ナミダのクッキングNo.2333 | 鞠子のブログ『ナミダのクッキング』

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今日、ちょっぴり悲しかったこと…

本日の映画鑑賞は『セールスマン』(2016年イラン・フランス合作映画)。
観たあと、考えた。なぜこの映画にこのタイトルなのかしらん、と。

主人公は、同じ劇団に所属する舞台役者同士の夫婦。
この2人が住むアパートが、近隣の適当な工事のため壁に大きな亀裂が入り、やむなく出ていかざるを得なくなる。
住むところがない。
見かねた劇団の仲間が、いい物件を紹介してくれ、そこに移り住むことに。
ところがここ、前住者の荷物がおきっぱなし。
そのうえ、前住者が、どうやら売春を生業にしていたらしいのだ。
で、訪ねてきた男に前住者と間違えられた妻が襲われる。
 
ケガを負いながらも公にしたくない妻。
犯人に対する怒りだけでなく、「確認せずにドアを開けた」妻にも怒りを覚える夫。
お互いの言動のそこかしこに小さな齟齬が生まれる男と女。
前住者の素性を明かさず貸した劇団仲間。
つい魔がさして、犯行に及んでしまった犯人。
 
一人一人丹念に見ていくと、みんながみんな、さまざまな事情を抱えており、結局、悪いのは誰なのか、何が悪かったのか、わからなくなる。
世の中に起きるすべてのことは、善も悪も備えており、傷つく人もおれば傷つけられる人もおり、「万人皆幸せ」などということは100%幻想にすぎぬことを痛く思い知らされた。

実は『セールスマン』というタイトル、この夫婦が舞台でアーサー・ミラーの『セールスマンの死』を演じている最中の出来事だったから、らしい。
『セールスマンの死』は、文学講座でその名前を聞いたことがあったのだが、読んでおらず、内容がまったくわからない。
これを読んでいたら、映画の理解も大きく違ったのではないかと思う。
 
さらにあとで知ったのだが、この映画の監督アスガー・ファルハディと主演女優タラネ・アリシュスティ(←この人がまた、なんとも味のある美人)は、トランプ大統領のシリア難民受け入れ拒否や中東からの入国を禁止する大統領令に抗議し、アカデミー賞への参加を辞退した人たちだった。
 
 

 
正しいと信ずることの裏に裏
鞠子