夢のお告げ | 瑞霊に倣いて

瑞霊に倣いて

  
  『霊界物語』が一組あれば、これを 種 にしてミロクの世は実現できる。 
                            (出口王仁三郎)  

・夢のお告げ

 

 “これも、第二次大本事件に関した事である。第一審の京都地方裁判所で聖師さま、二代教主、うちまる氏等被告全員が、重い有罪の刑の言い渡しを受けた直後、私と三木弁護人の二人は前記のように、「これは政府の弾圧だから、裁判官も政府の圧力に屈して有罪と判決したに相違ない」と考え、もしそうだとすれば、第二審の弁護方針はどこにおけばよいのか神示を受けねばならないと思った。

 しかし、聖師さまは未決監におられるのでお尋ねする事も出来ず、どうしようかと相談の結果、当時、京都の山科におられた大谷敬佑氏を訪ねることにした。大谷氏は昔から、不思議に夢で神さまからいろいろなことを教えられるという評判の高い人であった。この大谷氏に、いちど夢で神示を伺ってもらえないかどうか相談してみようということになり、まったく夢のような話ではあるが、私と三木弁護人との二人は、山科に大谷氏を訪ねることになったのである。

 氏の玄関に入ると、大谷氏自らが出迎えられ、「今日はお二人が見えると思って待っていました」と言われるのである。何と不思議な人だなと思いながら、「実は先生に夢を見てもらいたいと思い、お伺いしました」というと、大谷氏は、「その夢は昨夜見ております」と答えられるので、二人は二度ビックリした。

 氏の夢は左の通りであった。

 「ある大きな芝居小屋で芝居が始まっており、大勢の観客が入っている。舞台の上では一人の男が座ったまま、いろいろな身振り手振りで芝居をしているが、台詞を一言も言わず無言である。観客席から『台詞を言わねば訳がわからんではないか』と大声で要求するが、その役者は相も変わらず無言のままでやっている。

 そこで私が役者の側へ行って、『あなたはなぜ一言も台詞を言わないのですか』と聞くと、その役者が答えるには、『今、天上界で誠に妙な芝居が行われているので、私はその天上界の芝居に合わせてここで芝居をしているだけで、人に見てもらうために芝居をしているのではないから、台詞を言わぬのだ』と答えた。これが貴方のために神さまから見せられた夢である。今日はお二人が夢を聞きに見えると教えられて待っていた」。

 以上が大谷氏の話であった。

 二人は、その夢の意味が分からぬので、大谷氏に聞くと、大谷氏は「あなたがた二人のためにみせられた夢だから、夢判断はあなたがたでなさい。私は知りません」と言って、教えてくれない。そこでともかく、その夢をもらって帰りますと言って大谷氏宅を辞去したが、帰りがけに大谷氏は「国旗をたくさん作ることですネ」と一言いわれた。

 この「国旗をたくさん作れ」という大谷氏の言葉の意味は、すぐわかった。ようするに大本の文献、なかでも、聖師さまの文献の中から日本主義を強調する箇所を出来るだけたくさん探し出して、それを弁護資料にせよという趣旨のアドバイスである。それより他に弁護の方法はないのだか、しかし大谷氏の見た夢の意味は、その当時はわれわれ二人には見当がつかなかったのである。

 

 大本事件解決後、はじめてこの夢の意義が理解できた。これはようするに―― 第二次大本事件は、神様がなさっている大芝居(大経綸)であって、形は日本政府の弾圧であるが、真実は大神業の一端である。聖師さまはその大神業を、神のまにまに遂行しているのであるから、世間の人に見てもらうためではない。したがって、弁護士も、人間的に世俗の一般刑事事件に対処する考えでは見当が違っている―― という趣旨の神示であったのではあるまいか。

 この点について思い当るのは、事件勃発直後、私と三木弁護士と根本弁護士との三人の信者弁護士が、綾部の月光閣に二代教主をお訪ねして、大本事件の弁護を担当させていただきます旨申し上げると、二代教主は「ご苦労だが頼みます」と申され、その後で左のようなお話があった。

 「弾圧直後に私はこんな夢を見た。ある大きな立看板が立っていて、それに〈大本事件〉と書いた紙が貼ってある。そこで、こんなものかなわんと言うてその紙を破り取ったところ、その下にまた〈大本事件〉と書いた紙がある。その紙を剥がし取ると、その下にまたまた〈大本事件〉と書いた紙がある。何枚剥ぎ取ってもその下から下から〈大本事件〉と書いた紙が出てきてどうしても取りきれない。そこで思案してある事を悟ったら、スーッとその立看板は消えてしまった」

 その、何事を悟ったら大本事件の看板が消えたかの点については、まったくお話しにならなかった。要するに、二代さまも、この大本事件は神界のご経綸であって、人間業ではないという事をお悟りになったのだと思う。

 しかし、それらを弁護士に言うと、弁護士の努力が鈍ってはならないと思われて、そのことはおっしゃらなかったものと拝察される。”

 

      (「おほもと」昭和56年8月号 児島案山子『大本事件と聖師さま』より)

 

(1500本ものダイナマイトにより爆破された月宮殿)