某所でときどき会う女の人のこと。
この人、猛烈に太っているのである。おそらく、病的な原因があるんだろうと思うくらい、太っている。
昨日、久しぶりに見かけた。さらに太っていた。そして、歩行がますます怪しくなっていた。
体重が倍になっても足の大きさは倍にならない。それで巨体を支えるのはさぞ大変だろう。しんどいから、転ぶと怖いから、ますます動かなくなり、その結果、ますます太るという負のスパイラル。気の毒に思わずにはいられなかった。
…だけど、本音を言うと、私はこの人を嫌いなのである。
その理由は、一貫して「…というからだだから、まわりが配慮して当然」という態度をとるからだ。
昨日も、狭い通路の真ん中ををドッ、ドッ、てな感じで超スロー歩行をしており、後ろに何人も並んだ状態になってしまった。
真後ろにいたのは私。こんな状態になると、この人、焦ってよけいに危ない気がする。とりあえず私だけでも先に行った方が……と思ったので、「すみません。横、通ります」と言って、からだをぺしゃんこにしながらすり抜けようとしたら、あからさまに嫌な顔をされた。
彼女の目的地は一番近いベンチだったと思うのだが、そこには先客がいて、再びあからさまに嫌な顔。「どけ」とばかりに座っていた人を睨みつけたりしている。
ハンディのある人に対し、自分なりに気を配り、やれることをやる。これは、人として当たり前のことだ。ときには行き過ぎだったり配慮が足らなさすぎたりして、お互い嫌な思いをすることもあるかもしれないが、そういう経験を積んでいくことも大事だと思う。だが一方で、ハンディのある人が大っぴらに「配慮してもらって当然」の態度をとるのは、「その気持ち、理解はできるが、感情的には許せない」と思ってしまう。
この女の人は、いつもとにかく不平たらたら。
水しぶきが顔にかかると「なんでこんなにバシャバシャやるのか」と怒り顔で顔をそむける。
複数で利用しているのに当たり前顔で真ん中に陣取る。
シャワー室が満室だと、待ちながら「長いわね、全く。どこ洗ってんのよ」と聞こえよがしに言う。
わかるよ。私だって顔にかかったら嫌だし、できれば真ん中を陣取りたいし、シャワーも早く使いたい。立っているのも歩くのもつらければ、その思いは尚更強いだろうことも、すごくよくわかる。
でも、ここ・某所では、私もあなたも他のみんなも「同等」でしょう。
狭い通路で「ごめんね、先に行って」と言われれば、「気にしないで。ゆっくりゆっくり気をつけて」と言うのに。
「すみません、横、通ります」と言ったとき、「あ、ごめんね」と返されれば、わざと「このへんに座ります?」などと言って、それとなく先客の移動を促すのに。
そうしてお互い、我慢することも、ゆずり合うことも、主張することも、「バランスよく行う」。でないと、感情的に共倒れになり、やっぱりまた負のスパイラルに陥ってしまう、と思う。
かわい気が あるかないかと 言い換える
鞠子