「朝は左側に、キリキリッと鋭い痛みが…。でもしばらくすると治る。でも今度は右側、それから左側、結局全体がずぅんと痛くて」
 
「そうですか、ここが硬直しているからですよ」
そう言って、彼はうつ伏せになった私の左側のお尻をぐうっと押した。
 
「い…い…、痛い。すごく痛い。わぁあ、もう、ものすごく痛い」
彼は無視して何も答えず、手を移動させ、さらに強くお尻を押す。
「あ、だめだめっ。ひどく痛い。すごく痛い。なんで? こんなにお尻、大きいのに。いや、大きいからだめなのかしら」
 
彼、笑う。
「いや、大きいほうがいいですよ。女性は『小さいお尻になりたい』とか言いますが、大きいほうがいいんです」
「それ、先生の好み、でしょ」
「男は大きいお尻が好きだというほうが多いですよ。女性は勘違いしているんです」
「そう?」
「男は『ヒゲをはやすとかっこいい』と言いますが、『嫌だ』という女性のほうが多くないですか? 男も勘違いしてるんです」
 
そうか… そうかなあ… それにしても本日の施術は痛すぎる。ベッドがきしむほどぐいぐい押されている。
 
「大きくても、かたいお尻ではだめです。鞠子さん、大臀筋がガチガチですよ。これをほぐせば、必ず楽になりますから」
 
…接骨院のT先生は、なんだかほんとうにかわいいわ。
こんな息子がいたら、間違いなく溺愛するな。
腰は痛くて閉口だが、開き直って接骨院通いを楽しむ鞠子オバ(^-^)v




痛みなど知らぬあの日に戻りたい
鞠子