサルバドルからの難民は受け入れず、長年、「TPS(一時保護資格)」と呼ばれる仮の保護状態に置いた。就労は許されていたが、トランプ政権はそれも取り消してしまった。

 

 この状況は日本の難民申請中仮放免者の立場に類似する。1980年代や90年代初頭においては、日本で難民申請すること自体が収容と強制送還のリスクにさらされることであり、非正規滞在のまま生活する人も多かった。同時に一旦難民申請したら収容しない代わりに仮放免される人も増え、仮放免者(特に難民申請者)の就労も黙認されることが多かった。

 

 しかし2000年代中半から非正規滞在者の取り締まりが強化されるにつれ、仮放免者として日本で暮らすことが次第に困難となった。そして、12年の在留カードの導入で、彼らの存在は住民票にも載らなくなった。筆者の聞き取りでも、15年以降は仮放免許可書に「就業または、報酬を受ける活動に従事してはならない」と明記されるようになったことがわかった。

 

 最後に、強制送還にも言及しておきたい。6月19日、法務省の「収容・送還に関する専門部会」で、収容・送還を強化する提言がまとめられ公表された。だが近年、米国からグアテマラやエルサルバドルに送還されて命を落とした難民申請者たちがいることが報道されてきた。オーストラリアでも、06年に行なわれた強制送還者の追跡調査によると、アフガニスタンに強制送還され命を落とした人や生命の危機にさらされた人が複数人いる。日本に逃れてきた人を強制送還することは、その人を危険な地に帰すことで、見殺しにしかねない。収容・送還が強化されることには強い警鐘を鳴らしたい。

 

Stephen McIntyre 一橋大学大学院社会学研究科博士課程(強制移民・難民研究)。

 

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国で死んでも、たまに生き返る人間もいるらしいから、気にしなくてもいいんじゃない?

バカバカしい話だが、死んだ設定のパキスタン人が2人、生き返った例を聞いたことがある。

それとも、死んでも生き返ることができるのは、パキスタン人だけか?