【一喜一憂 ―― 駅で見た光景】
○一喜
若いお父さんが、赤ちゃんを抱っこして、地下鉄を待っていた。
おんぶの逆バージョン。
お父さんのおなかの上、紺色の抱っこひもに全体重をかけた赤ちゃんのお尻の形、なんともかわいらしい。
さあ来た。地下鉄が来た。
お父さん、線路にさっと背中を向けた。
電車の風圧から、チビちゃんを守る如く。
いゃあ、なんかいいもの見た。
一喜。
○一憂
最近、ごったがえす駅で何が怖いかって、ながらスマホでこちらに向かって歩いてくる人だよ。
この人たち、進む方向が全く予測できないのだ。
若かりしころ、運転免許を取りに教習所に通っていたとき、助手席に座った指導員が言った。
「対向車の運転手の目を見る、表情を読むって、安全運転するためにはすごく大事なことなんだよ」
その通りだと思う。
まわろうとしているのか、停まろうとしているのか、果ては気がせいているのか、よそ見しているのか。
それによってこちらの運転も変わる。
そもそもこんなこと、当たり前なのだ。
だがしかし、今の駅では全く意味をなさない。
「自分はぶつからない」と思っているのか。
いや、どう見ても、「避けない相手の方が悪い」というオーラ全開で歩いている。
ながらスマホをしない(←正しくはやろうと思ってもできない)私など、しょっちゅう、スマホガン見で歩いている人に舌打ちしつつ「転べ!」と呪いをかけたりしている。
・・・ある意味、これも怖い。
一憂。