2026年6月28日(日)は月島社会教育会館ホールにおける

『神田伯龍生誕百年演芸会』前日は台風で心配しましたが、

上手い具合に去ってくれて無事公演終了致しました。

ご来場のお客様には改めて御礼申し上げます。

開口一番は柳亭すわ郎さんで『狸』。よく気の利く前座さんでもう既に三回も

ご出演していただいております。

次いで伯龍独演会の前座を長く務めてくれていた入船亭扇蔵が

吉川英治の『宮本武蔵』のうち”祇園藤次と佐々木小次郎”

15分に綺麗に落語としてまとめてくれました。

剣道有段者らしく構えの見事さも結構。袴は伯龍の遺品で、

写真では分かりませんが「福寿」の二文字が小紋のように散りばめらたものです。

伯龍はよく着けていたもので懐かしい。

伯龍十八番の『祐天吉松』。これを浪曲と講談でリレー公演。

机は伯龍の遺品を用います。

先ずは東家一太郎(曲師:東家美)が『吉松改心』の場面。一太郎の大師匠、東家楽浦が

野口甫堂名義で浪曲に移したもので、楽浦は大の講釈好き。

『祐天吉松』の副題でもある『士農工商祐天吉松』を節に折り込むところなんぞ

講釈ファンにはたまりません。巾着切りの吉松が大家のお嬢さんの簪をスリ損ない

逆に諭される。堅気に戻る決心とお嬢さんからは惚れられ夫婦になるという場面。

ここも伯龍はよくやっていたので思い出します。

この後の場面『立花の強請』を寶井琴柳。

「ここはあんまり面白くないんだよねえ」とぼやきますが、

かつて田邊孝治氏がやっていた講談俊英五人会で『祐天吉松』を

連続で大団円までやっているのです。たってお願いしました。

『立花の強請』は伯龍が好んだ場面で立花金五郎の不遜ぶり、

密談をするまえに料亭の座敷の襖を開けて立ち聞きされていないかを

確認するところなど鮮やかで今も思い出します。

仲入り前は立川談之助師匠に古典落語『城木屋』をお願いしました。

伯龍とは共産党応援の選挙演説のタビが一緒だったり民医連の

集まりに呼ばれて共演したりと実は密接な繋がりがあるのです。

『城木屋』は圓楽師匠直伝!。圓生版と随分違い、番頭が上方弁でないし

(考えてみれば静岡出身で上方言葉もおかしい)、駒廻しの口上もなく

コンパクトにまとまっております。この版が歌丸師匠に伝わっていた訳です。

普段やらなくても叩き込んだ芸の力!面白かった!

圧巻のメンバー全員集合!この番組はもう最初で最後!

仲入り後は桂八十八師匠の『ぬの字鼠』これはイキな小品で

桂米朝師匠のレコード「米朝珍品集」でしか聞いたことのない作品。

芝居の『金閣寺』の雪姫のパロディという優雅な落語でもあります。

米朝師匠は若き日にお客として前座の伯龍(当時伯梅)を聞いている

程で「あの人の価値を認める点では人後に落ちぬつもり」とまで

賞賛してくださいました。伯龍との二人会も実現しましたし大恩人です。

その芸風と香を今に伝える八十八師匠の名演。

ここから転換が大変。活動写真弁士のツートップ、片岡一郎先生と

坂本頼光先生の夢の掛合共演。これはワンアンドオンリーです。

前日に頼光先生から電話が入って、先代出演の『國定忠治』映像が手に入った!

と急遽、冒頭に流してくれることになりました!

動いている先代をご覧いただけることになったのは頼光先生のお陰!

有難うございます。

これが先代伯龍の映画初出演だったそうで、この時の珍談を随筆で

まとめております。大サービスで公開します。「映画朝日」昭和15年3月号。

本編は澤正の『國定忠治』です。片岡先生の忠治は二枚目っぽく

カッコいい。頼光先生の山形屋は徹底的に悪役でこれまた結構。

本日の主任は大阪から京山幸枝若先生!

藤初雪師匠との組み合わせは東京では珍しいでしょう。

演目は『笹川の花会』。琴柳先生も袖でじっと聞いていましたよ。

ご来場に御礼申し上げます。良き追善が出来ました。

お客様とご出演の各先生、各師匠のお陰です。

撮影は全て宮岡里英*禁無断転載