お陰様で”演芸大忠臣蔵2024"無事公演終了しました。
ご来場のお客様には改めて御礼申し上げます。
開口一番は昨年に続いてこの人、桂枝平さん!
ツケ打ち、鳴り物とこき使われています。笛は三遊亭遊七さんを急遽煩わせました。
枝平さん、昨年は浪曲のテーブルの前で立高座。
今回も『手紙無筆』を無理矢理に忠臣蔵ネタにするという荒業を披露してくれました。
これは面白い!「もう出来ませんよ」とおっしゃいますが、まだまだ反則技を聞かせて貰いましょう。
続いていきなり大ネタの『二度目の清書』が登場。
一龍齋貞橘先生。一龍齋の至高の演目。
出てくるなり貞水先生の面影があって嬉しい限り。
六代目貞山のSPレコードが余りにも完璧で動かしようがないという
伝説のネタ。緊張感と格調、こういう講談が講談の核でなくてはなりません。
そして昨年の演芸大忠臣蔵にも出演頂き、その翌月の1月に急逝された
紙切の林家正楽師匠を偲んで、愛弟子の林家楽一さん。
切れない物もあると言いながらそんなことありません。
何でも切ります。写真は『七段目』です。
密書を読む大星由良之助。縁の下で盗み読みをする斧九太夫の名場面。
第一部の主任は上方から桂八十八師匠をお招きしました。
『足上がり』。出もそっくり!
これは米朝十八番で何度も聞かせてくれましたが、八十八師匠のは
映しと言ってもいい位の名品です。
最初に四谷怪談と忠臣蔵の関係を振って頂いたので、御周知頂けたかと思います。
鶴屋南北は、パロディ、皮肉の達人。『盟三五大切』も主人公が極悪非道の人殺しを
しながらも、実は義士の一人で最終的に堂々と討入の列に加わるという凄い作品。
芝居噺は意外や本編が短いものが多く、この『足上がり』もそうです。
ずっと芝居を続けていたらダレるということでもありましょう。
八十八師匠の幕切れの伊右衛門、お岩の台詞、形は見事なものでした。
ここで仲入りその1。幸い周囲に飲食店もあり何とかご迷惑が掛からなかったかと
思います。日本橋亭ではこうはならなかった。
第二部の一番手は、大阪から旭堂南湖先生。『演芸大忠臣蔵』のレギュラーになって頂いています。
『清水一角』。吉良方の人物という珍しい作品。さすが機知縦横。
詰まらないと振っておいて、本当に詰まらなかったら洒落になりませんが
構成の巧さ、演者の魅力で引っ張る名手ぶり。
”何のネタをやるか?ではなく、どうやるか”で聞かせる、流石。
続いてやはり大阪から喜味家たまご師匠。喜味こいし先生の御令嬢。
お馴染みのあほだら経。さらに今回は常磐津の『赤垣源蔵』。
これは知らなかった。何でもたまごさんの師匠の師匠が作ったもので
新しいものだそうです。常磐津を取巻く状況は厳しいものがありますが
こういう演題を演芸の場で混ぜていけたら、また面白くなるかもしれません。
最後は「ドンドン節」。これは”名古屋”なんて呼ばれることもあります。
お軽身売りの場面。ここでは歌をお囃子のきょうさんに任せて。
歌、三味線、踊りと何でもござれの芸達者。
第二部の主任は林家正雀師匠で、『質屋芝居』。
これは純上方落語ですが、正雀師匠が東京に移しました。
”仮名手本忠臣蔵”の原作だと三段目で"刃傷松の廊下"の後、舞台が回って門外で勘平とお軽が出奔する。
その次が四段目(判官切腹)になります。大阪で通し上演する時はこの順序です。
東京だと三段目は"刃傷松の廊下"で終わって幕外なしで、四段目(判官切腹)の上演。
四段目が終わると、お軽と勘平の道行(出奔の)を描いた舞踊”落人”で昼の部のお開きと
なることが多い。
それを鑑みて正雀師匠は、質屋の中での芝居を”喧嘩場”(判官と師直の口論から刃傷)
と”落人”にして演じております。最後は踊り『桃太郎』のサービス付き。
第三部は、鬼才、居島一平先生による忠臣蔵漫談。
三島由紀夫は大石内蔵助だったのか!
四時間を超える長丁場の締めくくりは天中軒雲月先生の浪曲。
『瑶泉院涙の南部坂』。曲師:沢村博喜。
今月はほぼひと月入院加療という雲月先生。
合計47日間の入院だなんてそこまで忠臣蔵に合わせることない。
この日が復帰高座となりました。実は気が気じゃなかった!
しかしご来場のお客様はご承知の通り、ブランクを微塵も感じさせない、力演、名演。
それにもビックリしました。
格調ある瑶泉院、戸田の局。立派で美しい。
これも女方の演技でやっているからこそ、強さも出るのでしょう。
派手になっても下品にならない、下卑ない。
大石の懊悩、同じくらいに深い瑶泉院の懊悩を描き尽くします。
改めてご来場に御礼申し上げます。
来年も同じく深川江戸資料館小劇場で2025年12月28日に行います。
どうぞよろしくお願いいたします。ボチボチ出演者も決まってきております。
この会をもって今年の弊社公演はお開きです。
来年もどうぞお懲りなくご来場をお待ちしております。