長年、塾で教えてきて感じたことの1つです。
「塾講師のスーツは安い」
塾の先生は、あまり高いスーツを着ないのです。
今回は、この話。
【1】塾講師はスーツが多数派だった
伝統的に学習塾の講師は、スーツにネクタイ姿が基本でした。
セーターやTシャツ等の普段着で教える先生は、少数派でした。
大手塾を中心に、ネクタイ着用を求める塾が多かったのです。
理由としては、
★主に学生の先生に気を引き締めさせる、
(学生が教えるのに「学生でない」と保護者に説明する塾も)
★保護者にキッチリした印象を持ってもらう、
いくつかの効果があるようです。
35年前に私が若手講師だった当時は、常にスーツとネクタイをしていました。
突然「ベテランの〇〇先生が二日酔いで苦しんでる。代わりに今日教えられないか?」なんて連絡があると、パッと駆けつけられるような服装にしていたのです。
【2】近頃は、スーツ不要の塾も
もっともここ数年は、猛暑でネクタイ無しの「クールビズ」が広まりました。
スーツは必須でも、ネクタイは不要という塾も増えました。
人材難も進んで、うるさい服装規定がある塾は敬遠され気味という面もあります。
また、女性講師はネクタイをしない服装が多いのも影響して、男女平等の建前のもと、スーツにネクタイという常識が、崩れつつあると感じています。
大きく時代が変わりつつあるなと思っています。
【3】塾講師のスーツは安い
塾業界で30年以上教えてきた印象では、塾の先生が着ているのは、たいてい安いスーツです。
10万円はしそうな立派なスーツを、塾の現場で教える先生が着ているのを、ほとんど見たことはありません。
私も上下で2万円前後のスーツを、イトーヨーカドーあたりで買っています。
4万円を超えるスーツを買った記憶はありません。
(よれよれ状態の服↓)
では、なぜ塾講師のスーツは安いのでしょうか?
【理由1】チョークの粉で汚れるから
現在は、ホワイトボードを使って授業をする塾が増えていますが、黒板にチョークで書いて説明する塾も多いです。
黒板を消す際には、粉が飛び散らないように丁寧にゆっくり消すのが良いのですが、限度があります。
どうしても黒板消しから粉が飛び散ります。
スーツにチョークの粉が飛び散ると、粉を取るのに拭いたり、はたいたり、生地を傷めます。
一般のサラリーマンと比べても、スーツが痛むのが圧倒的に早いのです。
短期間しか使えないなら、安いスーツでいいかな、という感覚になります。
【理由2】膝(ヒザ)をつくから
机に座っている生徒に、先生が説明するとします。
先生が立って説明するのはかなり大変です。
特に立ったまま生徒のノートに式を書くとなると、さらに字が汚くなります。
やむをえず、膝を床につけて、ノートに書きこむことになります。
小学校の先生が、常にジャージを着ているのと同じく、スーツの膝がすり減りやすいのも理由の1つなのです。
【理由3】給与がさほど高くないから
学習塾の業界は、特別高給というわけではありません。
大学を卒業して正社員として学習塾に就職した人の場合、公務員になった同期と比べて、20代半ばでしたら学習塾の月給が少し高めのことが多いです。でも、学習塾の業界は生産性を上げるのは難しく、昇給は他の業種より低い面があり、途中で同期の公務員に抜かされる傾向があります。
ですから、勤続20年の先生が高い給与をもらって高価な10万円以上のスーツを買うという文化・習慣ができにくいのです。
【理由4】上昇指向よりマイペースの先生だから
かなり年寄りじみた感想です。
35年前の学習塾の先生は、《夢破れた高学歴者》が多数派でした。
大学教授を目指したが就けなかった「オーバードクター」、弁護士志望だが合格できていない「司法試験浪人」、学生運動をして就職しなかった「元学生運動活動家」などです。いずれも、上昇指向が強そうな背景を持つ人たちです。
それに対して、現在は上昇指向よりマイペースの先生が圧倒的に増えたと感じます。
学生の頃から学習塾で教えてきた先生が多く、教えてない先生でも塾に通っていたわけですから、仕事の内容が十分わかっています。未知の世界に飛び込む不安は少なく、楽しそうだというのは容易に想像つきます。
「高い給料を稼ぐぞ」「数年後は独立して塾を開業するぞ」といった野心あふれる人は少なく、楽しく仕事して、そこそこの給与もらえれば良いやという感じの先生が増えてきたと思います。
こういう若い先生は、20歳代に背伸びして高いスーツを着ようとするでしょうか。安いので十分と考えるのではないかと考えます。
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