文芸演芸会《公演終了》 澤孝子 圧巻の「一本刀土俵入」 | 有限会社宮岡博英事務所のブログ
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日本橋亭の昼下がりに芸術の豊かな香りが横溢しました。

文芸演芸会が無事公演終了しました。このヤカマシイさ中のご来場に改めて御礼申し上げます。

開口一番は立川幸太さん。

文芸演芸会イントロダクションと『十徳』。「一杯くれ!」なんて談幸師匠そっくり。

こういう教養編というか短い落語には物の因縁、曰く謂れを扱ったものが多くあります。

こういうのを聞いてりゃ自然と教養人になります。しかし髪はとかして高座に上がりましょう。

そして、昨年二つ目に昇進しながらコロナ禍でまるでお祝いにありつけなかった気の毒な

桂小右治さん。太宰治のエピソードから入る知性ぶり。選ぶ言葉のセンスがイイ。

この実録「走れメロス」の話は無知でしたので、ずっと昔から知っているふりをして今後使おうと思いました。

『雑排』。お馴染みの噺ですが、長屋にはこんなに教養深い人々が巣食っていたのです。

入船亭扇蔵師匠が新作ネタ卸で、松本清張の「いびき」

清張マニアである扇蔵師が敬愛する清張先生の時代小説群。

ことさら清張先生が着目したのが無宿人と島流しです。

「いびき」は傑作中の傑作ですが、とにかく小説としてキッチリまとまっているので、

これを落語にするのは困難で、地噺として運ぶしかありません。扇蔵師の説得力ある口調が

実にハマりました。

貞山先生には、毎度普段あんまりやらないネタをお願いしてしまいますが、

上田秋成の春雨物語より『捨石丸』。

これは菊池寛の『恩讐の彼方に』の同工異曲と言われますが、菊池寛がパクったわけではありません。

「捨石丸」は長らく埋もれていた作品で、菊池寛が「恩讐の彼方に」を発表したのちに、発掘された作品です。

いずれにしても大分県耶馬渓町で青洞の門を掘った、禅海和尚のエピソードに取材したもので、

何時の時代でも小説家の野心をくすぐる逸話だということでしょう。

ここでお仲入り。お仲入り後は、先月に引き続き旭堂南湖先生が大阪から来演。

十八番の探偵講談。江戸川乱歩作品の『魔術師』。こういう活劇調のものが講談にしやすいと

南湖先生は仰りますが、さすが手の内に入った鮮やかなもの。

南湖先生の、このネタを聞くと「土曜ワイド劇場」の天地茂の明智小五郎を思い出します。

ちょっとエロでグロでドギツイ色彩。

噺の映像処理というか、南湖先生はインサートやカットバックが凄く巧いのです。

そして、お待ちかねの澤孝子先生が曲師の佐藤貴美江師匠と『一本刀土俵入』

「初演してから60年を超えました」という十八番。

安孫子宿の酌婦お蔦の、何とも色っぽく可憐なこと。

女性が女性を演じることの難しさを澤先生もおっしゃいますが、一流の女方の芝居を見るよう。

これこそ一級品の名に相応しい。

そして腹をすかした駒形茂兵衛。これが変な演者(役者)だとアホに見えますが、

そこは澤先生。腹に力の入らない大男の悲哀、苦衷が胸に迫ります。

渡世人になってからの茂兵衛の凛々しさ。

浪曲で大事なものは「節、啖呵、そして所作!」という澤先生のお言葉を頂きましたが宝にします。

文芸演芸会を見事に締めくくって頂きました。正にトリの芸。

感服いたしました。今後もよろしくお願いします。

 

お楽しみ頂けたかと思います。ご来場に改めて御礼申し上げます。

 

最後にどなたも褒めてくれないし指摘してもくれなので、仕方なしに書きます。

”芸文の花、庭錦”文芸演芸会

 

かつて平成教育委員会というクイズ番組がありました。

模範解答が「文芸」だったのですが、解答者の一人、天本英世が「芸文」と解答しました。

それで×。すると天本先生が口をとんがらせて怒りだし、

「芸文って言葉はあるんですよ!僕の旧制高校の校歌で”芸文の花、庭錦”っていう歌詞があるんです!」

で、見事〇に変更させました。この”芸文の花、庭錦”って言葉が頭を離れず今回使ったわけです。

しかし、天本先生の出た旧制第七高等学校の校歌や寮歌でこの文言がみつからず、

旧制第一高等学校(今の東大教養学部、名残が駒場にあります)の寮歌に”芸文の花”

というのがあって、歌い出しが”藝文の花咲きみだれ”なのですね。

「逆説的権威主義」の天本先生が間違える訳がないので、私の記憶違いだと思いますが、

我が田に水を引くとは言いながら”芸文の花、庭錦”文芸演芸会。

イイ文句じゃありませんか。

東大マニア、寮歌、校歌マニアの方の情報をお待ちしております。