こんにちは、
龍妃花 です![]()
![]()
この物語 「十三の龍の封印を解く」 は、
なおこと龍たちが紡ぐ 神秘的な冒険譚 。
静かにページをめくりながら、
古の記憶 に耳を澄ませてください。
さあ、物語の扉が開かれます——
最初から読みたい方はこちら ↓
第Ⅰ章 第1話 十三の龍の封印を解く~白龍の封印 運命の始まり~ | 龍妃花
【第3章・第2話『焔の拒絶』】
遺跡は、解き放たれた龍のエネルギーで震えていた。
空気は灼熱の炎でゆらめき、柊すずの髪を揺らす。
彼女の前に現れた巨大な龍――焔(ほむら)は、威圧的な視線を彼女に向けている。
「貴様が俺を解いたのか?」
低い声には怒りと共に、どこか諦念の響きが含まれていた。
その瞳は燃えるような赤だった。
けれど、すずには、
その奥に静かな悲しみが見えた気がした。
――なぜ悲しんでいるの?
すずの胸に痛みが走る。
なぜ、初めて会ったはずの存在に、こんなに胸が痛むのか。
戸惑いながらも、すずは勇気を振り絞り口を開いた。
「……あなたを、助けたかった あの時、、、」
焔はわずかに瞳を揺らしたが、すぐに険しい表情に戻る。
「助けるだと?笑わせるな」
次の瞬間、焔の巨躯がまばゆい光に包まれた。
その姿は炎に溶けるように変容し、やがて一人の青年の姿を現した。
赤く燃える髪と金色の瞳、鮮やかな赤と黒の衣を纏う、
儚くも美しいその姿に、すずは息をのむ。
だが、その美しさ以上にすずの心を揺さぶったのは、焔の瞳に宿る深い孤独だった。
焔は冷ややかな視線で、すずをじっと見下ろした。
「お前は何もわかっていない。封印はただの呪縛ではない。
俺が何を背負い、
なぜ鎖につながれていたか――」
焔は一瞬口ごもると、苦しそうに顔を背けた。
「……お前のような人間が、軽々しく解いていい封印ではなかったのだ」
すずの胸が痛んだ。彼の抱える重さが伝わってくる。
「でも……この場所に導かれたの。あなたを解放しなければいけないって……」
「くだらん戯言だ」
焔は冷たい言葉で遮った。
「……お前には、何の記憶もないのか?」
「記憶……?」
すずは戸惑う。
「俺の名を口にしたということは、少しは繋がりを思い出したのだろう。だが、
思い出したとしても意味がない」
焔の言葉に冷淡さが増す。
「お前は今、現世を生きている。かつての繋がりなど、幻のようなものだ」
焔の体がふわりと宙に浮かぶ。炎を纏いながら離れようとする
背中に向かって、すずは無意識に叫んでいた。
「待って!」
焔は一瞬止まったが、振り返ることはない。
「二度と俺に近づくな。お前に俺の業を背負わせるつもりはない」
その言葉を最後に、焔の姿は赤い光とともに消え去った。
強い熱風が遺跡を駆け抜け、残されたすずは崩れ落ちるように座り込む。
――彼の業……?
遺跡の静けさが戻り、風が頬をかすめた。
そのとき、微かな声が彼女の耳元に届いた。
『柊すず……封印を解いた者よ。あなたの旅は始まったばかり』
「だれ?」
慌てて辺りを見回すが、誰もいない。ただ声は、慈愛に満ちた響きを持って続けた。
『焔は遥か昔、大切な使命を持ち、そして大きな罪悪感を抱えている……』
「罪悪感……?」
『そう。彼が拒絶するのは、あなたを巻き込むことへの恐れ……彼の深い悲しみを受け止める覚悟があるのか、あなた自身が試されている』
声が途切れると、すずの胸元のペンダントが再び温かくなった。
見知らぬペンダント、導かれた遺跡、蘇る微かな記憶――。
なおこ。翡翠。
その名を呟いた瞬間、頭に閃光が走る。
――すべて偶然ではない。これは、はるか昔から定められていた運命の流れ。
立ち上がったすずは、静かに瞳を閉じて決意した。
「焔、あなたがどんな業を背負っていても、私がそれを知る必要があるのなら――逃げたりしない」
その瞬間、ペンダントが一瞬強く輝き、すずの心に強いエネルギーが流れ込んできた。
これから起こる旅の予兆のように、彼女の中で何かが動き出す。
すずの魂が、自らの役割を理解し始めていた。
~続く~


