何げに聞いた言葉が、いつまでも気になってしまうことがある。

何年も前のことだが、仕事がらみでとある中小企業経営者の講演を聴いた際、この人が社員のことを「ウサギとカメ」に例えて話したことにゾッとした。

言わんとすることは、わかる。
「ウサギ」よりじっくり着実に歩む「カメ」の社員を望む、ということだろう。
しかし、社員を動物に例えるってどうなのか。
他にいくらでも言い方があるのではないか。
ふだんから「人間尊重」だの「社員が大事」だのと言っている人なのに、それがものすごく偽善っぽく思えてしまったのだ。

今日も、これと似たよな話を聞いた。
中古車を扱う会社の若い二代目経営者。この人に変わってから、大胆な差別化を打ち出し、急成長した。
売上も、利益も、社員数も。
したらば、社員増のことを「地産地消」と言ったのだそうだ。
またまたゾッとした。

こちらも言わんとすることは、わかる。
地元の若い人が働きたいと思える会社、活躍できる会社にしたいということなんだろう。
しかし、この言い方はどうなのか。社員が野菜みたいじゃないの。
特に「地消」の「消」が恐ろしい。
使い捨て、か、代わりはいくらでもある、ということか。

2人とも、単なる言葉のアヤで深い意味などなかったもしれない。
こんなこと、気にする私の方が、小さすぎるのかもしれない。
でも、いつまでも小さなとげの如く、なかなか消えやしない。
この人たち、本音は社員をこんなふうに見てるんだろうな、って。



後悔の言葉が胸を突いたまま   鞠子