昨年末、なくしてしまった(←正しくは、置き忘れた)デンチャー。
今日、再度作ってもらった新しいソレが、私の口中に入る予定。
…だったのだが、昨日から歯科治療をする上では全くマズい状況に陥った。
よりにもよってこんなときに、結構ひどい口角炎になってしまったのである。
唇の右端が深く長く切れて、口を開けるたび痛くてたまらない。
インフルエンザにかかりました、なら、絶対キャンセルするが、なにせ口角炎。迷う。
だが、デンチャーは調整に時間がかかる。何度も何度も口を開け、カチカチ噛んだりガリガリ動かしたり、強く噛みしめたり緩めたりし、その都度外して調整する。
この唇では、相当な痛みを覚悟しなければならない。
忘れた頃に、口角炎にかかる。
切れた唇を見て、母は「卑しい証拠。みっともない」と嫌な顔をした。
食べるとき、大口を開けるから切れると思っていたらしい。
口角炎は、ある種のビタミンが不足していることも原因の一つらしいが、母の言うことも一理あるかもしれないなと思ったりもする。
顔をしかめた母の顔も、今となっては懐かしい。
結局、予約はキャンセルせず、私は歯科医院に行った。
診察台に横になった私を見て、息子のように若い先生は「ちょっと待ってください」と言って、その場を離れた。
治療器具の何かが足らなかったのかと思ったが、すぐ戻ってきて、「ちょっと麻酔しますね」と言いながら、唇の両端をぬれた脱脂綿で軽く抑えた。
効いた。
予想通り、何度も何度も口を開閉したが、痛みは全然感じずにすんだ。
丁寧に調整してもらったからか、新しい作り物の歯は、前のもの以上に私の口中にぴったりフィットした。
命継ぐ 精巧なる歯の 作り物
鞠子