六代目立川ぜん馬(本名:三須秀海)
戒名 禪翁秀覺信士
2024年12月8日没。
洋装もカッコいいぜん馬師匠(20181204全日空ホテル)。
とうとうこの日が来てしまいました。
何度も生命の危機に直面し、本人も周りも覚悟を決めたことが何回もありました。
それを毎度克服したんですから「我ながらしぶといなあ」と本人が嘆息するほどでした。
弊社とはたった12年の御付合い。しょっちゅう会って呑んでいましたからもっと長く感じます。
これは楽しかった!鶴光師匠との二人会。お正月の特別編で寄席囃子の実演付(2015年1月11日ポレポレ座)
2012年の神田伯龍七回忌追善の会にゲストを探していて、久々に高座を聞いたぜん馬の『豊志賀の死』
でノックアウトされ、すぐさまお願いしたのがご縁のはじまり。
以前に比べて随分痩せていたので、聞いたら肝臓癌をやったというのですが至って元気そうで、
翌年から独演会が始まりました。「宮岡と会をやるなら講談一席を含めた会にしたい」という
嬉しい言葉を頂きました。即ちネタを増やす会にしたいということでこちらも気が引き締まりました。
若き時代の朝寝坊のらくはテレビにもよく出ていて、顔がパンパンで愛想の良いお兄さんという感じでした。
当時は『落語』、『落語界』という雑誌があって、食い入るように読んだものですが、
真打試験に疑問を唱えるのらくの意見が載っていたことも憶えております。
そののち、紀伊国屋寄席で聞いた『肝潰し』は余りにも端正で暫く聞かなかったんですが
真夏に聞いた『豊志賀の死』は大真打の風格で、スケールを増していました。
早くから嘱望される存在。
1971年1月26日に立川談志に入門。3か月後に現立川龍志が入門している。
目黒名人会劇場(権之助坂、今はライヴハウスの鹿鳴館、ここも近々閉めるという……)では
芸名のつかない見習の頃から大喜利(中喜利)のメンバーに入っていたという程。
当時としては前代未聞の前座時代から独演会をやるなど意欲的な若手であった。
その頃の修業仲間としては同期である春風亭小朝、三遊亭楽太郎(六代目圓楽)、柳家三寿、古今亭八朝他多数。
”四天王弟子の会”等を催した。芸術協会の雷門助三(現春雨や雷蔵)とも長く二人会をやっている。
膨大なネタ数
若き談志は色んな人に稽古をつけて貰えという方針だったので多くの人から得意ネタを習熟。
のんびりした雰囲気をということで『三井の大黒』、『ざこ八』他を入船亭扇橋。
古今亭志ん朝から唯一稽古して貰ったのネタは『柳田格之進』。これはぜん馬の傑作となった。
三遊亭圓楽(五代目)には随分可愛がられた。
ぜん馬の傑作中の傑作である『死神』、『浜野矩随』も圓楽から。
寄席”若竹”でも独演会をやっていた。晩年も圓楽一門の”両国寄席”には良く出ていた。
”毎月独演会をやれと言うんです。もちろん席料は取られるんです。お客さんを集めるのも大変だった”。
桂三木助ネタの『御神酒徳利』は春風亭栄橋。
「あそこに稽古行くやつはいないだろうから喜ばれるぞ」と談志に言われて、『日和違い』、『熊の皮』
は三升家勝弥(後の七代目小勝)から。”変わった部屋でねえ、部屋の真ん中にシャワー室があるんです。
そうそう工事現場の移動トイレみたいな”。
十八番にカウントされる『宿屋の仇討』、『唖の釣り』、『井戸の茶碗』は春風亭柳朝(五代目)から。
”柳朝師匠の寝床に向かって蟻が這ってましたよ(糖尿だから)”
『船徳』も柳朝で、”竜光亭の女将さんの可愛がっている猫を食っちゃう”件は如何にもの感あり。
『井戸の茶碗』にアームストロング砲が出てくるのも良い。
『鹿政談』は橘家圓太郎(七代目)から。
講釈も大好きなので『髪結新三』は小金井芦州、『忠治山形屋』は現寶井琴柳。
『谷風の情け相撲』は最近一龍齋貞山(八代目)から教わったばかりなのに……。
”カラオケボックスで教わってきました”。二人が揃って部屋に消えていく姿が想像されて何となくオカシイ。
珍しいものとして談志から『意地くらべ』を教わったが
”自分の稽古のためでしょう、バカバカしい噺なんでとてもやる気になれなかった”。
こういうお蔵ネタも多々あり、これらを復活して初めて高座にかけることもあった。
五代目圓楽からの『佐々木政談』、『心眼』がそうした例である。
談志のネタ
もちろん談志ネタも多く受け継いでいる。
”師匠の『芝浜』や『鼠穴』を褒めるのは田舎モンの証拠”
”談志の神髄は『野ざらし』や『天災』にあります”、”師匠には傑作は5本なかったんじゃないかな?”
と述べるほど程だったが、師匠から習ったネタは師匠そっくりであった。
『らくだ』の枕である西洋小噺の”二人の酔っぱらい”、”行ったから帰ってきたんじゃねえか”、”誰がらくだの評判聞いて来いと言った!”等はそのままであった(もちろん晩年でない時期の談志)。
”『死神』ですっからかんになった主人公が両手を振るとこ。毎回自己嫌悪になる”
圓楽からのネタなのにこの動きも談志そのもの。
『お化け長屋』でも”今を去ることサン・ネン・マエで良いじゃねえか”もそのまま。
”そこまで俺に似せなくて良い”と教わった時に談志に言われた。
『野ざらし』は下げまでやりたいから柳家小三治に教わった。
しかし”そんなにアニサンそっくりにやるんだったら俺んとこへ来ることないじゃないか”と言われたほど。
『三軒長屋』も病後にやったものは勢いが削がれていましたが結構なものでした。
その近い時期に快楽亭ブラック、立川龍志にも『三軒長屋』をやってもらい、三者の『三軒長屋』を
コレクションするという愉悦に浸りました。
そのブラック師と呑んでいるときに、『蜘蛛駕籠』の話になり、
ブラック師が呻くように”俺はやらない。『蜘蛛駕籠』は談志とぜん馬のものだ”とおっしゃった時に震えるほどの感激がありました。
続く……随時加筆修正します。*禁無断転載
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全てデジタル録音。
ぜん馬が食道癌で声を失うかどうかの危機を超えた時期の最新録音。
さらに、聞書きを中心とした演目それぞれのエピソード、
珍談を交えたブックレットは12ページに及ぶ豪華版。
CD1
寛永三馬術(2013年10月12日)
狸の札(2014年7月31日)
CD2
掛取り(2014年12月14日)
味噌倉(2013年10月12日)
CD3
権助芝居(2015年5月30日)
抜け雀(2012年11月12日)
心眼(2017年6月14日)
CD4
御神酒徳利(2015年2月15日)
船徳(2018年7月8日)
ブックレットより
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