休憩中、隣に座っていた歌トモ・Hさんが「仕事、したいんだよね」と言い出した。
「知人にそう言ったら、スキマ時間が何とかっていうアプリで探してみたらって言われて」。
それでHさんは、言われた通りにしてみたのだそうだ。
したらば、「一回、見たら、次から次へと連絡が来て、もうびっくりよ」。
だけど、「ものを運ぶとか積むとか、力がいる仕事ばかりで、ちょっと無理」。
聞けば、Hさんは「受付とか店番とか、座っているだけでいい、みたいなバイトが希望」だと言う。
私が定年後、再雇用され、現在嘱託の身分であると言ったら、Hさんはひどく驚いていた。
同じ仕事なのに給料が下がる。それなのに、再雇用で働くなんて、信じられないというのだ。
ただ、減額となった率を聞いて、若干納得はしていたが。
確かに、給料だけのことを考えたら再雇用はばかばかしい。
だが、だからといって、別の新しい仕事についたって、思うような収入は得られないはずだ。
よっぽどキャリアでもあれば別だろうが。
Hさんは、再雇用を蹴って今に至っている。
そして、今、また働きたいと思っているのに、再雇用を断ったこと自体は悔いていないようにみえた。
だが、収入は楽しては得られないのだ。
受付も店番も、楽な仕事とは思えないし。
私も、力仕事はもう無理だし。
だから、再雇用で働き、かつ別の仕事もするという道を選んだ。
そうして、少しでも稼げる間は稼ぎたいと思っている。
Hさんは、私より年上。
年々、仕事選択の幅は狭くなっていくはず。
迷っている間に、結局働けなくなる。
…なんて、そんな残酷な宣告、私にできるはずもなく、「なかなか難しいよね」なんてお茶を濁すことしかできなかった。
この日々が いつまでもつか 壊れるか
鞠子