ジャン・チャクムルピアノリサイタルに行ってきた。
この方のピアノを聞くのは4回目。地味ながら追っかけをしてると言ってもいいかもしれない。
1997年生まれだから27歳か28歳か。
2018年第10回浜松国際ピアノコンクールで優勝したとき21歳。その直後にソロリサイタルを聴いたのだが、とても繊細で透明感のある音と折り目正しいたたずまいがとても印象的で、以後、来日されるとの情報が入るとせっせと聴きに行っていた。
今回、手元がよく見える席をゲットした。
音を聴いている限りは、鍵盤の上、超高速で指が動いているはずなのだが、1音1音、めちゃくちゃ「きっちり弾いている」のである。
つまり、見ている指の動きをが、今聞いている流れるような旋律と、私の中で一致しないのだ。
鍵盤の上を行き来する指の動きをガン見していたのだが、どんなに高速で動こうとも1音たりともおろそかにしていない、そんなふうに見て取れた。
シューベルトやリストをはじめ、選曲が30歳直前の苦悩を表しているように思え、それもまた、心に響いた。
解説に「私はいつも、演奏を聴いていただく方にどうすれば作品をより身近に、より生き生きと感じてもらえるかを考えています」とあったが、確かに「舞台の上でなされる演奏を聴いている」という感じではなく、「私も同じ舞台上にいて、今、そこで演奏しているピアノを聴いている」ように感じる。
聴いている私が身近に感じるのは、作品だけでなく、奏者のジャン・チャクムルさん自身もそう。それもまた、すごい魅力なんだと思う。
次回、また機会が巡ってきたら、ぜひ、聴きに行きたい。
その指が 奏でる音と 静寂と
鞠子