一昨日、「この期に及んで来た訃報」により、客様の葬儀に行った。
···のはいいのだが、出がけになって「黒いパンプスが履けない」ことを思い出した。
外反母趾のせいで、左足の形が変わってしまっているからだ。
だからもう何年も、パンプスで出勤していない。ホテル等で行うビッグ行事ですら、ミュールでごまかし、ロングスカートにヒールのない布製ブーツみたいなのでごまかしてきた。
しかし、葬儀はそんなわけにはいかないではないか。
唯一耐えられそうなのは、黒ベルベットのローヒール。だがこれ、ベルベット自体が相当くたびれているし、なにせ留め金が「金色」。
困った。どうしよう。だが今さら仕方がない。
黒ベルベットを履いていくしかなかった。
実は私、喪服も「もう着れない」のである。
社会人になったとき、メーカー品を買ったのだが、将軍様みたくでっかい肩パットが入っているシロモノで、今ではとても着れたもんじゃない。
だからここ数年、「喪服のつもりで買ったわけではない黒のワンピース」を流用している。
これも近くで見れば生地に地紋が入っていたりして、不謹慎この上ない。
ただでさえ、長身が目立つのに、足元も見られている気がして、おちおち焼香もできなかった。
出棺のときも、目立たぬよう目立たぬよう、後ろの方に立っていた。
思えば、葬儀のたびに、こうして居心地の悪い思いをしているのだ。そして、「今度こそ、喪服、新調しなくちゃ」「黒パンプス、用意しとかなきゃ」と心に誓うのだが、一葬儀、終わってしまうと、つい、後回しになる。
買ったわ、着る機会がないわ、また古くさくなるわ···てなことに、なるに違いない、と思って。
そしてそのうち、忘れてしまう。
今度、葬儀があったら、またこの居心地の悪さを味わい、新調しなきゃと思い、再び忘れる ーー 情けない話だが、誰かに指摘されるまで、これを繰り返すだろうと確信している。
年の暮れ 葬儀で締める これも縁
鞠子