文化祭の思い出~ | 中学理科教師のつぶやき

中学理科教師のつぶやき

中学校理科教師として25年。ひとつの意見として、ここに私の日々考えたことを記録していきます。同業の方、現役生徒、現役親御さんとのネットでの交流もできるといいですね。

文化祭の季節ですなあ。


今勤務している学校でも
文化祭取り組み真っ最中。


でも、担任じゃないので
じゃっかん蚊帳の外な感じで
外回りを固めたり
取り組みの穴を埋めるスタンスで
毎日を送っております。


生徒との一体感とかは
やっぱり担任じゃないとね。


すでに担任からはずされる年代となったなあと
自覚するとともに、持病持ちじゃあもう無理かな
などとあきらめモードもあります。


まあ、できることをやらせてもらいましょう
と言うことでは
今までの主演男優賞ねらいが
助演男優賞ねらいの渋めの役割への
挑戦と言うところでしょうか。


さて、最前線を一歩退いたところで
昔の思い出に浸ってみようかな。


私にとって忘れられない文化祭第1位は
ゲリラ合唱。


その学校は、全校370人
学年120人くらいの4クラス×3学年
12学級のまあまあ大きい学校でして


文化祭のメインは、学級対抗の合唱コンクール


合唱のような文化活動に優劣をつけるような企画は
本来なら邪道とも言えるのだけど

日常生活がだらしないその学校にとっては
生徒がシャキッとするカンフル剤のような役割を
文化祭、運動会が担っておりました。


私が担任していた学年クラスも
2年生から受け持ちましたが
1年生の時の躾けに失敗していまして
教師不信と弱肉強食のサバンナ状態。


しかたがないので
文化祭の合唱コンクールをテコに使って
やる気を引き出す
取り組みを進めさせる
達成感を味わわせる
というちょっとレベルが低いけど
やったれや、おまえらコースで
充実した毎日を送っておりました。


どの学級が優勝するかは
当日やってみないとわからん状態。

練習に熱が入るんだけど
ある程度までやると
もう、あと何をしていいかわからなくなっちゃうのね。


自由曲を4部合唱とかの
大地讃頌とか流浪の民とか
定番の難しい曲を選んでいれば
歌い込むほど表現の難しさとか
ハーモニーの微妙な調整とか
やることがなくなるなんてことは
なくなるんですけど。


残念ながら、学級のレベルがそこまで行かない。
歌いたいものを歌う。教師の推薦は無視。
というか、拒否。


ですから、3年生なのに「カントリーロード」
当時流行ってたんだよね。アニメが。


それでも、他の学級も似たようなもんなので
どの学級が優勝するかわからない(笑)


どちらかというと、やることがなくなるくらいなので
私の学級は、優勝候補だったりするのです。


でも、もうやることがなくなっちゃった。


これって、まずい状態なのね。
練習が予定以上に進んで
それなりに仕上がって
他の学級より優位に立っている
ということは、気持ちがだれる


本番前に、気持ちの山場を超えちゃって
やればやるほどへたくそになって
練習なんかやりたくなくなる
歌なんか歌いたくなる。


サバンナの獣たちは
自分の欲求に正直なので
歌いたくなったら
優勝はしたくても
本番でも歌わない。


やべ。


本番のコンクールは明日
今日は最後の練習日だけど
もう、歌いたくない。


でも、午後に2時間分の学級練習時間が
設定されていますの。


2時間。


サバンナの獣たちが
2時間もおとなしく時間をつぶせるわけがない。

今、合唱コンクールだったら
優勝できるかもしれないのになー。


なんか、刺激が必要か?





と 突然ひらめいた。


学校の近くのバイパス沿いに
オープンしたばっかりの
ショッピングセンターがあったのね。


ショッピングセンターには
たしか、屋内だけどカフェテラスみたいな
憩いの空間があったはず。


あそこで、文化祭の宣伝とかなんとかいって
合唱してきたら面白いんじゃね?


お昼を食べながら
「午後の練習どうするの?」
午後の練習どうしようかなーって空気の中
「ショッピングセンターで歌ってきたりなんかして」
「くすまる、何それ?」
「度胸試しでしょ!」
「まじ?」
「やる?」
「えーー?」
「やる気あるなら、交渉してくるけど」
「えーー。いいよ。やっても」
やってもいいよとは、なんて言いぐさだい(笑)


でも、なんだかえさに食いついてきたので
早速、校長へ許可をとりに
校長も突然の相談に判断がつかないようなので
「とにかく、お店に聞いてきますわ」と
ショッピングセンターへ

「店長さんは、いますか?」と
忙しいのをごめんなさいねと
あの辺の優雅なスペースを拝借して
ついでに、あのコンセントを使わせてもらって
キーボードを鳴らして、合唱をさせて頂けたら幸い。
と、交渉致しましたら
あ、ああ、ああ、あー、良いですよ。


はい。交渉成立。


学校に戻って
校長へ「お店の許可を得てきました。」
「本当にやってくるの?」
「はい。文化祭の宣伝してきますのでよろしくお願いします。」
「ふーん。気をつけてね。」


はい。決済おりました。


学級に戻って
「おし。お店の許可を取ってきた。キーボード担いで行くぞ。」
「えー。まじー。どうしよう。」
と、蜂の巣をつついたような騒ぎ。
「なにが、どうしようだ。度胸試しだ。はい、出発。」
「おー。」


さっきまでのだれた感じが
いきなり緊張感に変わっちゃった。
でも、前向きなのね。


ふだん、ぐだらぐだらして
掃除なんかしない真之介が
「俺キーボードかつぐ」と
先頭に立って歩き出した。


男子のボス、福井が
「あいさつ、俺やる」と来た。
おまえにできるってか?
「うへへ。まかせろ」


ぞろぞろと1学級分の生徒が
バイパスを越えて昼のショッピングセンターに
乗り込んできました。


予定通り、コンセントをお借りしまして
キーボードを設置。伴奏の女子が
男子のかついできた椅子に腰掛けて
準備オーケー。


私は、ちょっと離れてにやにやして見ていた。


男子ボスの福井が叫ぶ
「お買い物中の皆さん。こんにちはーー。
僕たちは、○○中学校3年4組でーす。
明日は、○○中学校の文化祭。
合唱コンクールで歌う歌を聞いて下さい。」


おお、どこでそんな口上を覚えたのか。
勉強しないくせに、やるな福井。


お買い物中のお客さんは
何が始まったのかと立ち止まって
ぎょっとしている。


始まる合唱。

ちょっと緊張で力んでいるけど
練習の成果は出ているなあ。
楽しそうだなあ。


歌い終わると、再び福井
「○○中学校の文化祭は、明日の9時からです。
どうぞ、おいで下さい。」

たくさんの拍手をもらって
満足げな顔。


はい、撤収。撤収。さっさと学校に戻って。


店長さんに再びお礼の挨拶をして
撤収して行列をつくってバイパスを渡る生徒達を
追いかけました。


学校に戻ったら、みんな興奮して
ああでもない、こうでもないと語らっている。

練習も、もう一回やって
明日は優勝だ。おー。だって。


次の日の本番は、やっぱり力みが出て
優勝はできませんでした(笑)


でも、3年4組の皆さんは
もう、勝手に優勝は俺たちだよね。って決めていて
審査員の審査結果はもう関係なかったのね。


突然の思いつきだったけど
ゲリラ合唱やって帰ってきたことで
なんか、伝説をつくっちゃった
なーんてね。


ちなみに、次の年から
まねする学級が出てきて
さらに次の年には、3年生4クラス全部が
手分けして、町のあちこちで文化祭宣伝をかねて
度胸試しに出かける定番の企画になりました。


ホントに伝説になっちゃったね。

あー、あれは面白かった。