先週末、長い散歩から帰る途中のこと。
行く手にある民家の門扉前に、どこかへ出かけるのだろうと思われる服装をした小柄な年配女性が立っていた。私の進行方向と同じ方向を気にしている様子からすると、迎えの車を待っているように見て取れた。
…のだが、その方向のはるか先に、こちらに向って歩いてくるトレーニングウエア男性がいるのに気がついた。
遠すぎで顔ははっきり見えないが、その風体、歩き方からして、町内にあるT内科の院長だと確信した。
T院長、ノーマス&一人で、日曜日にはこうしてよくウォーキングしてらっしゃる。
私も体調が悪いときはT内科で診てもらうので、微妙に会釈なんかするのだが、マスクのせいでわからないのか、あるいはわざとなのか、いつもT院長は知らん顔して通りすぎる。
今回、時系列で行くと、私はお迎え待ちの年配女性の前を通り過ぎ、その3軒ほど先の民家の前で、T院長とすれ違った。
ところが次の瞬間、その年配女性がT院長を呼び止めたのである。
声が大きかったので、思わず振り向いてしまった。
すると女性は小さなバッグから封筒を差し出し、T院長に何やらしきりにお礼を言っている。
最初、T院長は「何をお礼されているのか」わからない風だった。
それが判明したらしく、ただちに「そんな気遣いはいらないから。大したことしたわけじゃないから」の一点張りになった。
ああ、気になる。めっちゃ気になる。だが私としては、もはや立ち止まるわけにも振り向くわけにもいかない。
おそらく封筒のなかには「現金」か「金券」が入っている。
T院長は大きな病院を紹介したか、あるいは介護施設を紹介したか、あるいは夜間診療か休日診療をして緊急事態を救ったか。
だいぶん先でちらと振り返ったところ、T院長は何事もなかったかのようにウォーキングを再開し、年配女性は門の中に入っていった。
ということは、彼女が門扉前に立っていたのはT院長に封筒を渡すだめだったということになる。
つまり、T院長がその時間、家の前を通ることを知っていたことになる。
…それはありえんやろ。
T院長のウォーキング時間、ウォーキングコースは、いつも一定ではない。現に私自身、T院長に会うのはいつも、全く違う場所で違う時間ばかりだ。
内容も顛末も気になって仕方がないが、結局、そのどちらもわからずじまい。
それよりなにより、年配女性がT院長のウォーキングスケジュール&コースをどうやって把握したのか、全くもって不明。
どうでもいい話なんだけど、週末に見た不可解な光景、以上。
封筒の 中はお礼か しがらみか
鞠子