今年も墓標が立ってしまいました。それも急に。

幸枝若先生が電話口で「なんつうことになってくれたんや!」。この言葉に尽きます。

幸枝若先生を東京にお招きすることを意識して大阪に通っていた時期の三味線は

必ずしも毎回初月師匠ではなく岡本貞子師匠の時も多かったのですが、いつの頃からか

幸枝若先生の相三味線と言えば一風亭初月師匠となっていきました。

講談、落語と違って浪曲は一人では出来ません。浄瑠璃同様に音楽を持った物語、

物語をもった音楽なので、どっちかがダメなら成り立たない。特に経験の浅い浪曲師が

学ぶのは曲師の師匠からで、これは義太夫とも共通しています。

幸太が次々に新作をものに出来るのも初月師匠という懐の深い柔軟な守護神がいるからです。

幸太が今準備中のネタも多くあります。これらを今年は聞けると思ったのに。

初月師匠で凄いなと思ったのは、『会津の小鉄』で言うと小指を落とす時の擬音。

『小鉄と今弁慶』での狐の姿と去っていく寂寥感。

『山崎迎へ』の船乗り込みの豪壮、骨太な音。が思い起こされます。

もちろんまだまだ沢山の驚嘆、感動を頂戴しました。

技術的な話では、三味線はどうしても音程がしょっちゅうずれるので

ギターと共演する際には調整がとても難しいこと。浪曲師が良く見える位置でやはり弾くべきであること。

こっちに三味線の知識があればもっと聞けたものをと思い浅学に臍を噛む思いです。

幸枝若ともども一座として苦楽を共にしたというより苦労を共にした間柄の初月師匠。

幸枝若先生が人間国宝になって、益々世間に名乗りを上げようというこの時期に、最悪のタイミングで去ってしまいました。

曲師の師匠はご長命が多いのにと悔しい限りです。

今年は幸枝若先生が三味線を弾いて、初月師匠が浪曲をやる“天地会”もやろうと約束していたのに。

音源コレクターでもある初月師匠から多くの音源の話や幸枝若先生が持っているのにやろうとしない

渋いレパートリーの演題を次々と挙げて貰い(安中草三郎!も)

「師匠、宮岡さんに全部話しましたよ」と笑っていたのも楽しい思い出です。

 

そういえば横浜にぎわい座の春野百合子、立川談志二人会も聞いてますよと話したら

「その時は私も居たんです」と初月師匠。談志師匠は百合子師匠に物凄い気の使い方でした、と。

手帳を見ると2005年9月6日のことだからそんなに昔でもない(もはや昔か?)。

この時は小沢昭一氏もゲストで出ていた。私はこの直前に神田伯龍の会に談志師匠が飛入りで

来てくれていたんでお礼にに行った。その時は第三者がそばに居たから「そうだっけ?忘れちゃったよ」

と談志師匠らしい衒いで返事してくれた。で、後日電話を貰った。

それとこの日は白山雅一先生が小沢氏の楽屋に張り付いて迷惑を掛けていたのも

見ている。確か小佐田定雄氏とはエレベーターですれ違ったような。

初月師匠。元ヤ〇キーだそうで、そのせいか何となく人見知りというのか、とっつきにくいところがありました。

意外にも酒を一滴も吞めないので胸襟を広げるには中々時間が掛かりました。

最近では和歌山名物の金山寺味噌を頂戴したりで、まあ打ち解けてきた感があったんですが。

いつだったか何の拍子か初月師匠に上着を着せてもらったことがあり、

この時は如何にも“姐さん”から羽織を着せて貰う感じで大変いい気分だったことを憶えております。

まさかの合掌。

 

来る4月5日の幸枝若独演会は追善公演と致します。曲師は虹友美さん代演で相務めます。

第26回京山幸枝若独演会

2025年4月5日(土) 於:浅草木馬亭

午後6時開演(午後5時半開場)午後8時終演予定

前売 4000円 当日4500円

有限会社宮岡博英事務所 http://hana-ni-awan.com/
ご予約とお問合せ:Tel/046 876 9227
email: hana-ni-awan@oct.email.ne.jp

 

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