予想以上に大きくなってしまったレジ袋を両手に、家への帰り道を急いでいると友梨奈のマネージャーとばったり会った。
「飛鳥ちゃん!」
「こんにちは。友梨奈なら家ですよ」
「今、丁度向かおうと思っていたの。来月の番組のことを話しておきたくて。あら、それ何か作るの?」
「はい。二人でケーキを作ろうと思って。」
「あら良いわね。私はすぐ帰るから、少しだけ寄ってもいいかな」
「いいですよ。まだ寝てると思いますけど。」
「それにしても、あの友梨奈がこんなに懐くとはね。」
「それ、オダナナちゃんにも言われました」
「あら、そう?本当に昔からあの子はそうだったの。自分から壁を作ってしまうというか。だから、あんなに屈託無い笑顔も久しぶりに見た。本当にありがとう、飛鳥ちゃん。」
「いえ、そんなお礼を言われるような事、何にもしてないです。」
そう言いつつも少し照れ臭くなってしまい、いそいそとカバンから鍵を取り出し、家のドアを開けた。
「友梨奈、マネージャー来たよ。…友梨奈?」
彼女が、どこにもいない。
「飛鳥ちゃん、どうしたの?」
「友梨奈がどこにもいないんです」
洗面所、台所、トイレ、リビング、寝室。
どこにもいない。
「友梨奈、」
フラフラと床に座り込んだ私の視界にふと、入り込んだスマホ。
友梨奈のだ。
私は急いでケータイを拾い上げた。
ロックは、かかっていない。
そしてすぐに画面に映し出されたのは、無機質な一通のメールだった。