スクリーンに映し出された文章

「この  ぶんょしう  は  いりぎす  の  ケブンッリジ  だがいく  の  けゅきんう  の  けっか  です」

を、参加者に読みあげてもらうと、みんな、

「この文章は、イギリスのケンブリッジ大学の研究の結果です」

と読んでしまう。
私もそう読んだ。だがスクリーンは、そうなってない。
…いや、ほんとだ。よく見たら、文字があちこちひっくり返っている。
でも、何となく読めてしまう。
――これを「タイポグリセミア現象」というのだそうだ。

人は、意識しなくても、5文字も6文字も先を見ながら、単語の塊をとらえて文を読んでいる。
人間の能力ってすごいなあと改めて思う。
読んだり書いたり話したりするうちに、こういう力を身につけていく。

…そういえば、声楽レッスンの時、先生に言われたこと、思い出した。

曲の中で、パーンと高い音がある場合。
その場になっていきなり力業で高い音を出すのではなく、「事前に用意しておけ」と。
その高い音をまず頭の中に描け。そして、その高い音に至るまでのまとまり、その音以降の流れをつかめ、と。

結局、普通にものを読むときと基本は同じじゃない、ね。
それがなかなかできなくて大変なんだけど。